ここはバールドア城の医療施設。

 現在ベッドの上には、泪、グレイフェズ、ムドル、メーメル、ベルベスク、負傷した五人が眠っていた。

 そしてなぜか泪の枕元には、トラ猫が体を丸め眠っている。

 片やムドルの寝ているベッドの脇には、どういう訳か黒豹のような異界の魔獣がいた。

 その黒豹のような魔獣は大人しく床に座り、ジーッとムドルをみている。まるで主人の目覚めを待つかのように……。


 そう、あれから翌日になっていた。


 ――あのあとクレファスとレグノスは、泪のそばまでくる。その後、泪が生きていることを確認すると安心した。

 そのあとからカイルディがくる。その後ろからは、この城の者たちがきた。

 そして泪たち五人は、医療施設へ運ばれる。


 医療施設に運ばれる前、ベルべスクは兵士にトラ猫のことを伝えた。

 それを聞いた兵士は、ベルベスクを結界がある所まで連れて行く。

 その後ベルべスクは結界を解いた。すると、眠っているトラ猫が現れる。そのトラ猫を兵士の一人が抱きかかえた。

 そしてベルべスクとトラ猫は、兵士に運ばれ医療施設に向かう。


 一方ムドルは医療施設のベッドの上で、なぜか能力が解除されてしまった。

 そのため黒豹のような魔獣が、ムドルのベッド脇の床に解き放たれる。

 それをみた城の者は、その場から遠ざかり警戒した。

 しかし黒豹のような魔獣は、ムドルをみているだけで何もする気配がない。

 それに気づいた一人の従者は、恐る恐る近づきムドルのそばまできた。

 それでも黒豹のような魔獣は、何をする訳でもない。ただただムドルをみているだけである。

 そのことを他の者に伝えると、安心し再びムドルの方へ近づいてきた。

 その後、ムドルの治療を始める。


 そして泪たち五人は、治療をしてもらった。


 ――今、泪たちは疲れと薬により眠っている。

 すると扉を開けカイルディが、救護室の中に入り泪のそばまできた。

 「流石に、まだ寝ていますね。この様子では、事情が聞けません。それに……」

 そう言いながらカイルディは、メーメル、ムドル、ベルべスク、グレイフェズ、四人を順にみた。

 「……コチラも無理そうですね。仕方ありません、あとにしますか」

 カイルディはそう言うと救護室を出る。

 だがその時、グレイフェズだけ目を覚ましていた。

 (行ったか……。今のを聞く限り、色々と聞かれるだろう。覚悟を決めるしかない。だが、今は……みんなの目覚めを待ってからだ。
 情けないとは思う。しかし、一人でこれを話すのはキツい……流石にな)

 そう思いながら、少し先の方に寝ている泪に視線を向ける。

 (ルイ……裁きを下す者。いったいどういう事なんだ? 聞いていた話だと、勇者の罪ではなく……この世界のって言っていた。
 そうだとしたら……ルイには、この世界を変える力がある。でもそれが、なんでルイなのか。どうして……)

 グレイフェズはその後も、そう自問自答していたのだった。