フウルリスクは、どうやってここから撤退するのかを説明し始めた。

「ボクの持つ転移のペンダントで、ここから別の場所に移動します」

 そう言いながら首に下げているペンダントを清美とサクリスにみせる。

「そういうアイテムがあるってのは知っていた。だが、実物をみるのは初めてだ」

「これで別の場所に移動できる。本当にそんなことが可能なの?」

「ええ、勿論です。そろそろこの場を離れましょう。他の者にみつかっては厄介ですから」

 フウルリスクは周囲を警戒しながらそう言った。

「そうだな。転移場所は決めてるのか?」

「決めていますよ。ここよりかなり遠い国になりますがね」

「そうなると、泪に会うことができなくなる。やっぱり、私……」

 そう言い清美はつらそうな表情で下を向く。

「そこまで貴女に想われる、そのルイという人が羨ましい。どんな男性なのでしょう」

「ううん、泪は女性だよ。私と一緒に、この世界に召喚されて来たの」

「ホッ! そうなのですね……という事は、巻き込まれてこの世界にですか。なるほど、一度会ってみたい。ですが残念ながら、今は無理です」

 フウルリスクはガッカリする。

「その通りだ。それにルイのそばには副隊長が居るから大丈夫だと思う。あの人を怒らすと怖いけど、強いし判断力に決断力もある。だから、もし何かあればなんとかしてくれるはず」

「そうなんだね。信じるしかないのかぁ……心配だけど、決断するしかない」

 そう言うと清美は、不安な表情を浮かべ遠くに視線を向けた。

(泪、ごめん。心配だけど……大丈夫だよね。私にどうにかできる力があれば……)

 そう思うも清美は、こんなことを考えていたら駄目だと思い気持ちを切り替える。そして、キリッとした表情へと変化した。

「……そうだね、行こう」

 そう清美が言うとフウルリスクとサクリスは頷く。

「では、急ぎましょう」

 そう言いながらフウルリスクは、二人に自分の腕にしがみつくように伝える。

 サクリスは明らかに嫌そうな表情で左腕にしがみついた。

 片や清美は、ドキドキしながら右腕にしがみつき顔を赤らめている。

 それを確認するとフウルリスクは左手をペンダントに添え魔力を注いだ。するとペンダントが発光する。

 《我が思う場所に転移されたし!!》

 そう言い放つ。

 それと同時にフウルリスクは、聖女と勇者の発祥の地である大陸、緑の大地と言われている【カリスワイブ】の遥か南東側にあるファルトス草原を脳裏に思い浮かべた。

 それを感知しペンダントが光を放ち魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣は三人の真下に移動し大きくなった。それと同時に魔法陣から光が真上に放たれる。

 そして清美とフウルリスクとサクリスの姿は、その場から残像と共に消えた。