ここはアクロマスグのティハイドの屋敷。周囲には、様々な店や商業施設が並んでいた。勿論、住宅街もある。

 このアクロマスグは一応、町なのだが畑が多く農村地帯だ。

 だが畑でとれる作物だけではなく、錬金術にも力を入れている。そのため特殊な製品などが店に並んでいた。それを求めて各国の商人がこの町に訪れ賑わう。


 そして、ここティハイドの屋敷の近くに建てられている教会のような建物内。その奥の広い部屋の中には、ティハイドがいる。

 ティハイドは祭壇の上に置いてある四角の箱をみていた。四角い箱の置かれている祭壇には、血で描かれた魔法陣が描かれている。

「いよいよだ。時刻になればあの箱が開き魔法陣が展開される。そうなれば、バールドア城からタルキニアの町の範囲で厄災が解き放たれ壊滅……」

 そう言いティハイドは「ハハハハハ……」と笑った。それは室内中に響き渡る。

「ティハイド様、あと少しでこの国が手に入るのですね」

 黒っぽい銀色で長い髪の男性がそう言いながら、出入口からティハイドの方へ向かってきた。

 この男性は、ティハイドの優秀な配下の者で、カロム・キョセルである。

「カロムか。留守中、何もなかっただろうな」

「はい、民衆はいつも通り穏やかに過ごしております」

「そうか、それならいい。このことに関しては、知らない方がいいからな」

 それを聞きカロムは頷いた。

「そうですね。ですが、ここまで手の込んだ魔法陣を組むのは……流石に困難でした」

「すまなかった。お前にしか、これを頼める者がいなかったからな」

「そうでしょうか。私よりもフウルリスクの方が、技術は上のはず」

 そう言われティハイドは、首を横に振る。

「あれは、駄目だ。確かに魔法に関しては、知識や技術ともにかなりのものだろう。だからこそ裏の仕事に適している。いざという時の判断も、言わずともできるだろうからな」

「確かにそうですね。そういえば、フウルリスクの姿がみえません」

「恐らく、どこかに転移したのだろう。そのうち、ぶらりと帰ってくる」

 ティハイドはそう言い溜息をついた。

「そういえば、以前も何度かそのようなことがありましたね」

「そういう事だ。あれのことを心配するだけ疲れる。それよりも今は、この計画を成功させなければならない」

「はい、楽しみです。ティハイド様がこの国を支配し王となられ……その後のことも」

 そう言うとカロムは、ニヤリと笑みを浮かべる。

「まあ、これが成功せねばそれも叶わぬのだがな」

「そうですね。それでは、定位置に着き待機したいと思います」

 カロムはティハイドに一礼をすると祭壇の南側で待機した。

 それを確認するとティハイドは祭壇をみつめる。