厄災によりバールドア城に集まっていた民衆は、パニックに陥っていた。そして城の者たちも、この状況下でどう対処すればいいのかと手を拱いている。

 そんな中、泪たちが現れたため騎士たちは困惑した。


 そう最初、厄災に便乗してきた新手の敵かと思ったのだ。だが、厄災と戦っている姿をみて助けが来たと思う。

 でもその中に魔族が混ざっていたのと、尋常でない威圧感を放つ者がいた。そのため、本当に味方なのかと困惑していたのである。


 片や民衆もまた同じ気持ちだった。

 だがしかし、泪たちが必死で厄災と戦っている姿をみて、段々とその気持ちが薄れてくる。

 もしかしたら、なんとかなるんじゃないのかと思い始めた。

「俺たちにも、何かできることがないのか? みてると痛々しい。あんなに可愛い子が頑張っている」

「ああ、みているだけなんてつらすぎる。俺も手伝いてぇ……そして、彼女に……褒めてもらう。いや、もしかしたらそれ以上の関係になれるかも」

 お互いウットリしながら泪をみている。

「そうだな……。だが……お前じゃなくて俺、だと思うぞ!」

 そう言い二人の男性は、睨み合う。

 するとデビルミストが二人の目の前まで来ていた。二人はそれに気づき慌てて逃げようとする。

「うわぁぁぁ……やっぱ無理だぁ」

「同じく俺もだぁぁ」

 そう叫び逃げ出した。

 そのことに気づきグレイフェズは、即座に動いた。

 グレイフェズは素早く大剣を持ち直すと、すかさず右斜めに振り上げる。そして、その勢いのままデビルミストに目掛け左斜めに振り下ろし真っ二つに斬った。

 そのままの体勢で、もう一体のデビルミストに目掛け大剣を右斜めに振り上げ斬る。

 二体のデビルミストは、漆黒の炎に包まれ消滅した。

 グレイフェズは体勢を立て直し二人の男性に背を向ける。

「ここは危ない。早く逃げろ!」

 そう言いグレイフェズは、大剣を握り直し別の厄災の方へ駆け出した。

「カッケー……」

「ゴクリ……俺も、ああなりてぇ」

「そうだな……だが、俺たちには無理だろうな」

 そう言い厄災が居ないような所をみつけながら、二人はこの城から逃げる。



 ――場所は変わり、バールドア城の執務室――


 まだ話は一向に、まとまっていなかった。

「それとこれとは、別だ!」

「陛下、別ではありません!」

「クレファス、お前こそ……なぜ指示に従わぬ?」

 そう言われクレファスは、返す言葉が尽きてしまい思い悩んだ。

「なぜ分かって頂けないのですか!?」

 クレファスはそう言い頭を抱える。

 その様子をレグノスは呆れながらみていた。

 カイルディとクベイルは、カルゼアとクレファスのやり取りを冷や冷やしながらみている。

 そしてその後も、どっちも意見を曲げず、カルゼアとクレファスの言い合いが続いたのだった。