ここはカロムの屋敷の倉庫。この場所には、カロムとラグロとマリリサがいた。いや、拘束された泪とメーメルもいる。

 「なるほど……これは、中々と可愛いじゃないか」

 そう言いラグロは、薬により眠っている泪を覗き込んだ。その後、ニヤニヤしながら泪の顔を食い入るようにみる。

 「ええ、それで運び出すのは?」

 「カロム……そうだな。今日にするか、バルギジアの町は遠い」

 「その方が良いかと。あの町まで、約一週間はかかりますので」

 それを聞きラグロは頷いた。

 「そういう事だ。さて、準備をするか。そういえば、荷馬車の方は……準備できてるんだろうな」

 「勿論、既に裏口の方に準備できていますよ。あとは、御者と護衛を呼ぶだけです」

 「そうか……相変わらず、準備がいいな。じゃあ、行くとするか」

 そう言いラグロは泪を抱きかかえる。

 それをみたカロムの顔が一瞬、ピクッと引きつった。

 「そうですね……」(クッ……まぁいい、か。あとで、倍にして……)

 そう言いカロムは、心と裏腹に冷静さを保っている。

 その後カロムは、渋々メーメルを担いだ。

 「カロム様、ラグロ様。それでは、待機させている御者と護衛の者に連絡してまいります」

 そう言いマリリサは、一礼をすると屋敷の中へと向かう。

 それを確認するとカロムとラグロは、裏口へ向かい歩き出した。



 ――場面は、泪の夢の中へと変わる――


 ……――ん、んー……ここはどこ?


 私はみたことのない場所にいた。そう周囲は、真っ白な空間で雲のような靄がかかっている。

 ここはどこなのかと思っていると、目の前に空間ができて何かみえてきた。


 これなんだろう? どっかの景色みたいだけど……。


 そう思い、ジーッとみる。

 するとそこから声が聞こえてきた。

 ――……。

 『ねぇ、これからどうするの?』

 『どうするって、決まってる。俺は、この世界を壊す……そう決めた』

 ――……これって、どういう事? この二人って……。


 更に私はその男女の会話を聞き、二人が何をしようとしているのかみることにする。

 ――……。

 『司、待って!? バウギロスに相談しよう』

 『美咲の言う通り、その方がいいんだろうが……』

 『じゃあ、今すぐにでも……』

 そう言い美咲さんは、司っていう人の腕を掴んだ。

 『悪い……少し考えさせてくれ』

 そう言って美咲さんの腕を振り解く。その後、司っていう人はそのまま別の部屋に向かった。

 『……司。この世界に来てから、かなり変わっちゃった。前は、あんなじゃなかったのに……』

 美咲さんは悲しい表情で、どこか遠くをみている。


 ――……これって、私と清美のように……この世界に来た人のことだよね。でも、なんで?


 そして私は訳が分からなくなり困惑しながらも、その映し出された光景をみていたのだった。