ここはスルトバイスのチクトス国がある大陸よりも南東側。そこには綿毛の聖域【ミルフェルム】と言われる大陸がある。

 この大陸は、綿毛が辺り一面に生息し草原が多い。それだけではなく、山や森に囲まれ動物たちがのびのびと暮らしていた。

 そして、多種な獣人やエルフなどが住む大陸だ。


 この大陸の中央に位置するセセルの森には、エルフの国【フォルレンシス】のキュウナ村がある。

 現在、ララファルはここにいた。

 「監視してこいかぁ……」

 そう言いながらララファルは、家の壁に設置されている木の長椅子に腰かけている。そして遠くの景色を眺めていた。

 (とりあえず明日、もう一度あの国に行ってみるけど。あの白銀の髪の男が居るとは限らない。でも、村長には逆らえないしなぁ。
 ……間違いなく、あの白銀の髪の男が使おうとしてたのって勇者の能力だと思う。それを確認し、もしそうならここに連れてこいか。それまでは監視……)

 そう思いながら立ち上がる。

 「考えてたって、仕方ないかぁ。実際、この目で確認しないとね。だけど結構、いい男だったなぁ」

 そう言いながらラファルは、自分の家の中に入っていった。



 ――場所は、マルベスウム国のルべルスト城に移る――


 シュウゼルは城の自分の書斎で、椅子に座り机上に寄りかかりながら考えごとをしていた。

 (簡単にだが、なんとか城の修復は済んだ。だが、何が起こった? ティハイドの話では、失敗したと言っていたが。その訳が……分からない、だと……ふざけるな!!)

 顔を引きつらせ両手で机を、バンッと叩く。

 (建物だけではない……配下の者たちは、大怪我をした。いや、それだけじゃ……中には死んだ者もいる。それに、どう陛下に報告すれば……)

 そう思考を巡らせる。

 (ベルべスクが、ここに居ない。アイツが入れば、何か提案してくれたかもしれぬが。恐らく、今頃ムドルに捕まっているだろう。
 そうなると……このことが露見するのも、時間の問題だな。仕方ない、腹を括るか……。そもそも、ティハイドの口車に乗ったのが悪いのだからな)

 シュウゼルは悔しそうな表情を浮かべていた。



 ――場所は変わり、アクロマスグのティハイドの屋敷――


 屋敷の居間でティハイドは、カロムとソファーに腰かけ向かい合わせで話している。

 カロムは左腕の義手を慣れないためか触っていた。

 「……カロム、大変そうだな」

 「いえ、屋敷の修理は他の者がやっていますので。左腕が義手になったからと言って、影響はありません。それよりも、なぜ失敗したのでしょう?」

 「さあな。そもそも、なぜ聖女が城を抜け出した? それにこの肝心な時に、フウルリスクと連絡が取れん。いったい、あの城で何が起こったというんだ!?」

 ティハイドは怒りを露わにし、ドンッと目の前のテーブルを右拳で叩く。

 「本当ですね。厄災は、間違いなく……バールドア城に放たれたはず。ただ密偵に探らせ分かったことは、何者かが現れ厄災を駆除した。それも聖女以外の何者か……」

 「その何者かが、分からぬのだったな」

 「はい、ですが……恐らく王や城の上の方は知っていると思われます」

 そう言われティハイドは、フゥ―ッと息を吐いた。

 「まぁ、言わないのが当たり前か。警戒しているだろうからな。さて、どうする。恐らく、シュウゼルとはもう手を組めない。他の方法を探さねば……」

 「そうですね。次は、どのようにいたしましょう?」

 そうカロムが問うとティハイドは、ニヤリと笑みを浮かべる。

 そしてその後、二人はそのことについて話し合っていたのだった。