カロムは試験の内容を説明し始めた。

 「私と一対一で対戦して頂きます。それと、三人ともに対戦方法や条件が異なる。という訳でベルベスクは、武器や魔法を使わないでください」

 「ってことは、素手での対戦になるのか?』

 そうベルベスクは言い真剣な表情になる。

 「そうなります。その代わり私も素手で行いますので」

 そう言いカロムはベルベスクをみた。

 「なるほど、オレはそれで構わねぇぜ』

 ベルベスクはそう言い、ニヤリと笑う。

 「おい、ベルベスク! 大丈夫なのか?」

 そうグレイフェズが不安な表情で問いかける。

 「グレイ、心配ない」

 そう言いながらムドルは、ポンと手をグレイフェズの肩に乗せた。

 「どういう事だ? ベルべスクが素手で勝てるとも思えない」

 「さぁ、どうなるか。まぁ、みてれば分る」

 ムドルはそう言い、ニヤリと笑う。

 そう言われるもグレイフェズは、ムドルの真意が分からず不安な面持ちになる。

 (本当に大丈夫なのか? 確かにベルべスクは魔族だ。でも今は、人間の姿……魔族の力を使うことができないはず。それなのに、心配するなって……)

 そうこうグレイフェズは考える。

 「では、グレイフェズとムドル。別室でみていてください」

 そう言いカロムは、ティハイドが居る部屋と違う場所を指差した。

 それを聞きグレイフェズとムドルは頷き指示された部屋へ向かう。

 カロムはそれを視認するとベルべスクの方に視線を向ける。

 「ベルべスク、定位置についてください。私も位置につきますので」

 「ああ、分かった」

 そう言いベルべスクは指示された場所へ移動した。

 そのあとを追うようにカロムは向かう。

 (どの程度の力があるのか。まぁ所詮、冒険者レベル。強いと言っても、それほどではないだろう。それにみた感じ力があるようにみえないしな)

 そう思いながらカロムは定位置についた。

 (素手か……最近、運動不足だったから丁度いいかもな。だが、感覚が鈍っていなければいいが)

 定位置につくとベルべスクは、そう思い目を凝らしながらカロムをみる。



 ――場所は移り、グレイフェズとムドルが居る部屋――


 グレイフェズとムドルはカロムに指示された部屋にくると、窓越しからベルべスクとカロムをみた。

 「ムドル、本当に大丈夫か? いくらベルべスクが魔族でも、今は力を抑えてるんだよな」

 「ああ、問題ない。アイツは、確かに召喚魔導師だ。それに人間のアイツは、ただの魔導師。しかし、元々は格闘の方が得意だ。オレよりも弱いけどな」

 「……」

 それを聞きグレイフェズは絶句する。その後、口を開いた。

 「待て、じゃあなんで召喚魔導師になった?」

 「オレのためらしい。……いいと言ったんだがな」

 「なるほど……お前の能力を、補佐するためか」

 そう言われムドルは、コクリと頷く。

 「そういう事だ。ん? そろそろ始まる」

 「ああ、そろそろか。だが、意外といいヤツなんだな……ベルべスクは」

 「ええ、仕える主を間違えただけ。まぁベルべスクは、魔族ながら人がいいので……」

 そう言いムドルは微笑む。

 それを聞きグレイフェズも笑みを浮かべる。

 そしてその後も二人は、ベルべスクとカロムの試合をみていたのだった。