ここはタルキニアの町。あれから、ひたすら歩いてこの町に来ていた。

 私とグレイは町中を歩きながら宿屋に向かっている。グレイの話だと知り合いの宿屋らしい。

 露店が両脇に並んでいる。みたこともないような野菜や果物が店に置かれていた。


 美味しそう……。あの果物ってどんな味がするんだろう。


 私は立ちどまり店に置かれている紫色の林檎に似た果物をみつめる。

「おい、ルイ。ムリゴ、食べたいのか?」

「ムリゴ? もしかして、これ」

 紫色の林檎に似た果物を私は指差した。

「ああ、そうだ。食べたいのなら買ってやろうか?」

「いいの? 自分でも買えるけど」

「……俺に買ってもらいたくねえなら構わないが」

 グレイは、ムッとしている。なぜ不貞腐れているのか分からない。

「そうだなぁ。やっぱり、グレイに買ってもらおうかな。それに今あるお金は、必要な物を買う時に使いたい」

「フッ、そうだな。その方がいい。それに俺も丁度、小腹がすいてたとこだ」

 そう言いながらグレイは、ムリゴを二個買った。

 グレイは買ったムリゴの一個を私に「ほい」とくれる。それを受け取った。

 私はどこかで食べるのかとキョロキョロする。だがグレイは、歩きながら食べ始めた。

「ん? 食べないのか」

「えっと、歩きながら食べるの?」

「ああ、そうだが」

 不思議そうな表情で私をみる。

「そうなんだね」

 自分が持つムリゴをみて洗わなくて大丈夫かな、と一瞬そう思った。

 うん、大丈夫。問題ない問題ない。

 そう思いながらムリゴにかぶりつく。……凄く甘い。林檎よりも数倍、甘かった。

 あまりにも美味しかったので、夢中になり食べる。

 食べ終えると私はグレイをチラッとみた。グレイは笑いを堪えている。

「……お前、かなり腹すいてたんだな」

 今にも吹き出しそうになっている。

「ムッ、別にお腹すいてたわけじゃない。凄く美味しかったんだもん」

「なるほど、そういう事にしておくか」

 そう言うもまだグレイは笑いを堪えていた。

「あー、その顔。絶対、信用してないよね」

「さぁ、どうだろうな。それより、どうする。このまま宿に向かうか? それとも、もう少し店をみて歩くか?」

 そう言われ私は立ちどまり両脇の店を交互にみる。

 右側にアクセサリー店があった。

「わぁー、綺麗……」

 色々なアクセサリーを端から端まで順にみる。と、一際目立つペンダントがあった。私は手に取ってみる。

 桜のような飾りが施され中央には、赤い宝石のような物が埋め込まれていた。

「ほう、お前でもそういう物に興味があるんだな」

「お前でもって……。私だってお洒落ぐらいします!」

 私が向きになってそう言うとグレイはニヤッと口角を上げる。

「そうか。なら、買ってやる」

「えっ!?」

 驚いた。買ってくれるのは嬉しいけど、なんで? それにこれ高そうだよ。そんなにあっさり『買ってやる』て……。

 私は流石に、いいと言おうとした。だけど言う前に既に購入してる。

「あー、えっと……」

「ほれ、着けてやる」

 そう言い私の目の前にきた。

「だ、大丈夫。このぐらい自分で、」

 それを無視しグレイは無理やり私の顎をクイッと上げペンダントを着ける。

 私は動けなかった。なぜか動悸がする。息苦しい。これってまさか……ううん、そうだとしてもグレイはこの世界の人だし。そもそも、グレイが私を女性としてみてるはずない。

 そう思い今の感情を押し殺した。

「んー、思ったより似合うな」

 ペンダントを着け終わるとグレイはそう言い笑みを浮かべる。

「あ……ありがとうございます」

 私は、ハッと我に返りお礼を言う。

「ん? 顔が赤いぞ」

「えっ!? ……って、そう言うグレイも顔が赤いですよ!」

 そう言うとグレイは目を逸らし空に視線を向けている。私もグレイの顔がまともにみれなくなり俯く。

「あー……ここにいつまでも、居たって仕方ない。宿に、行くか」

「そ、そうだね……行こう」

 そしてその後、お互い目を合わせないまま宿屋に向かったのだった。