紫の怪物は、ユックリと城の方へ進む。

 その後ろ姿を見据えながら泪は剣を構え直す。

 (うん、緑の点……有効対象照準点が現れた。あとは、さっきのスキルを繰り返し使ってみよう。もしかしたら、いけるかもしれないし)

 そう思い再び《見極めレベル8》を使い、紫の怪物の背中を攻撃する。

 その攻撃を三、四回したところで紫の怪物が静止した。そして、徐に泪の方へと体を向ける。

 「ジャマ……ヲ……スル、ナ」

 そう言うと紫の怪物は、宙に浮いてる状態の泪の体に軽く触り地面に叩き落した。

 軽く触った程度でも威力は、かなりのものだ。

 「キャアァァアアアーー……」

 泪は何もできないまま地面に叩きつけられる。血が頭から顔へと伝う。

 「……ま、まだ……」

 そう言うも……泪は気を失ってしまった。

 それを確認せずに紫の怪物は、再び城の方を向き歩き始める。


 その光景をみたグレイフェズは「ルイィィイイイイーー!!」と、ありったけの声を張り上げ叫んだ。

 そして這いながら泪の方へ向かおうとする。だが、体が思うように動かない。つらい表情で泪をみつめた。

 ムドルもまたそれをみて、泪の所に行こうとする。

 「ルイさん……ツウ……傍に、向かわなければ……」

 そう思うも、やはり痛くて体が思うように動かなかった。悔しさのあまり唇を噛み血が滲み出る。

 そしてメーメルとベルべスクも同じく動こうとするが、どう足掻いても体は思うようにならず……。

 四人は泪のそばに行けずに、つらそうな表情になっていた。



 ――場所は、バールドア城の広場が見渡せる二階に移る――


 その光景をカイルディとクレファスとレグノスは、険しい表情でみていた。

 いや、三人だけではない。この城の者は、それらをみていて絶望の表情を浮かべている。

 「これは……まずいですね。ルイ様が動き、なんとかなるかと思ったのですけれど……」

 「カイルディ様、そうですね。そうなると……このままでは、城にも被害が」

 レグノスがそう言うとクレファスは、二人に背を向け歩き出した。

 「このままみているなんてできない。ルイ様を助けに行く……」

 「クレファス、待ちなさい。今は、城の守りを……」

 「……そうかもしれない。すみません、私もクレファスとルイ様たちの救出に向かいたいと思います」

 そう言いレグノスは、カイルディに一例をするとクレファスを追う。

 「仕方ありませんね。しかし……本当に、ルイ様はこのまま……」

 カイルディはそう言い泪の方に視線を向ける。

 (神は、我々を見捨てるというのでしょうか。……ルイ様は、なぜこの世界に……。考えれば考えるほど、分からなくなってしまう)

 そう考えながらカイルディは、辺りを見渡した。



 ――だがこの時、泪のプレートは虹色に発光していた。そして……なぜか、TPがMAXの100になっている。しかしそれを知る者は、誰一人としていない……――