紫の怪物の圧倒的な強さに皆が絶望しかかっていた。だが臨時とはいえ泪の能力覚醒により、一握りの希望を持ち始める。

 泪は光のオーラを発しながら、紫の怪物の頭の高さまで上昇した。そして徐に瞼を開いていく。すると両目が赤紫に発光する。それと同時に【審】の文字が、魔法陣と共に浮かび上がってきた。

 ――「我、この世界の理のもと見極め裁きを下す者なり」――

 そう言いながら泪は両手を頭上に掲げる。


 しかし泪は、意識を失ったままである。そう能力により無自覚で、全く自分の意思とは関係なく動いていた。操られているかのように……。


 頭上に掲げた両手が光る。

 ――《見極めレベルMAX!!》

 「現状を見極め裁きを下せ!!」――

 そう言い放つと、掲げた両手の真上に魔法陣が展開されていく。その魔法陣から光の柱が上空に放たれた。

 その光の柱は、立ち込めている雲を貫き上昇する。それと同時に大きな魔法陣が、空に展開された。

 その後、泪は紫の怪物へ視線を向ける。そして右手を頭上に掲げたまま、左手を紫の怪物に向け指差した。

 ――「ジャッジ!!」――

 するとその大きな魔法陣は漆黒の光を放つ。それと同時に魔法陣から漆黒の大剣が無数に現れ、紫の怪物へと勢いよく放たれる。

 その無数の漆黒の大剣は、紫の怪物へと刺さっていった。


 ――グオォォオオオーー……――

 そう大声で鳴き叫び暴れる。辺りに轟音が響き渡り、激しく揺れた。

 紫の怪物は、必死でその漆黒の大剣を払おうとする。だが、消すことも壊すこともできなかった。

 漆黒の大剣が体に無数に刺さり暴れていた紫の怪物は、耐えられなくなり片膝を地面につける。

 「ナゼ……ダ。コノ……チカラ……ハ、アシキ……モノ……ヲ……サバク……ハズ」

 そう大声で言い泪の方をみやる。

 「……ソウカ。ワレ……ノ……シテイル……コト……ヲ、トメル……タメ……カ」

 それを聞いた泪は頷いた。

 そう話している間にも漆黒の大剣は、紫の怪物へと降り注ぐ。

 ――「受け入れろ。……罪は軽くなる」――

 「ソレハ……ユウシャ……ノ、ツミ……カ」

 ――「勇者の罪、それだけではない。この世界の罪……」

 そう言われ紫の怪物は不思議に思う。

 「イミガ……ワカ……ラナイ。ワレ……ハ、ユウシャノ……イシヲ……」

 ――「そうお前は、勇者の思いを受け創り出された存在。だが、この世界に存在してはならない。この世界の者を裁く存在はお前でも勇者でもない」――

 「ソウカ……ソレガ、オマエ……カ。ソレナラ……ワガ、アルジ……ノ……ネガイ……ヲ……――――」

 そう言い紫の怪物は、泪に勇者の思いを伝える。

 ――「……分かった。我の主は眠っておる。故に、プレートに書き記しておこう」――

 「スマヌ……。ワレハ……スデニ……ヒツヨウ……ナイ……ソンザイ。ナラバ……コノ……ツミ……ウケ、イレヨウ」

 それを聞き泪は頷いた。

 それと同時に泪は、掲げていた右手を紫の怪物へ向ける。

 すると空の魔法陣は、金色の光を放った。その光は大きな柱となり紫の怪物へと向かう。そしてその光の柱は紫の怪物の全身を覆い尽くした。

 その後、紫の怪物は魔法陣と共に消えた。そして周りに居た厄災も魔法陣と共に消滅する。

 するとそれを確認したかのように泪の体は、光と共に地面に着地した。と同時に体から発せられていた光が消え、バタンと地面に倒れる。その後、金色だった髪は元の色に戻った。

 そして、空に立ち込めていた雲は消え快晴になる。



 ――場所は移り、マルベスウム国のルべルスト城――


 厄災が消滅したためそれに伴い魔法陣は、ボンッと大きな音を立て爆発した。

 その周りに居た魔族の神官……魔導師やシュウゼルは、吹き飛ばされる。……だが、シュウゼルと数名の魔導師は大怪我をするも助かった。



 ――場面は、アクロマスグのティハイドの屋敷に変わる――


 やはり厄災が消えたため、魔法陣および厄災の箱は爆発した。近くにいたカロムは、異変に気づき咄嗟によける。だが間に合わず左腕を吹き飛ばされた。

 ティハイドもその異変に気づき、即座に転移のペンダントを使い外に逃げる。

 そしてティハイドは、何が起きたのかと考えていたのだった。