ここはティハイドの屋敷。そしてグレイフェズが運ばれてきた部屋である。

 見る限りここは、ムドル達の部屋よりも綺麗だ。それに家具なども揃っている。だが、それでも豪華な部屋とはいえない。

 現在グレイフェズはベッドで、スヤスヤと眠っていた。

 そのそばでは、カロムが椅子に座りグレイフェズの目覚めを待っている。

 (まだ目覚めないのか。治療師に言われたが、かなりの傷と体力の消耗。グレイフェズとムドルは、どんだけの戦闘能力がある? ベルべスクも相当な戦闘能力を持っているようだった)

 そう思いながらカロムは、グレイフェズを見据えた。

 するとグレイフェズの瞼が、徐々に開いてくる。

 「んー……ここはどこだ?」

 そう言いグレイフェズは寝たままの体勢で、キョロキョロと視線を移動させながらみた。

 「やっと目を覚ましたようですね」

 「ん? なんで俺は、こんなとこで寝てる」

 グレイフェズは、なんでこんな所に居るのか分からず考える。

 「ツウ……」

 すると痛くなり頭を抱えた。

 「頭にかなりのダメージを負ったようですね。それで、記憶はありますか?」

 「ああ、それは大丈夫だ。……寝てるってことは、ムドルに負けたのか」

 「ええ、そうなります」

 それを聞きグレイフェズは、ガッカリし暗い表情になる。

 「そうなると……俺は、護衛の依頼を受けられないってことだな」

 「はい、そうなります。ですがティハイド様は、別の仕事を依頼したいと言っていました」

 「別の仕事? どんな仕事だ!」

 そう問われカロムは、なんの依頼なのかを説明した。

 「待ってくれ……その仕事って、かなり危険なんじゃないのか? それに……そんなことが、国にバレたら罰せられるんじゃ」

 「そうですね……だから、バレないように慎重に人選をしています。あーそうそう……依頼料の方は、護衛の方の倍。それと、お前が勝って稼いだ金の一割を払う」

 そう言われグレイフェズは悩んだ。

 (どうする? 賭け闘技か。断った方が……でもそれだと、内部を探れない。まぁ最悪、ムドルとベルべスクだけでも大丈夫だろう。
 んー……そういえば、賭け闘技がどんな風に開催されている? それにどこで……。それを探るには、賭け闘技にでた方が早いかもな)

 グレイフェズはそう思い考えがまとまり、ニヤリと笑みを浮かべる。

 「倍の依頼料に、俺が勝てば……稼いだ金の一割か。少ない気もするが、面白そうだ。その依頼を受ける」

 「それは良かった。それでは、回復したら改めて説明する。それまでこの部屋を使うといい」

 そう言われグレイフェズは頷いた。

 「そういえば、ムドルとベルべスクは別の部屋にいるのか?」

 「あの二人とお前の待遇は、違いますから。それに……怪我が、かなり酷かったので」

 「そうか……。二人には、会えないのか?」

 そうグレイフェズが問うとカロムは、首を横に振る。

 「合わせる訳にはいきません」

 「……賭け闘技が知られないためってことか」

 「ええ、そうなります。ですので、しばらくは外との連絡を遮断する」

 それを聞きグレイフェズは、コクリと頷いた。

 「それでは、ゆっくり療養してください。体力を回復して頂かないと、困りますので。では……用があるので、そろそろ屋敷に戻ります」

 そう言いカロムは、立ち上がり部屋を出て自分の屋敷に向かう。

 それを確認するとグレイフェズは、難しい表情になり考え込んだ。

 (引き受けちまったが……大丈夫か? 報告の時に間違いなくバレる。あー考えてたって仕方ねえ、やるしかないよな)

 そう思いながら再び眠ったのだった。