「わあぁー」

 私は感激していた。そう目の前に冒険者ギルドの建物があるからだ。

 思ってたよりも綺麗な建物である。もっと古びたアンティークな感じだと思っていた。

「おい、普通……そこまで喜ぶか?」

「だって、元居た世界ではお話だけの存在だったんだもん」

「んー、ってことは……ギルド自体、存在していないってことなのか?」

 そう聞かれ私は、ウンっと頷く。

「それよりさ! 早く中に入ろうよ」

 グレイの腕を掴み私は、グイッと思いっきり引っ張る。

「ちょ、待て! そんなに、引っ張るな!!」

 私はその言葉を無視しグレイの手をグイグイ引く。時折、グレイの顔をチラチラみた。なぜか顔が赤くなっている。

 ちょっと気になったけど、それよりもギルドの中に早く入りたいと思う気持ちが勝っていた。

 そして私とグレイは、建物の中へと向かう。



 ――場所は移り、ギルドの建物内――


 私はグレイの手を引きギルドの建物内に入った。

「ねぇ、ねぇ、グレイ。ギルドだよ。凄い……」

 感激のあまり建物内をキョロキョロする。

 建物内には数名の男女がちらほらいた。奥にはギルドの受付のカウンターらしき物が設置されている。そこには、体格のいい年配の厳つい顔をした男性が立っていた。

「嬉しいのは分かった。だが、あまり……」

 そうグレイが言いかける。

「お、珍しい。グレイじゃねぇか」

 その声のする方に視線を向けた。すると、カウンターに立つ厳つい顔の男性がそう言い笑みを浮かべている。

「ドルバドスさん、お久しぶりです」

 そう言いグレイはカウンターの方に向かい歩き出した。そのあとを私は追う。

「ん? 女連れか。お前の女か?」

「そ、それは……」

 なぜかグレイは苦笑しながら私に視線を送る。

「あーえっと……私とグレイとは、師匠と弟子の関係です。それ以外、何もありません」

 私はそう言い切った。するとグレイの表情がどんよりと暗くなり、ガクッと肩を落とす。

 それをみたドルバドスさんが「ガハハ」と大きな口を開き笑う。

「まあいい。それで今日はどんな用だ?」

「ああ……。それが、しばらく城の仕事がなくなった。そんで、ルイ(コイツ)の修行を兼ねて冒険者登録しようと思ってな」

「なるほど……そうなると……。そこの嬢ちゃんは騎士か騎士見習いか?」

 ドルバドスさんは私をジーっとみる。

「あ、ああ。騎士見習いだ。それとあとで個人的に話したいことが」

「うむ、なんかわけありみてぇだな。……分かった。で、お前はどうする?」

「勿論、冒険者登録を更新する」

 それを聞いたドルバドスさんは手続きの準備を始めた。

 私はそれをワクワクしながらみる。するとグレイは、私をみて笑いを堪えていた。