ここは、かつてアドバルド帝国があったセルフィルス大陸。そして名もなき村……そう、グレイフェズが生まれ育った村だ。

 この村は遥か昔に勇者と聖女が最後に滞在し、ここで生涯を過ごした場所である。

 村は現在、建物などあったのかも分からないくらいに崩壊していた。

 それだけではない。だれも、この村を訪れなかったのだろう。あちらこちらに骨らしき物が転がっている。


 この村の入口があっただろう場所にクレファスとレグノスは立っていた。

 あれから二人は城を出て船に乗り、各地を転々し二ヶ月もかけてここまでくる。

 「……レグノス。これは……悲惨なものだな」

 「ああ、帝国があっただろう場所も……廃墟とかしていた」

 「あの時、助けがこなければ……俺たちの国もこうなっていたのか」

 そう言いクレファスは、周囲を見渡す。

 「そうですね。さて、こんな状態で何がみつかる。まぁ……行きますか」

 レグノスがそう言うとクレファスは頷いた。

 そして二人は村の中へと向かう。


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 クレファスとレグノスは、村の中をくまなく調べ歩いた。

 「廃墟よりも……酷いな」

 「ここに……初代聖女が勇者と暮らしていた。本当なのかと思うほどに、滅茶苦茶です」

 そう話ながら二人は、更に奥へと歩みを進める。


 しばらく歩くと女性らしい人影をみつけた。

 「女? なんでこんなとこに……」

 「クレファス、私に聞かれてもなぁ」

 「そうだな……声をかけてみるか」

 そう言いクレファスは黄色い髪の女性の方へと歩みよる。そのあとをレグノスが追った。


 その女性とは、いや女性ではない。見た目は女性そのものだが……。キャリー(本名、ジルキャルム・リズライ)だ。

 二ヶ月前にグレイフェズが、タルキニアの町にある酒場の奥の民家で会っていた人物である。


 二人はキャリーのそばまでくると話しかけた。

 「ここで何をしている?」

 そうクレファスに問われキャリーは振り返る。

 「あらぁ、クレファスとレグノスじゃないのぉ。貴方たちも、ここに来たのね」

 「ゲッ、情報屋のキャリー!!」

 「なぜお前がここにいる!?」

 そう言いクレファスとレグノスの顔は、一気に青ざめた。


 二人はキャリーを知っていた。そうキャリーは、情報屋だけでなく。スパイ的なこともしていたからだ。

 そのためバールドア城の上層部の者たちは、キャリーの情報力とスパイとしての腕をかい依頼をしている。

 因みにこのことをグレイフェズは知らない。


 キャリーは二人の反応をみて不機嫌になる。

 「ちょっと、何よその嫌そうな顔は……。アタシがここに居ちゃ駄目なのかしら?」

 「いや、そういう訳じゃない。まさかお前がここに居るとは思わなかっただけだ」

 「そ、そうそう……。ところで、キャリーは何をしていたのですか?」

 そうレグノスが聞くとキャリーは口を開いた。

 「それはアタシが聞きたいわ。なぜ二人がこんな所に居るのかしら?」

 「それは……」

 「……」

 クレファスとレグノスは、部外者であるキャリーに事実を話す訳にもいかず。なんて言い訳をしたらいいのかと悩む。

 「なるほど……まぁその様子を見る限り、上の命令のようね」

 そうキャリーが問うも、二人は口を閉ざしたままだ。

 「あくまでも、だんまりかぁ。じゃあ、仕方ない。なんで私がここに居るのか話すわね」

 そう言いキャリーは、なぜここに居るのかを話した。

 「……グレイの依頼? ってことは、アイツもキャリーのことを知ってたってことか」

 「クレファス、そういう事ね」

 「それも、巻き込まれて異世界から来た事例を調べるため……。まさかとは思うが、グレイと一緒に居た舞姫のことか?」

 そうレグノスに聞かれキャリーは考えたあと頷く。

 「多分そうね。私は、そのことを調べ歩いていた。そしたら、ここに辿り着いたのよ」

 「なるほどな。だがキャリーと俺たちとでは、目的が違う」

 「私たちはグレイの産まれたこの村で、勇者と聖女について色々調べることですので」

 そうレグノスが言うとキャリーは驚いた。

 「ちょっと待って! この村って、グレイの……。って、まさか!? グレイはこの村の唯一の生き残り、それも勇者と聖女の子孫ってこと?」

 「そうなるだろうな。それに、アイツの真の姿を俺たちはみた」

 「ええ、そうですね。あれには、驚きましたが」

 クレファスとレグノスの話を聞きキャリーは、何を言ってるのか分からず問いかける。

 「どういう事? 何があったって言うのよ」

 そう問われ二人は、その時のことを説明した。

 その後、三人は色々と話をする。

 そして一緒に行動することになり村を探索し始めたのだった。