1、チョコレートが溶けるように時間が溶けた。
~秋からクリスマスに向けて、季節が進む中の世界での話~
●君と初雪
受験を理由に
君と図書館で
過ごすようになった。
あと数ヶ月で
制服姿の君も見納めになる。
勉強を終え、
外に出ると
暗くなっていた。
息が白くて
色々憂鬱になった。
「もうすぐ雪が降るね」
君はそう言った。
「雪は好き?」
「うん。明るくなるから好き」
そう言う君は最高に無垢だった。
●明日はコート
「明日、雪、降るんだって」
白い息を吐きながら
そう言う君の表情は
ワクワクしていた
明日、
君がどんなコートを
着てくるのか
少しだけ気になった
何年か前、
別の人と見た初雪は
チョコレートが溶けるように
あっけない降り方だった
あの時、
傷つけた言葉を
思い出して少し嫌になった
●チョコレートが溶けるように時間が溶けた。
誰もいないホームで
君と電車を待っている。
髪を乱すくらい
秋風がたまに吹いた。
ラズベリーを摘むくらいの
優しさが欲しくて
君の手をそっと繋いだ。
君は驚いていたけど
手を繋いだままでいた。
チョコレートが
溶けるように時間が溶けた。
遠くに電車が見えてきた。
電車に軽く嫉妬した。
●いつから口癖になったんだろう。
公園のベンチに座り
煙草を吹かし、
高い空をぼんやり眺めている。
忙しくしている間に
季節は巡り去り、
微温かった風が
冷たくなっていた。
別に今をこなすだけで
十分だけど、
欲を言えば、
もう少しゆっくりしたい。
吸いきってしまった。
めんどくさい。
いつから口癖になったんだろう。
●11月が始まった。
あと2ヶ月で今年が終わる。
11月が現実を歪める。
別に未練はない。
一年が終わることを
受け入れるのは
お気に入りのパンプスが壊れ、
新調するくらい
胸を締め付けることだと思う。
馴染ませるために
少し、我慢して
自分のものにしていくのと一緒だ。
地道に歩く
その作業が面倒なだけだ。
●瞬間的にタイムスリップする。
昔、好きだった歌が
テレビから流れている。
あの時を
思い出すと
妙に胸がきゅっとなって
あの時の
迷いが再現される。
別々になったのは
お互いに傷だらけなのを
知ろうとしなかったからだ。
別にリンクしないけど
あの時、
繋いだ手の感触を
思い出した。
あなたは今、
何してるんだろう。
●あの約束はもう無効なのは、わかっていたはずなのに。
あの時、
制服で交わした約束は
今、振り返ると
淡かった。
すでに無効の約束を
思い出したのは
昨日の君からの
メッセージだった。
結局、飲みに行くことになった。
だから、今、
待ち合わせ場所にいる。
妙に緊張するのはどうしてだろう。
君に呼ばれた。
その声であの時に戻った気がした。
●君を迎えにいくよ。
魔女修行をしている
君を迎えに行く。
カーキのアウターでは心持たない。
枯れ葉で敷き詰められ
鬱蒼とした黄色い森の中へ
ゆっくり入っていく。
もうすぐ雪が降りそうな
匂いが混じっている。
その匂いが記憶を刺激して
苦い断片を思い出す。
小屋に着いた時、
君はどんな表情するだろう。
●アメリカンコーヒー
コーヒーの分量を間違えて
アメリカンになったコーヒーを
白湯代わりに飲んでいる。
夢の続きを見るより、
昨日、読んだ
本の続きのほうが気になって、
本を開こうとした。
そのとき、
電話が鳴り、
仕方なく出ると
急な用事を告げられた。
急に一日が始まり、
慌てて身支度をすることにした。
●雨で冷えた世界で。
イチョウ並木は
夜が明けるたびに
散っていく。
今朝の雨で一層冷え、
厚手のニットカーディガンでも
少し寒さが身に刺さる。
濡れたイチョウは
白い朝日で反射して
爽やかさが冷たかった。
待ち合わせまで余裕がある。
だから、
ゆっくり歩いて
大したことない約束を
すっぽかしたくなった。
●サイバーパンクの中で
雨の繁華街を
窓越しから眺めている。
夜のカフェで、
黙々と今日のことを
手帳に書いている。
濡れた繁華街は
近未来みたいな色を放っている。
白く反射する
