時は少し遡る――……

 長剣を構えながらグレイフェズは、ムドルが護る浮遊魔鉱石へと向かい駆け出した。

 (ムドル相手に、どう仕掛ける? その前に……ムドルの出方が分からない。なんで俺をみているだけなんだ?)

 それをみてムドルは、身構えグレイフェズを見据える。

 (なるほど、グレイは剣で攻撃を仕掛けるつもりですか。さて、私は作戦の通りに……。まぁ、その通り行くとは限りませんがね)

 そう思いながらムドルは、グレイフェズが向かいくるのを待ち構えた。

 グレイフェズはムドルの所までくると剣を構え直し警戒する。

 「グレイ、仕掛けてこないのか?」

 「それは、こっちのセリフだ!! なぜ動かない。まさか、何か罠を仕掛けているのか……」

 「さあ、どうだろうな」

 それを聞きグレイフェズは、その言葉が気になりムドルの周辺をキョロキョロとみた。

 (もし罠を仕掛けていたとしたら……下手に踏み込むのは危険だ。だがこのまま……ここで睨み合っていても、な)

 そう考えながらグレイフェズは、三体の浮遊魔鉱石を左から順にみる。

 (……警戒してますね。確かに罠は仕掛けてありますが……さて、みつけられるでしょうか)

 そう思いムドルは、ニタァッと笑いグレイフェズをみた。

 (クソッ、あの顔は……やっぱり仕掛けてるな。どうする?)

 そう思いグレイフェズは、目を凝らし考え始める。

 (待てよ……。なんでムドルは……一歩も動かない? まさかとは思うが……いや、そんな簡単な仕掛けを考えるとも思えない。だが……しかし……)

 そうグレイフェズが考えているとムドルは、フッと鼻で笑った。

 「相変わらず慎重だな。そんなんだから、ルイさんに自分の気持ちを伝えられない。まぁその方が、オレにとっては好都合だ」

 「ムドル、まだ諦めてないのか?」

 「諦める、か……その選択肢はない。それにオレにも、まだチャンスはあるからな」

 そう言われグレイフェズは首を傾げる。

 「どういう事だ。俺が躊躇しているからか?」

 「それもあるが……。現段階、まだオレの方に分があると思っている」

 「分があるだと!! なんなんだ……その自信は?」

 そう問われムドルは、グレイフェズを見下すようにみた。

 「これは言わないつもりだったが……。オレは既に、ルイさんに告白している」

 なぜかムドルの顔が、ほんのり赤く染まっている。言ったはいいが、恥ずかしくなったのだ。

 「おいっ! 告白って……いつだ? それに……」

 グレイフェズは、その先の言葉が詰まって出なかった。

 「タルキニアの町を出る日の朝だ。まぁ告白の結果は……保留、ちゃんとした返事をもらっていない」

 「保留? そうか……。だが、ルイはなんで断らなかった。いや、そもそもその前に……告白されてなんで悩んでる?」

 「さあな。オレは、知ってても言わないぞ……不利になるしな」

 そう言いムドルは、不敵な笑みを浮かべる。

 「……ムドル。なるほど、お前がその気なら……この場で決着をつけようじゃねえか!!」

 「ああ、いいだろう。まぁ、負ける気はしないがな!!」

 そう言いムドルは、グレイフェズを睨みつけた。

 (グレイがこうも簡単に、挑発に乗るとは……。まぁ、嘘はついていませんので)

 グレイフェズもムドルを鋭い眼光で睨みつける。

 (クッ、みてろよ……ムドル)

 そして二人は身構えたあと、お互いの動きを警戒していたのだった。