ここはバールドア城の広場。あれからメーメルはムドルのそばにくると即、転移の魔法を唱え東側の小屋に向かった。


 そしてここは、東側にある小屋の中。メーメルは担いでいるムドルを床に寝かせると、魔族語で簡単な回復魔法を唱える。

 「ふぅ~、これで良いのじゃ」

 「メーメル様、申し訳ありません」

 「うむ、ムドルは良くやったのじゃ」

 そう言われムドルは余計に申し訳ない気持ちになった。

 「……そうでした。魔獣の同化を解除しなければ……」

 「まだ解除しない方がよいのじゃ」

 「どういう事ですか?」

 そう言いムドルは首を傾げる。

 「解除したら、その魔獣はどうなるのじゃ?」

 「……そういえば、そうですね。戦わないといけなくなるかもしれません」

 「そういう事じゃ」

 そう言われムドルは頷いた。その後、険しい表情になり俯く。

 「不甲斐ない。みんなは、必死で戦っている。それなのに、私はこんな有様……悔しいです」

 「それほど落ち込む必要はないのじゃ。ムドルは良くやったと思うがのう」

 「……ありがとうございます。しかしながらここに居ては、今の状況がみえない」

 それを聞いたメーメルは、呆れた表情になる。

 「うむ、仕方ないのじゃ。屋根の上にでも移動するかのう」

 「メーメル様、申し訳ありません」

 そう言いムドルは頭を深々と下げた。

 その後メーメルは、魔族語で詠唱する。そして転移の魔法で、広場の状況がみえる屋根の上へと向かった。



 ――場所は変わり、バールドア城の広場の中央――


 私はムドルさんのことが心配になり向かおうとする。だけど、メーメルが向かったのがみえた。なので大丈夫だと思い、ムドルさんの方に向かうのをやめる。


 ムドルさんは問題ないね。だけどグレイ、大丈夫かな? 多分、一人じゃキツいと思う。心配だけど……今の私に何ができるの。……邪魔になるだけだよ。


 そう思ったら涙が出てきた。みているのが、余りにもつら過ぎる。


 どうしよう……このままじゃ……。


 そうこう思い再び人々に憑りついているデビルミストを追い出そうとした。

 「ルイ、待て。一旦、追い出し作業はやめておいた方がいい」

 そう言いながらベルべスクが、私の方に近づいてくる。

 そう言われ私は、ベルべスクの方を向いた。

 「どういう事?」

 「酷かもしれねぇが。デビルミストをこれ以上、追い出したら余計に増え続ける。そうじゃなくても、魔法陣から出て来てるんだからな」

 私はそれを聞き周囲を見渡してみる。

 「そうかもしれない。でも……憑りつかれた人たちは、どうなっちゃうの?」

 「見捨てるしかないだろうな」

 冷静な顔でベルべスクは、アッサリとそう言い放った。

 「待って、そんな……そんなのは嫌! みんなを助けたい」

 「それは無理だ。そうじゃなければ、グレイフェズは死ぬぞ。それでも良いのか? 良く考えるんだな」

 そう言われ私は、どうした方がいいのかと思いグレイの方をみる。


 ベルべスクの言う通りだと思う。だけど……憑りつかれた人たちを見捨てるって、できる訳ない。でも、そうしないとグレイに負担がかかる。どうしたらいいの……。


 そう思いながら私は少しの間、悩んでいた。