私の目の前で厄災の魔法陣が展開されていく。そして、次々と黒い何かが魔法陣から現れる。

 その一部は、デビルミストだ。その他の黒い何かは、様々なものへと姿を変化させていった。

 広場の人々は、それをみて慌てて逃げる。

 私はどうしていいか分からず、ただその光景をみていることしかできない。……涙が出て止まらなくなる。私は涙を手で拭った。

「クソッ、間に合わなかった。だが、なんとかして厄災を駆除しなきゃならない」

 そう言いグレイは、目の前の厄災を睨んでいる。その厄災は、動く植物みたいだ。


 これって、デビルミストよりも倒しやすいんじゃないのかな?


 そう私は思った。

「ねぇ、グレイ。目の前の厄災って、倒せないかな?」

「植物みたいなヤツか? 確かに倒せそうだが……みてると種のような物を飛ばしている」

「そうだね。もしかしてだけど、あの種……生物に寄生するんじゃないかな」

 それを聞いたグレイの顔は青ざめる。

「もしそうなら、あの植物もどきを倒さねえと……」

「でも、どうやって倒すの?」

「そうだなぁ……。今のところ、俺たちの方に向かってくる気配がない。それも不思議だ」

 グレイは悩み始めた。

「それは、簡単なことです」

 そう言いムドルさんは、私たちの方に近づいてくる。そのあとからベルべスクがきた。

「どういう事だ?」

「厄災の寄生するタイプは、最も肉体や精神が弱い者と、最も心が汚れている者などに寄生するからです」

「なるほどな。そこから枝分かれしていくって訳か」

 それを聞きムドルさんは頷く。

「ですが、何れ私たちの方にも……」

「そうだな。でも、それが分かったところで……厄災とどう戦う? それに数も多い」

「ルイさんがいます。能力を使い、どう対処すればいいか指示してもらえば……可能かと」

 そうムドルさんが言うと、グレイは難しい表情を浮かべる。

「……それしかないのか。できれば、ルイにはこれ以上ここに居て欲しくなかったんだが」

「そうですね。私も同じ気持ちです。ですが……この状況では、ルイさんの能力に頼るしかない」

「え、えっと……。私なら大丈夫だよ。それに自分の能力で、なんとかなるなら……やってみたい」

 そう言うとグレイとムドルさんは、つらそうな表情で私をみた。

「やるしかないか。そうなると……場所を変えた方がいいな」

「そうですね。ですが……安全と言える場所が、ここにあるとは思えません」

「建物の中はどうなんだ? 厄災は容易に入って来れないと思うぞ」

 そうベルべスクが言うとグレイは、何かを納得したかのように頷く。

「ってことは、密封状態ならデビルミストも入ってこれないってことだな」

「ああ、そういう事だ」

「ベルべスクの言う通りであれば、私たちが倒したデビルミストは……」

 そう言うとムドルさんは、ベルべスクをジト目でみる。

「ああ、あれは魔法陣を予め仕掛けて置いた。……両方ともな」

「なるほど……そういう事か。まあいい、今はそのことを問い詰めてる場合じゃない」

「ええ、では……そこの小屋などどうでしょうか?」

 それを聞き私とグレイとベルべスクは、近くの小屋の方を向いた。

「時間もない、そこにする!」

 グレイはそう言いその小屋へと向かい歩き出す。

 そして私は、ムドルさんとベルべスクと一緒に、グレイのあとを追った。