ビニール傘を持つ
無数の人達が、
今日もどこかに歩いている。
今日も手帳に
寂しい行動記録を
書きなぐったら
少しすっきりした。
●夢のなかで君は。
今朝、見た夢で
君のことを思い出した。
二人乗りの自転車で
坂を下ったこと。
午後の秋色した公園で
無限に話したこと。
日が早く沈んだ路地で
右手を君の左手に結んだこと。
いつの間にすれ違った。
忘れていたんだ。
君を想っていたこと。
今、
どこかですれ違っても
きっとわからない。
●ネタが懐かしいよ。
ポッキーの日なのを
思い出して、
ポッキーを買った。
wikiで調べたら、
芯のプリッツは
プレッツェルを意識したらしい。
スマホで
そんなこと調べて
朝からニヤニヤしている。
君にポッキーを渡したい。
君に渡すとき、
「あなたも私もポッキー」って
言ってやろうと思った。
●山手線は憂鬱を浄化するように周る。
山手線は毎日、
新宿、渋谷を何十周もする。
ガード下を通る国道は
今日も忙しく、
いつもうるさく、
見渡す限り人ばかりだ。
何も考えなしの
無垢な言葉に
いちいち傷つく。
自分の頭ン中は
今日も忙しく、
いつもうるさく、
誰にも気づかれずに傷つく。
いつになったら
楽になるんだろう。
●君のショートボブが列車で揺れる。
君しかいない
踏切で黙って、
列車が通過するのを
待っていた。
踏切の先には
シャッターが閉まった
商店街が待っている。
歩く人も車もまばらだ。
君の切りたての
ショートボブが
風で揺れている。
列車が通過して
遮断器が上がった。
「行くよ」
君がそう言ったから、
僕は君の手を繋いだ。
●今年のブラックフライデーに買いたいものなんてない。
昨日まで光ってなかった
街路樹のイルミネーションが
青白く光はじめ、
もう今年が終わることを
噛み締めて、
カメラに収める。
すぐに
なにも考えずに
あなたに共有した。
ブラックフライデーに
買いたい物なんてないけど、
あなたと過ごす時間が
少しでもほしい。
次はいつ会えるんだろう。
●丁寧にワッフルをナイフで切りたい。
黄色い並木の下を歩く。
Bluetoothイヤホンで
流れている曲が
妙に秋色の風景と
朝の冷たさとリンクする。
こんな朝だから、
コーヒー飲んで
カフェの窓から
多くの忙しい人たちを眺め、
ぼんやりしたい。
こんな気持ちをいつか、
焼き立てのワッフルを
ナイフで切るように
丁寧に扱いたい。
●カフェへ向かう。
冬手前の公園は
ちょっとだけ寂しい。
さっき乗った
2つのブランコが
弱く揺れ続けている。
落ち葉に未来はないけど
そんなことに
感傷している暇はない。
夢のように2人で
ブランコが止まるのを見届けた。
君が手を差し出したとき、
冷たい風が通り抜けた。
寒いからカフェに行くことにした。
●寂しくて最高の季節がもうすぐ終わる。
通り雨が上がった
秋の夕暮れは
少し切ない。
畑はとっくに
今シーズンの役目を終え、
黄金色の枯れ草だけが
残されている。
君のことを思い出すと、
不意に涙が溢れてくるのは
何故なんだろうね。
濡れた道路が
黒く一直線に伸びている。
君の理想に近づきたかった。
もうすぐ秋が終わる。
●黄色の世界で。
黄色く降り積もった
落ち葉が朝露で
弱く湿っている。
なんでか
わからないけど、
あのベンチに座って
別れ話をした。
それは昨日のことで
まだ夢の続きみたいだ。
そのベンチも露で濡れて
深くなった茶色で
木目も深く渋くなっていた。
秋が終わる前に
気持ちも新しくできるかな。
●そのほうが長く君と会えるね。滅んでも仲良くやろう。
一日が終わった。
間接照明で暖かい色の部屋で
チューハイ片手に
安い酔いで頭がぐらつく。
Youtube観て、
ゲラゲラ笑ってるだけだ。
君からの返信は
もう今日はないだろう。
すれ違うのも
慣れてしまった。
途切れた会話が気になる。
もし、今、
世界が滅んでも
天国で再会すればいい。
●諦めたい。
秋を終わらせる
強い風が痛い。
今日も終わった。
諦めてナイーブに
なっちゃえば、
どうにか
