ここはバールドア城のティハイドが居る部屋。だが既にシュウゼルの配下の者により、自分の領土であるアクロマスグの屋敷に転移しここには居ない。

 ここに居るのは、間の抜けたような顔をしているカイルディだけだ。

「これは、どうしたことでしょう? なぜティハイド様がおられないのか……。部屋の外には、二人の兵士に見張らせていました」

 そう言いながら窓際に向かう。

「変ですね。窓から外に抜け出した訳でもありません。それに……」

 カイルディは悩んだ。

(……もしなんらかの方法で、気づかれずに抜け出したとして……なんのために? 考えていても分かりません。これは至急、陛下に御伝えしなければいけませんね)

 そう考えがまとまるとこの場を離れ大臣クベイルのもとへ向かった。



 ――場所は変わり、タルキニアの町の市場街にある空き家――


 あれから私たちは、これからどう行動するか話し合っている。

「そうだな……やっぱり、急いで城に向かった方がいいだろう」

「そうですね。ただ、どこに厄災の魔法陣が仕掛けられているか分かりません」

「確かにな。でも、ここで考えていても仕方ない」

 それを聞き私は、もしかしたら自分の能力でどうにかなるんじゃないかと思った。

「ねぇ、私の能力でどうにかならないかな?」

「その手もあるな。だが、大丈夫か?」

「大丈夫か分からない。だけどやらないよりも、いいんじゃないのかなって思うんだよね」

 そう私が言うとグレイとムドルさんとメーメルとコルザは頷く。ベルべスクは首を傾げている。

「そうだな……そうするしかないか」

 そう言うもグレイの表情は、なぜか暗く俯いていた。

「そうですね。できればルイさんには、ここに残って頂きたかったのですが……その方法しかありませんし」

「そうじゃな。それで、妾も行ってよいのかのう?」

「メーメルは、あとから来てくれ。コルザ様とそこに転がってる男を、ドルバドスさんに引き渡してからな」

 そうグレイが言うとメーメルは、コクリと頷く。

「ムドル、ベルべスクはどうする?」

「私が監視します。嫌ですが、放っておく訳にもいけませんし」

「ムドル、その嫌そうな顔はなんだ。別にいいんだぞ、オレはお前とじゃなくてもな!!」

 そう言うとムドルさんは、ムッとしベルべスクの胸倉を掴んだ。

「別に私も……お前を、ここで殺してもいいのですよ」

 そう言われベルべスクは、ブンブンと首を横に何度も振った。

「ヒッ! いい、お前と一緒で……」

 それを聞きムドルさんは、ベルべスクのことを解放する。

「じゃあ、これでいいな」

 そうグレイが言うと私とムドルさんとメーメルは頷いた。ベルべスクは頷くも明らかに不貞腐れている。

 そして私たちはその後、行動に移したのだった。