ここはバールドア城の広場。状況は最悪――そんな中でも泪たち、いやグレイフェズとベルべスクは迫りくるデビルミストの群れに向かっていく。

 しかし泪は、この状況で何もできないのかと思い悩み頭を抱え蹲ってしまった。


 ▼△★▽▲☆▼△


 私は、なんて無力なんだろうって思った。そう、能力があっても……役に立たない。厄災をどうにかすることもできないなんて……。
 それに、私がこの世界に居る意味って何? だけど、なんとかしたい。やれるだけのことを……。でも……どうやって? それが分からないから……。


 考えれば考えるほど、余計に何も浮かばず……ただ涙が溢れ出るだけだ。


 グレイ大丈夫かな?


 そう思い私はグレイの方をみる。


 つらそう……。グレイもだけど、ベルべスクさんも……。ここで考えてても、何も解決しない。今、私にできることって何かな?


 そう考えながらグレイを目で追う。そして、ひたすら何ができるのか考えていた。



 ――場所は、ベルべスクの居る方へ移る――


 ベルべスクは異界の怪物と魔獣を警戒しながら、デビルミストとの間合いを取った。

 (ここは杖を使った方が、いいか)

 そう思い魔族語で唱えると異空間が開く。そこから、いかにもアンティークな杖を取り出した。

 「さて、オレが持ってる最高のこの杖で……どこまで戦えるか分からねぇ。だが、やらなきゃな」

 そう言い杖を持ち直し身構えると、デビルミストの群れを見据える。その後、魔族語で唱え始めた。

 《聖なる精霊(レヒワツレヒネヒ) 光の(シマ二ん)雷獣(タヒビュフ) 異空間を(ヒムフマノン)繋ぐ扉(ルワヅロジタ) 我、(ナネ)命ず(テヒブ) いでよ(ヒゲソ) 聖なる(レヒワツ)雷獣(タヒビュフ)セイントライル!!(レヒノロタフツ)

 そう言い放ちベルべスクは、杖を頭上に掲げる。すると、杖の先端の魔石が光った。それと同時に、魔石から光の柱が空高く放たれる。

 光が放たれた周囲の空が眩く光った。その後、魔法陣が展開される。そしてその魔法陣から、光のエレメント系のライオンのような聖獣が現れた。

 これが聖なる雷獣セイントライルだ。名前の割には、猛獣のような姿をしている。

 セイントライルは、スッとベルべスクの前へと降り立った。


 そして……。――ガオォォオオオーン!!――


 そう雄叫びを上げる。


 ――いや、これライオンそのものでしょ。ただエレメント状態なだけで……。まぁ、それはさておき……――


 それを確認するとベルべスクは、杖をセイントライルに向けた。

 「目の前の(ネンカへン)デビルミストの(ゲジツチユロン)群れを滅せよ!!(クネヌテッレソ)

 そう魔族語で命令すると、セイントライルは……。


 ――ガオォォオオオーン!!――


 と、雄叫びを上げデビルミストの群れに突っ込んでいく。

 セイントライルは雷をまといながら一体一体、仕留めていった。

 「意外と……いけるのか?」

 そう思ったのは、束の間。

 セイントライルは数百ものデビルミストを駆除したあと、そのまま消滅してしまった。……っと言っても、消えて元の精霊界に戻って行っただけである。

 「クソッオォォォ、やっぱり……オレの力じゃ、こんなもんか」

 悔しがりながらベルべスクは、まだ居るデビルミストの群れに視線を向け睨んでいた。