なるかもしれない。
過ぎ去った
言葉の多くは
気づかないうちに
内側をズタズタにした。
毎日、
コーヒーを飲んで、
タフなフリするけど、
一向に癒えない。
そろそろ、マフラーが恋しくなった。
●手は冷たい。
雨を雪に変えて
雪を見てはしゃぐ
君を見たい。
雨上がりの深夜。
コンビニの明かりを頼りに
駅から歩いている。
冷えた中で手を繋ぐ。
そして、意味もなく走りだす。
君は驚いていたけど
ついて来た。
君の手は冷たく
そして、細かった。
一瞬を永遠に変えて
手を繋いだまま
君と巡りたい。
●巡る気持ち。
巡り去る季節に
さよならを言い忘れた。
傘を持っていないのに
強い雨が降ってきた。
ため息を吐くと
息が白く、
余計、気落ちした。
叶わない夢とか
失ったこととか
そういうことが
こういうときに限って
たくさん出てくる。
こうして置き去りにされる。
雨が冷たくて
泣きたくなった。
●あと5分。
「明日なんか来なくていいのに」
君はぽつりとそう言った
酔った君は一瞬
少女のように
あどけなく見えた
スクリュードライバーの
オレンジが何故か
最高に似合うんだよ
屈託ない
その笑みが
過去を忘れたい証拠だ
時計を見ると
あと5分で明日になりそうだ
そんなこと
忘れて
もう少し飲もう
●前向き。
凛と空気が街を支配している。
駅前の交差点は
今日もどこかのビルへ向かう
人達が信号を待っている。
いつまで悩んでも
どうしようもないこともある。
フラれた朝だって
それは一緒だ。
時間はなぜ平等なんだろう?
前しか向かない思いが、
チョコレートのように
冷たく、固くなってほしい。
●クリスマスの思い出
クリスマス色のイルミが
あまりにもきれいだから
雰囲気に飲み込まれそうになる。
肩くっつけて
自撮りしたら
最高に青い写真ができた。
撮ったあと、
しばらくあなたと
そのままでいたかった。
だけど、そうしなかった。
このまま、
魔法にかかったように
あなたと奇跡を
一緒に共有したい。
●帰り道
冬の夕方は短くて
すぐに暗くなるから
代わりに楽しいことして
明るく過ごそう。
君と歩くことの幸せと
反比例するように
強い風に冷たくされる。
憂鬱な年末の繁忙を
吹き飛ばすくらい
今、君と面白いことがしたい。
とりあえず、
帰ったら2人で
ゲラゲラ笑いながら、
ボードゲームしよう。
●話したい。
君から着信があった。
並木が電球色をまとい
駅前がクリスマスになっていた。
君に発信したけど、
出てくれなかった。
ため息をつくと白かった。
iPhoneで並木を写した。
すれ違いが寂しくて、
デジャブを感じた。
帰ったら、
君と通話しながら、
チーズとワインで
少し酔いたくなった。
●痛み。
仰向けになり、
額に右手を当て
天井をぼんやりと眺める。
不意にグラスを
落として割るように
突然の別れは何も感じない。
過ぎ去ったことは
空中に漂ったままだ。
なにか欲しいかと言われたら
去年のクリスマスと答えたい。
優しくない
今までの自分に
嫌気がさし
涙を堪えられなくなった。
●ボーイフレンド
アイロンで
明日、着ていく
スカートのシワを取った。
ココアを飲んで、
一息つきましょう。
頭の中を空にして。
今週も、生きるために
どれだけ嘘をついたのだろう。
だから、明日は
あなたに今週の疲れを
ねぎらう言葉をかけてほしい。
だから、明日は
プラトニックな恋がしたい。
●初雪
夜更け過ぎに
ファミレスに居るのは
君の所為だ。
話が尽きないのは
それ相応の悩みがあるからで
それが何故か惹かれる。
君は時折、
唇を尖らせ、
棘のある言葉で
思ったことを躊躇なく言う。
ショートボブも相まって、
それが可愛らしい。
窓越しに国道を見ると
綿のように雪が降っていた。
●マフラー
制服にマフラーを巻いている
君は最高に細くて、
寒そうだった。
君の凍えた手を
暖められるのは俺だけさ。
ポケットの中で
手を繋いで、
駅まで歩こう。
制服のまま
街に繰り出して、
パフェでも食べながら
昨日出た新曲の話でもしよう。
