闘技場のような部屋の中央。カロムはムドルとベルべスクのどっちにするか悩んでいた。

 片やグレイフェズとムドルとベルべスクは、カロムが誰を選ぶのかと思いながら待機している。

 そのためか四人の周囲の空気は、重くなっていた。

 (どっちを選ぶつもりだ? 人間の姿に変え能力を抑えていても、二人は魔族だぞ。そんな二人に、能力を封印している俺が勝てるとも思えない)

 そう思いながらグレイフェズは下を向いている。

 (さて、カロムは誰を選ぶのでしょうか? まぁ……どちらでも構いません。ただ、できればグレイと対戦してみたいですね)

 ムドルはそう考えグレイフェズへ視線を向けた。

 一方ベルべスクは無言のまま不安な表情でカロムを見据えている。

 (さて、指名権を得ることができたが……どっちにする? ベルべスクにムドルか……。両者ともに悪くないが。
 身長で言えば、約十五センチの差で……ベルベスクよりもムドルの方が高い。それにみた感じだと、グレイフェズよりも約五センチぐらいベルべスクの方が低いな。
 どうする? 能力では、選びようがない。それなら……身長差で選ぶか。まぁ、賭けは嫌いじゃないしな。あとは運に任せるってことで……これで行くか)

 そう考えがまとまるとカロムは、ムドルの方に視線を向けた。

 「そうですね。悩みましたが……ムドル、私の陣営の守りをお願いします」

 それを聞きムドルは、ニヤリと笑みを浮かべる。

 「ああ、承知した」

 そう言いムドルは、チラッとグレイフェズをみた。

 (……ムドル。なんであんなに嬉しそうなんだ? いや、それよりも……あの様子だと。俺と対戦したいと思っていたのか……。まぁいい……お前がその気なら、やってやろうじゃねえか!)

 そう言いグレイフェズは、ムドルを鋭い眼光で睨む。

 それに気づいたムドルも、グレイフェズを睨み返した。

 (その表情は……やるきですね。面白い、私もその気でしたので……)

 ムドルはそう思いグレイフェズを目を細めみると微かに笑う。

 (あーオレは知らんぞ。ここがどうなってもな……)

 そう思いながらベルべスクは、グレイフェズとムドルを交互にみる。

 「それでは決まりましたので、作戦タイムを設けましょうか」

 そうカロムが言うと三人は頷いた。

 「そうだな……その方がいい。じゃあベルべスク、向こうに行こうか」

 グレイフェズはそう言いベルべスクの方に視線を向ける。

 「了解だ!」

 そうベルべスクが返答するとグレイフェズは、自分の陣地にある浮遊魔鉱石の方に歩き出した。そのあとをベルべスクが追う。

 「さてと、我々も作戦を立てましょうか」

 そう言いカロムは、ムドルをみたあと自分の陣営の浮遊魔鉱石がある方へ歩き出す。

 それを聞きムドルは、軽く頷くとカロムのあとを追いかける。

 そしてその後、四人は二手に分かれて話し合ったのだった。