カロムは試験に使うための的となる物を異空間から取り出した。

 それは、この世界にあり得ないような装置である。

 そうセットされた拳ぐらいの球が装置から飛び出すのだ。……ハッキリ言って、これバッティングマシンだと思う。

 素材はこの世界にある鉱石などで造られている。見た目は、間違いなくバッティングマシンそのものである。

 だが……それにしても、小型とはいえ……よくこんな物が異空間に仕舞って置けるな。

 「このショット装置を壁際に設置します。少し、待ってください」

 そう言いながらカロムは壁際へと向かった。

 (……アレが的? みたこともない装置です。動く物体を撃つと言っていましたが……どんな仕組みになっているのでしょうか)

 そう思いながらムドルは、カロムが設置しているショット装置を目を凝らしみる。

 (それにしても、まだ耳が変です。まぁ、視力は大丈夫なので問題ないと思いますが)

 そう思考を巡らせながらカロムが設置し終えるのを待った。


 カロムは設置を終えると戻ってくる。

 「さて、ルールを説明します」

 そう言いカロムは説明し始めた。

 「……なるほど。あの装置が放った球を撃つって訳か」

 「ええ、ムドル……そういう事です。その球を撃ち合い、数多く命中させた方が勝ちとなる。それと開始の合図と共に、私が持ってるこの装置に魔力を注ぎ作動させますので」

 それを聞きムドルは、カロムが持っているスイッチのような物に視線を向ける。

 「球を放つ度に、その装置に魔力を注ぐのか?」

 「いいえ、開始すれば……連続で球が放たれます。一定の間隔で、ですが……」

 「という事は、休んでる暇がないな」

 そうムドルが言うとカロムは頷いた。

 「そうなる。さて、そろそろ開始しましょう。遅くなってしまいますし」

 「ああ、そうだな……」

 そう言いムドルは耳栓をすると、カロムに指定された位置に立ち魔弾銃を構える。

 それを確認するとカロムは、自分も定位置についた。

 「開始します!」

 そう言いスイッチに魔力を注いだ。と同時に、そのスイッチを床に無造作に放り投げた。すかさず魔弾銃を身構える。

 それと変わらずの時差で、壁際に設置されたショット装置から球が斜め上に発射された。

 それに反応しムドルとカロムは、魔弾銃の引き金を引く……。

 二人の銃口から魔弾が発射されて、的へと向かう。そしてカロムの魔弾が球に命中する。すると球が燃え、炭になった。

 ムドルはそれをみるも、悔しがる間もなく球が発射される。

 それに即座に反応し二人は、魔弾銃を構え引き金を引く……。

 二発目はムドルの魔弾が命中した。そして中った球は、バンッと破裂する。

 ゆっくりしている暇もなくショット装置から球が発射されていく……。

 それを二人は、引き金を引き撃っていった。

 そして、十発……全て打ち終える。

 それと同時にカロムは、ガクッと肩を落とし床に膝をついた。

 「まさか……十発中、七発も命中させた。前半の三発は、外したものの……。ムドル、魔弾銃を扱ったことがあるのか?」

 そう言いながらカロムは、ムドルを上目づかいでみる。

 「いや、このタイプのはない。だが、魔力を放つ魔弾銃ならある」

 「なるほど……そうなると、格闘だけでなく魔法も使えるのですね」

 「多少ならな。それで、試験はこれで終わりか?」

 そうムドルに聞かれカロムは頷いた。

 「ええ、いいでしょう。では、次のグレイフェズと交代してください」

 そう言いながらもカロムの顔は、ピクピクと引きつっている。

 それをみるもムドルは気づかないフリをして、グレイフェズとベルべスクの居る部屋へと向かった。

 そしてムドルはグレイフェズ達の方に向かいながら、してやったりと口角を上げ笑みを浮かべる。