とにかく君と話がしたい。
ただ、それだけで十分さ。
●一日のおわり。
マグカップのココアを
右手に持つスプーンでかき回し、
iPhoneを左手でスワイプして
インスタをぼんやり眺める。
おもちゃ箱を
ひっくり返すように
今日の嫌だったことを
この時間だけ忘れたい。
あらゆる情報が
手元を通り過ぎる。
ココアを一口飲んだら
世界のすべてが
ほっとした気がした。
●肝心なこと
昔聴いた曲が
思い出せず、
検索を諦めて
iPhoneをベッドに放り投げた
いつも肝心なことを
思い出すことが出来ない
あなたが気遣ってくれた
言葉とか、
表情とか、
仕草とか、
そういうのが
情報の海に飲まれて、
甘い情景しか残っていない
何かを失くしたような
痛みが胸にじんわりと残った
●雨の土曜日
最高に気分が良いのは
3杯目のラムコークのおかげだ
潤った君の瞳を
見つめるだけで飽きない
外では相変わらず、
雨が降っているけど
飲み終わる頃には
止むと信じ切っている
「好きになった。付き合って」
「いいよ。これが飲み終わったらね」
君はモスコミュールを
一口飲んだあとそう言った
●恋人未満
夜は始まったばかりで
人々は傘を持ち
足早に誰かのところへ
帰ろうとしている。
親しい人がいないこの街で
こうして
一人ぼっちでいると
あなたのことを思い出す。
昔、2人でよく話した
カフェとか、
あなたの少し伸びた
セーターの袖とか。
今更だけど、
あなたが好きだったことに気づいた。
●君待ち
誰もいない教室で
窓側の机の上に座り
外を眺めている。
綿のような雪が
グランドを白くしていた。
補講を受けている間、
待っててくれという
君の身勝手でダサい
お願いを聞いてしまった。
雪雲が風で激しく動き、
雲の切れ間から、
夕日が教室に差し込んだ。
そのとき、
扉が開く音がした。
●思考回路
いいことが
思いつかなくて
好きな曲をループして
今日も夜を過ごすよ
古いMac Bookは
イカれたファンを回して
必死で放熱をしているけど
残念だけど、無意味で
カイロの様に熱くなっている
宇宙の果てなんて
今、この瞬間には
残念ながら存在しない
君のことなら
簡単にいいこと思いつくのに
●ウソつき
ブランケットにくるまって
安いソファに横たわっている。
ただ、時間が過ぎていくのを
間接照明に照らされて
今日も待っている。
さっき、
わかりやすく君に嘘をついた。
一人になりたくなるから、
こうして、
たまに弱い嘘をつく。
今日だけはお願い、
待ってて。
明日は余裕で元気だから。
●ジレンマ
間違いを正す人を
極度に恐れて、
当たり障りないことしか
言わない自分にうんざりする。
コーヒーカップを置き、
弱くため息をついた。
窓の外の駅には、
JRの無数の線路が広がっていて、
今日も電車は多くの人を乗せて
ターミナルを出ていく。
間違いだらけなのは
一体、どっちなんだろう。
●隣りの君
このまま、
君と手を繋いで
一緒に寒さをしのぎたい。
軒先に立つ、
白く光るスノーマンは
今日も幸せそうな
顔をしている。
かじかむから、
連れて行って。
同じバスタブ入って
君とくだらない話をしあいたい。
赤いバスボブ入れて
弾け漂う泡を見ながらゆっくり。
無敵な愛で武装しよう。
●雨のイルミネーション
雨で濡れたアスファルトに
イルミネーションのLEDが
青白く反射して、
いつも見慣れた街が
ファンタジックになっていた。
君に言えなかったこととか、
そういうことを魔法にかけて、
奇跡を起こしたい。
水が合わないなら
諦めてしまえばいいけど、
まだ、君を諦めたくない。
君に会いたい。
●クリスマスディナー
窓の外は
湾岸まで広がるビル街が
白と赤の光を放っている。
レストランに飾られている
クリスマスツリーを眺めて
久々に飲むシャンパンは
何故か酔いやすい。
去年の今頃は
もういいやって
恋を諦めていた。
リボン柄の包装紙みたいに
君はシャイだから
もっと深いところを
知りたいと思った。
●クリスマスマーケット
クリスマスマーケットは
