ここは離れの屋敷。私と清美が召喚されてから七日、経っていた。そう今日、私はこの城を出る。


 あれからグレイに嫌というほど稽古をつけてもらった。

 走り込み、石を使っての的当て、腕立て伏せ……極めつけが、グレイの魔法攻撃を避けること。

 だけど、みえていては避けられるだろうと目隠しをしてだ。流石にみえないため何度も魔法をくらった。

 剣での奇襲も想定した方がいいだろうという事になり、交互に行うことにする。

 だけど結局、ある程度の気配が感じられるようになっただけだ。まぁ、それだけでも進歩なんだけどね。

 稽古や読書の合間、従者さん達やカイルディさんに元の世界に帰る方法はあるのかと聞いてみた。

 だが、知らないと言われる。そのため本を読み漁ってみた。でも、どこにも記載されていない。

 落ち込んだ……だけど、もしかしたらこの世界を旅していれば、どこかで帰る方法がみつかるんじゃないのかと思った。

 そのひと握りの希望に賭ける。そう思い私は、とりあえずこの城でできることをしていった。


 現在、私は部屋で荷物の整理をしている。

「ふぅ、こんなもんかなぁ。アイテムや武器、防具などのチェックは済んだし。あとはグレイとカイルディさんを待つだけだね」

 そう、なぜかグレイも一緒にくるらしい。

 グレイとカイルディさんの話だと、まだ一人で城の外に出るのは危険と判断したからって言っていた。

 実際それが本心か分からないけど……まぁ、一人よりは心強いからいいけど。

「あとは、待つだけだね」

 そして私は、荷物をテーブルに置き椅子に腰かけ、色々考えながらカイルディさんとグレイを待った。



 ――場所は移り、ここはカイルディの書斎――


 カイルディとグレイフェズは、窓際で話をしている。

「……なるほど、有効対象照準点……ですか。今のグレイの話だと、自身で奇襲をかける場合には有効。ですが、相手に奇襲された場合には使えない」

「はい、ただ使い方次第では……かなりチートな能力かと」

「確かにそうですね。ただそれは、まだ初歩能力。どう発展していくのか分かりません」

 真剣な表情でカイルディは窓の外をみた。

「分かっております。その能力のこと――――ルイの傍でしかと見届けてまいります」

「頼みましたよ。では、そろそろ行きましょうか……」

 そう言うとグレイは頷く。その後、二人は書斎を出て離れの屋敷へ向かった。



 ――場所は清美の部屋に移る――


 清美は窓際に立ち、門の方をみていた。そう今日、泪が城を出ていくからである。

「泪が城から居なくなる。私たち、これからどうなっちゃうのかな」

 不安な気持ちで表情を曇らせていた。

 このまま泪と、もう会えないんじゃないのかと。そう思いながら外を眺めていた。

「多分、泪がここに居たら……なんとかなる、って言うだろうね。いつまでも考えてたって仕方ないし。今、やれることをしよう」

 そう思い今、自分が聖女としてできることをしていこうと決心する。

 その後も泪が城を出るまで門を眺めていた。



 ――場面は変わり、ここは城の門――


 門番が両側に立っている。

 私はカイルディさんとグレイとここに来ていた。

「いよいよだね」

 そう思い城の方を振り返る。いよいよこの城とお別れだ。長いようで短かった七日間。

 ここに清美と一緒に召喚されて色々なことがあった。清美のことも心配だけど、大丈夫だと思っている。私より、しっかりしてるしね。

 ただ、心配なのは聖女召喚の真の意味。多分、この城の人たちは見る限り悪い人たちじゃない。その点は大丈夫だと思う。

 まぁ、そのうち旅をしていれば何か分かるかもしれない。

「ああ、ルイそうだな。ではカイルディ様、」

「頼みましたよグレイ。……ルイ様のこと」

 なんか知らないけど、二人はアイコンタクトらしい仕草をしている。なんだろうと思った。だけど聞いても仕方ない……なので、聞くのをやめる。

 そしてその後ちょこちょこ振り返りながら私は、グレイと門を潜り城の外に出たのだった。