ここはバールドア城の執務室。あれから国王カルゼアと大臣クベイルとカイルディは、クレファスを待ちながら話し合っていた。

「……厄災、か。まだそれとは断言できない。だが……どうしたものか……」

「陛下、今からでも逃げた方が良いのではないでしょうか?」

「クベイル、この城を捨て……兵や民衆を見捨ててか。いや、それはできぬ。その選択肢はない!」

 そう言いカルゼアは悲しい表情で俯く。

「そうですね。ですが、このままでは何れここにも……」

 そうカイルディは言い扉の方を向いた。とその時……扉がノックされ開き、クレファスが入ってくる。

 その後ろにレグノスが居たが、扉を閉めこの場を離れようとした。

「レグノス、お前も中に入れ!」

 それを聞きレグノスは、執務室の中に入ってくる。

 クレファスとレグノスは、カルゼアとクベイルとカイルディのそばまでくると一礼をした。

「クレファス、仰せにより……ただ今まかり越しました」

「私までとは、どういう事でしょうか?」

「レグノス、お前にも……これから話すことを聞いて判断を仰ぎたいのだ」

 そうカルゼアが言うとレグノスは頷く。

「承知いたしました」

 それを確認するとカイルディは話し始める。

「まずはクレファス。貴方には、聖女であるキヨミ様を追って頂きたいのですが」

「ま、待ってください! この状況下で、五番隊の指揮は誰がやるというのですか?」

「誰も就けるつもりはない。五番隊は捨てる!」

 カルゼアが発した言葉に対しクレファスは、怒りを露わにした。

「捨てる……五番隊を……。これが、陛下の考えだとしても……申し訳ありませんが聞くことはできませんっ!!」

 そう言い放つとクレファスは、扉の方を向き歩き出そうとする。だがレグノスに腕を掴まれ、静止させられた。

「待てクレファス、話を最後まで聞いてからにしろ!? 何か訳があるのかもしれない」

「訳? あるだろうな。どんな理由があったとしても、五番隊を見捨てる選択肢はない!」

 そう言いレグノスの手を払い除ける。

「待ちなさい。クレファス、現状で……五番隊に勝算はあるのですか?」

「そ、それは……まだ分かりません。ですので、早く持ち場に……」

「あれが厄災であれば、無理でしょう。勝ち目はありません。それならば、ここを撤退した方が良いのでしょうが」

 そう言いカイルディはカルゼアの方を向いた。

「撤退はしない。するのであれば、皆を連れてだ!」

「陛下までこの調子では、ハァー……」

 クベイルはそう言い溜息をつく。

「話が、まだまとまっていないのですか?」

「クレファス、そういう事だ。さて、どうしたら良いのか……」

 そう言いカルゼアは頭を抱える。

 そしてその後も話は続き、中々まとまらなかったのだった。