暖かい色している。
クリスマスイブを
君と過ごすのは最高で
まだ緊張するけど、
君の横にいることに
少し慣れてきた。
手を繋いだだけで
舞い上がっちゃってさ。
手袋越しに伝わる温もりは
新鮮で胸がときめく。
気持ち、
落ち着かせるために
ホットチョコ飲もう。
●クリスマスイブ
マライア・キャリーが
館内をクリスマスに染めている。
アトリウムを貫く
大きなクリスマスツリーは
正統派なきらめきを放っていて、
赤や緑に帯びた
電球色にうっとりする。
君と手を繋いだまま、
こうしてツリーを眺めていると
時間が止まったみたいで
このまま何もかも
終わらない気がした。
●瞬間冷却
花びらのように
雪が激しく降り始めた
雪が降り積もった夜
君との帰り道は少し寂しくて
このあと、なにかドラマが
起きることを期待している
だけど、手を繋いで
ただ、歩いて
一緒にいるけど
寂しくて
寒いけど
いつも通り一緒に
君といることが
大切に思える
このままでもいいやって思った
●銀世界
雪で青白く覆われた街は
街灯で一瞬の夢みたいに輝いている
車もまばらな帰り道
雪の所為で今日も暇だった仕事は
今日も無駄に時間だけ流れた
明日もきっとそんなもんだ
電信柱
街路樹
ポスト
すべてが白くなった世界で
例えば、夢みたいに
知らない誰かと
恋をして
駆け抜けて
足跡を残したい
●かまってちゃん
寂しいから、
大胆に置き手紙を残して
わかりやすく失踪して
君に見つけてほしい
あの時の約束は
赤い糸だと信じていた
君といることに
不満はないけど
不足を感じる
街を歩いて
人混みの中で
一人を感じたい
そんな気持ちにさせる
君が嫌いで、
それ以上に自分が嫌いだから
抱きしめてほしい
●あなたが好き
残り日数が少ない
手帳を開き
自分が変わったのを実感する。
恋愛は
すべて知らないから
良いわけで、
あなたを呪うほど
知り尽くしたいけど
重たい恋だなんて
言わせない。
だから、
嘘をつきたくない。
今日も特に用もないのに
連絡してしまった。
仕方ないじゃん。
好きになったんだから。
2、君の悩みを打ち消したい。
●君の悩みを打ち消したい。
どこにも行くあてがなくて、
結局、公園のベンチでうだうだ話して、
乾杯したコーラはすでにほとんど飲み干した。
マフラーだけ巻いている
制服姿の君は美しくて、
終末予言が似合いそうな雰囲気が出ている。
夕日は冷たいオレンジ色をして、
冷たい風でスカートの裾は弱く踊っている。
冬なんて来なければいいのにってふと思った。
果てしないように感じる人生は
無限のように思えて、
実は有限であるってことを実感したんだ。
って君はそう言って、悲しく微笑んだ。
命は儚いね。
っておどけて、
君が言うと説得力があるね。
君を励ます言葉なんて、
簡単には見つからないから、
このまま君の話を聞くよ。
君はきっとこのままでいいんだ。
変われない僕のことを置いて行ってもいいよ。
君だけ前を向けばいいよ。
君が不意に立ち上がって、
「ありがとう」と言った。
君の頬が光っていることに
今更、気づいて、
少しだけ情けなくなった。
●秋は深まるけれど、変われない。
スタバのカウンター越しに見る街は灰色で
今朝も秋雨が降っている。
MacBookで昨日残した仕事を進めるけど、
終わる気配がなくて、
つじつま合わせで楽しく思えない。
電球色の非日常な暖かさの中で
コーヒーを飲むと寂しさは紛れる訳ではなく、
君と過ごした夏は、
すでに幻で、
思い出すと胸が締め付けられる。
ソーダ水の中で息を止めるように
虚しさで息苦しくなる。
冷やした愛はバニラには合わなくて、
そんなことを繰り返しているうちに
ガラス越しに君を見るようになった。
弱くなる呼吸が切なくて、
管で繋がれた腕をそっと掴みたかった。
君の微笑みが熱い涙で見えなくなるうちに
季節は深まり、
受け入れられない自分だけ置き去りにされた。
MacBookの画面が滲んで見えない。
コーヒー飲んでも落ち着かないよ。
ねえ。
君はいない現実をどう受け入れたらいい?
