約三百センチメートルあるだろう紫の鬼のような異界の怪物を、ムドルは睨み身構える。

 「流石に近くでみると大きいですね。約百の身長差……それに横幅もあるためか、存在感が半端ありません」

 そう言い警戒するも、やはり紫の鬼のような怪物はムドルを襲う気がないようだ。

 「やはり、襲って来ませんね。ですが、このままにしておく訳にもいきませんので」

 ムドルは深く息を吸うと全身に力を込める。そして、即座に紫の鬼のような怪物の頭の辺りまで飛び上がった。それと同時に渾身の力を込め、回し蹴りを顔に当てる。

 だが紫の鬼のような怪物は、ムドルの足蹴りを顔にくらうもビクともしない。

 一旦ムドルは地面に着地した。

 「普通の攻撃では無理そうですね」

 そう言い紫の鬼のような怪物を見据え体勢を立て直す。

 《ダーク(ガーム)ファイヤー(ヴァヒサー)ハイジャンプ(アヒビャノぺ)ロールキック!!(トーツミッム)

 そう叫びジャンプすると、漆黒の炎を両脚にまとう。そして紫の怪物の頭の位置までくる。すかさずムドルは両脚に漆黒の炎をまとったまま、高速回転しながら顔に目掛け蹴りを入れていく。

 紫の鬼のような怪物は、ムドルの蹴りが当たりよろけ顔に火傷を負う。

 だが、ムドルに敵意を向ける様子もない。

 「これは……大した傷も与えられないだけではなく。私のことを気にもとめていません。流石に……苛立ちますね」

 ムドルは地面に着地すると、紫の鬼のような怪物を鋭い眼光で睨んだ。


 その少し離れた場所には、グレイフェズがいる。

 紫の鬼のような怪物の方に近づけないようにグレイフェズは、デビルミストを大剣で斬り駆除していた。

 「キリがねえ。湧いてくるのだけでも大変だっていうのに、ルイが追い出してるデビルミストまでこっちに来ている。だが、なんとかしないと……」

 そう言いながら迫りくるデビルミストを、次々と大剣で斬っていく。

 (まとめて倒せる、大技でもあればいいんだけどな)

 そう思った瞬間、グレイフェズの脳裏に文字が浮かび上がった。

 「これは……いけるかも、な」

 グレイは大剣を構え直すとデビルミストの群れを見据える。

 《ホーリーヘルファイヤー・ディストラクション!!》

 そう叫ぶと次にする行動が脳裏に浮かんできた。それに従い行動に移す。

 構えていた大剣の柄に魔法陣が浮かび上がり光が放たれる。するとその光が大剣を包み込んだ。

 それを確認するとグレイは、思いっきり大剣を右横に振った。と同時に、デビルミストの群れへと駆け出す。

 そして反動をつけ大剣を左に振り数体のデビルミストをまとめて斬っていく。

 次々とデビルミストは、大剣で真っ二つに斬られ聖なる炎と共に消滅する。

 だが、それでもデビルミストの数は減らない。

 「クソッ、さっきよりは楽だが……まだだ。あとからあとからこっちに向かってくる」

 そう言うとグレイフェズは、まだまだ居るデビルミストの群れを凝視する。

 「だが、ここで諦める訳にはいかねえよな」

 そう思い大剣を構え直すと、再び同じ技を使いデビルミストの群れを駆除していった。