ここは修練場。


 私は、あれから本を読んだあと昼食を済ませる。その後、防具類を身につけると屋敷を出て修練場に向かう。


 そして現在……グレイに試したいことがあるからと告げ、もう一度だけ手合わせをお願いした。

「……試したいこと、か。まぁ、俺は構わないが……もしかして昨日、言っていたことと関係あるのか?」

「うん、だけど試してからじゃないと断言できないから」

 本当は断言できる。でも、これ話しちゃうと意味なくなるから敢えて言わない。

「んー、そうだな。なら一回だけだ。それに、俺も気になるし」

「あ、ありがとうございます」

 ヨシ、今度こそ攻撃をあてるぞ。

 そう思い、ニヤリと笑う。

 グレイは、私に「こい!」と言い広場の方に向かう。私は、そのあとを追った。



 修練場の広場。昨日より、人が多い。

 なんだか私をみる周囲の目が、昨日とは違い刺さる。

 微かに聞こえてきた。「おい、またか」、「大丈夫なのか、またやられるだけだろう。やめとけばいいのにな」、「罪だよな。あの人は、女だって容赦ねぇ。前から知ってたが――――」

 そんなこんなが耳に入ってくる。だけど私は、今日こそみてろよと思い、キッと睨み周囲を見回した。

 だけど周りの人たちは、なぜかニヤニヤしながら目をトロンっとさせてみている。

 もしかして、私を馬鹿にしてるの?

 そう思った。


 ――いや、周りの者は泪の取った態度があまりにも可愛いのでウットリしていただけである――


 私とグレイは、広場の中央にくると定位置についた。

 グレイは、木剣を持ち身構えている。

 それを確認し私は、木剣を構えグレイを見据えた。

 昨日と同じように緑の点が表示される。

 私はそれを視認するとグレイの全体を見回した。


 ヨシ、みつけた! あそこに視点を合わせればいいんだよね。


 そう思い剣を構え直す。次いで、緑の点の照準を合わせた。

 それと同時に、木剣を左下に構えながら駆け出しグレイの手元に目掛け振り上げる。

 それは一瞬だった。グレイの木剣は宙を舞い地面に落下する。

 グレイは目を丸くしていた。私は「やったー!!」っと言い、両手を思いっきり掲げる。

「え、おい……今、何をしたんだ? 信じられない。動いたのは、分かったんだが。動こうとしたけど間に合わなかった」

「うん、これが緑の点の使い方。正式名は【有効対象照準点】って、言うみたい」

「有効対象照準点……どんな能力なんだ?」

 そう聞かれ私は、プレートをバックから取り出しグレイにみせた。

「なるほど……。戦闘態勢に入ると緑の点が現れる。それを意識してみながら、対象者の弱点又は攻撃に有効な場所を探す……」

 真剣な顔でグレイは読み進める。

「……緑の点のピントがあった場所が、か。で、そこ目掛け攻撃する。……ほう、面白い能力だな。だが、まだ初歩能力だと書かれている」

「うん、だから、どうなんだろう。って思ってる。これだけでも、凄いと思うんだよね」

 私がそう言うもグレイは、なぜか険しい表情になっていた。

「いや、どうだろうな。奇襲などには不向きかもしれない」

「奇襲?」

「ああ、いきなり攻撃を受けた時に、この能力を使っている暇はないだろうな」

 そう言われ私は納得する。

「そういえば、そうだね」

「やっぱり、地道に覚えた方がいいだろうな。ってことで、稽古だ。向こうに行くぞ!」

「うん」

 ガッカリし頷いたあと私は、グレイのあとを追った。