●冬色の君に会いにいく。
冬が最高に似合う君に会いにいくために
今、駅で列車を待っている。
口の中に含んだレモンのキャンディは
ゆっくりと香りを残して溶けていく。
空の青は秋色のままだけど、
時折強く吹く風は冷たくて、
冬の匂いがした。
夏に過ごした君との日々は特別になって、
暑い中、木陰の下で君との会話は無限に続いた。
もっと、強く君のことを印象づけるために
これから君に会いにいくよ。
電波の中だけじゃ寂しさは癒えないし、
もっと近くに居たいと素直に思った。
伝えたいことはたくさんあるけど、
きっとその熱は平面の世界じゃ通じない。
離れ離れの君に会って、
また、離れることを考えると、
今から憂鬱だけど、
きっと、すれ違わずに
上手くやれるはずだ。
これからも。
●君の返信を待つ真夜中は冷たくて退屈。
君の返事を待っている真夜中。
間接照明をつけたまま、
ソファの上でブランケットをまとって、
退屈な時間を過ごしている。
さっき入れたココアはもう簡単に冷めちゃって、
それだけ君の返信が遅いんだよって責めたい。
Spotifyを聴きすぎたiPhoneは少しだけ熱を持っていて、
バッテリーセーバーしたいんだけどって、
無機質だけど親切なメッセージが出て、
それを無視して、
手に握りしめて、
お気に入りの曲をじっと聴くよ。
今日も眠れなさそうだよ。
今日も寒気が列島を覆ったから、
手が冷たくなるし、
ブランケットをぎゅっと握っても、
あまり暖まらないし、
エアコンの暖房の効きはイマイチだし、
まだ、君からの返事が来ないから、
すべてが嫌になっちゃいそうだよ。
ソファから起き上がり、
ココアが入ったマグカップに手を伸ばした瞬間、
iPhoneがバイブレーションした。
●雪乞い少女。始まりの予感はいつも雨。
冬の雨は冷たいのは当たり前だから、
真夜中にこっそり逃げ出したくなる。
世界の全てが嫌いだから、
誰かとこっそり内緒を作りたい。
生きているだけで罪だって、
たまに重荷を自分で背負ってしまって、
気に入らない現実を投げ出したくなっちゃう。
雪の美しさを否定して、
鬱陶しさを全面に出してしまうように
始まりの予感を感じ取ることなんてできなかった。
そうして、今年も全てを投げ出してしまった。
SNSを全てリセットしちゃって、
存在全てを消し去って、
大っ嫌いな自分をネットから消すよ。
だけど、実体の自分は消えなくて、
消したい気持ちは消えなくて、
逃げてもいいよって言ってくれる人もいなくて、
家にいたら頭が爆発しちゃいそうだから、
雨なのに外に出たんだよ。
息は白くて、
辛い気持ちは変わらなくて、
ビニール傘で自分の世界を作るけど、
凍える寒さは変わらなくて、
寒冷前線なんて消えてしまえばいいのに。
冷たい街は嘘でできているみたいに思えて、
裏切りと社会的地位は比例しているように見えて、
誰かがバカにしているような気がするように思えて、
大好きだった幼少時代に戻りたいけど、
砂場に忘れた赤いスコップのように
いつかは錆びて、
回収されて、
廃品にされて、
絶望とダンスすることに慣れてしまって、
もう、元には戻れない。
消したい気持ちは消えないけど、
新しい自分は作れるかもしれないって、
決意、空から降ってくるように、
これから雪乞いをしてやる。
明日、
雪乞いの所為で電車止まっても
きっと、気持ちは晴れないから、
少しくらい、駅の中のカフェで、
困ってる人たちのことを見ていてもいいよね。
●雪の日になると、君を思い出す。
すれ違いは大きな溝になり、
