ここはカロムの屋敷の私とメーメルの部屋。

 トラットを抱きながら私は、ベッドに腰かけメーメルと話している。

 「……メーメル。人身売買って……それが本当なら」

 「うむ、阻止したい。それと、もう一つ気になったことがある」

 「それって?」

 そう私が聞くと、メーメルの表情は険しくなった。

 「なんでメイドが、マリリサしか居ない?」

 「そういえば、そうだね……。だけどそれって、ただ単にカロムが若いメイドが好きで……ある程度の年齢になったら辞めさせているだけなんじゃ」

 「アタシもそう思った。だけど……」

 そう言いメーメルは、不安な顔で俯く。

 「そうだね。よく考えてみると確かに変かも。仕事も、それほど忙しいようにみえないし……だけどマリリサは?」

 「もしそうだとすれば、マリリサもグルってことだ」

 「それが本当なら……」

 私がそう言うとメーメルは頷いた。

 「うむ、お互い気をつけた方がいい。何かあったら、逃げる選択肢も視野に入れた方が……」

 「その方がいいね。そういえば、さっき能力を使って偵察させてる」

 「偵察……それも見極めの能力なのか?」

 そう聞かれ私は、ウンと頷く。

 「そうみたい。あーそうだった……二十四時間したら、プレートに書き込まれるから」

 「んー……明日だな。その間に、何もなければよいが」

 そうメーメルに言われ私は、急に不安になってくる。

 「なんか不安になってきた。それに気をつけるにも……」

 「ここは、カロムの屋敷だ……そう簡単には逃げられない」

 「どうする?」

 そう私が問うとメーメルは、扉の方を向いた。

 「逃げられない……それなら、人身売買の証拠を掴むために」

 「敢えて……罠にハマるってこと?」

 「そういう事。だけど……場合に寄っては危険だ」

 そう言いメーメルは、私を不安な顔でみる。

 「危険って、そうだね。でも、それが良いと思う。だけど……まだそれが、事実だって分かった訳じゃない」

 「ルイは、前にも囮になってつらい思いをしている。できるならアタシだけ……」

 「ううん、大丈夫。確かに怖いけど……誰かがやらないと」

 そう言い私はメーメルをみた。

 「そうだな……アタシも、不安だが。失敗しないかと」

 「メーメルなら大丈夫だよ。でも、無理はしないでね」

 「ありがとう。複雑だが、そうする」

 メーメルはそう言い、ニコリと笑みを浮かべる。

 その後、私はメーメルと他愛のない話をした。



 ――場所は、客間へ移る――


 客間のソファには、灰色のローブのフードを深々と被った如何にも怪しい男が座っていた。

 その横にはマリリサが居て、お茶の入ったティーカップをテーブルに置く。

 「マリリサ、カロムは?」

 「申し訳ありません。カロム様は、外出しております。ですが先程連絡があり、すぐ戻られると」

 そう言いマリリサは頭を下げた。

 「そうか……なら待たせてもらう」

 「それでは、私はカロム様のお迎えをしなければなりませんので」

 会釈をするとマリリサは部屋を出る。

 それを確認すると灰色のローブの男は、バッグから数枚の書類を取りテーブルに置く。そして、何枚か書類を持つとみていた。