季節はどんどん僕を置いて巡っていく。
雪で白くなった夜をゆっくりと歩いているけど、
気持ちはあんまり晴れないのはなぜだろう。
君と僕とが離れ離れになってしまったのは、
仕方ないことだけど、
もし、君がそばに居てくれたら、
きっと、違う人生になっていたんだろうなってふと思うよ。
あのときの約束も全ては溶けてしまった。
君が吸う1ミリのラークに火をつけたいと思う時もあるけど、
もうあの時のように簡単に君のラークを灯すことはもうないよ。
君とのやりとりはいつの間にか自然消滅していて、
君の名残はLINEトーク履歴だけだよ。
たまに君とのトークを開くと、
もう、何年も時間が経ってしまったんだとふと思うんだ。
きっと、君は傷ついたし、
きっと、君はもう癒えたはずだ。
だけど、もう仕方なかったんだ。
言い訳する自分は嫌いになったけど、
もう、全ては終わったことだ。
君と何気ない日常を過ごしていたら、
今頃、どうなっていたんだろうって思ってたら、
また、不安定に無数の雪が目の前を白くし始めた。
●引き返せない夏と、ポストに合鍵を入れる行為は似ている。
後戻りしない時間は、
嘘により侵食されてしまい、
もう、お互いに信じることはできなくなってしまったね。
君と一緒にいると疲れて果ててしまう日が来るとは思わなかったよ。
初めて、君が私の名前を呼んだ日のことを、
きっと、もう君は覚えていないだろうけど、
私はしっかりと覚えているよ。
甘さや夢は、すべて君との関係を継続するために、
君が思い描くような私を作った。
だけど、君はそれを当たり前だと思っていたし、
無理しすぎた私の心が傷んだことは、
結局、自己責任で片付けられてしまったね。
一緒に住んだアパートは夏の日差しが差し込み、
輝きながら宙を舞うホコリは夢の欠片みたいだね。
君と離れる決意をして、
2年暮らしたこの部屋を出ることになった今日も、
君は私を置いて、早々とどこかへ行ってしまった。
片付けた部屋や、
せっかくの貯金が引っ越しで飛ぶことや、
次の恋はどうすればいいんだろうってことや、
すべて、嫌になってしまう。
新しい生活のために、
君に言われたとおり、封筒に合鍵を入れ、
それをドアについているポストに投げ込んでしまうと、
もう、この部屋に二度と戻らない実感が湧いた。
だから、私は残りの夏を自分のために楽しむ決意をした。
●秋色ロマンス
二度と会えない意味を知るために
二人で手を繋いで、
落ち葉の上を歩いているわけじゃない。
死に向かって生きているのは
当たり前の事実で、
いつか大人になることも
気の合う誰かと戯れ合うことも
全ては幻想でしかないことは
きっと生まれた瞬間からわかっていたはずだ。
そんなことより、
今を記憶に留めるために
君と一緒に自撮りしたい。
枯葉のブラウンや、ワインレッドと一緒に
君のカーキと黄色の日差しを
そして、肩寄せ合っているところを
画素に落とし込みたい。
この一枚の瞬間が、
走馬灯を見るときに
再生されるように。
これからもたくさん、
二人のストーリーを作ろう。
●初雪が解けたから、君のこともっと知りたい。
午後の日差しで初雪が解けた公園を
君と手を繋いで歩いている。
落ち葉や枯れ草、
葉が落ち切った木々が
濡れてオレンジ色に輝いていて、
君の手の暖かさを確かめないと、
切なさで胸がいっぱいになりそうだよ。
この世界をデータ化したいけど、
充電したはずのiPhoneは
もう低電力モードになっていて、
おうちに帰ることができなくなるから、
我慢するよ。
もし、君がいなくなっても
きっと、今の関係なら、
まだ、悲しまないと思う。
だから、もっと関係を深めたいし、
君を知る努力をしたいんだ。
だけどね。
君のこんな横にいるのに
油膜のように触れられないように
感じるのはなんでだろう。
君の笑顔はいつも青いガラス細工のように
綺麗に透き通っているし、
言っていることや、
仕草は全て、優しいことはわかるよ。
だけどね。
もっと、知りたいの。
優しくないところも、
汚れているところも、
愚かなところも。
ねえ。
もっと、心を曝け出していいよ。
全て受け入れる覚悟はできているから。
●切ない痛みイルミネート症候群
イルミネーションでカラフルになった街で
星の欠片を待っている気持ちになるのは、
新しいことをやり始めて、
もうすぐ半年だからかもしれないね。
センチメンタルになるのは、
まだ、心の何処かで君との思い出が、
うずいているからで、
もう二度と会うこともない君の印象が強すぎるよ。
夢のような日々に、
追われるように暮らしているけど、
心が満足しないのは
わがままだからかな。
誰もいないホームで二人きりで、
君と話したことを思い出すと、
もうあのときの気持ちは失われているんだなって、
少し切なくなる。
きっと、昔住んでいた街は、
もう雪が降り積もっていて、
君はその街で
きっと君なりの生活をしているのだろうね。
もし、君もあのときのことを思い出して、
少しだけ青い気持ちに今でもなってくれたら、
少しだけ胸はときめくだろうけど、
君とのコンタクトを失った今、
失った時間を取り戻すことなんてできないし、
もうすでに色々、遅いんだよ。
きっと、君とあの日、
夜空を高速で通過する
UFOを見たときに
何かが決定的に変わってしまったんだ。
気持ちや淡い夢や、
そう言った些細なズレに気づいてしまったんだ。
君は大好きだったけど、
君とは見ているものや
感じていること、
考えていることが違ったんだ。
寒い海のテトラポットに寝そべっていてた
アザラシを一緒に見たときのように
落ち着く気持ちや
不思議な気持ちを
もっと、君と混ぜればよかった。
だけど、もうすべては遅いよ。
だから、今の暮らしを続けるし、
イルミネーションの街を
ゆっくり歩いて少しだけ気持ちを休めるよ。
●哀しいエンジンは今日も暴走する。
つまらないよ。
あなたの夢をいつも見れないなんて。
寂しいから、
散った桜の中で私はあなたのことを思うよ。
なくなったから、
時間はもうひっくり返すことはできない。
当たり前だから、
悲しさを過去のラブストーリーで濁す。
冷たいから、
たまにあなたの何気ない言葉が棘になっている。
大好きだから、
今もあなたが好きだった曲を口ずさむよ。
ひとりだから、
ふたりの夢をしっかり見ると好きで困る。
受け取りたいから、
忘れることを努力しているから褒めて。
あなたから、
いつか意思疎通できる手紙をまた受け取りたいな。
●ジョニー、冬を駆ける。
ねぇ、ジョニー。
こっちは雪が降り積もったよ。
合鍵を忘れた君は
まだ戻ってこないね。
ジョニー、
君はなぜそんなに生き急ぐの?
私は悩みに忙殺されて
つらい毎日だよ。
ジョニー、
君はなぜ自由を愛せるの?
世界は狭いって笑うのは
君が広い世界を知っているからだよ。
ジョニー、
雪の中を裸足で駆けるように
無謀なことばかり好きなの?
大好きなチョコレートを買ってくれたら、
私はすぐに機嫌なおす単細胞だよ。
ジョニー、
私はいつまで独りで
ココアを飲めばいいの?
ひざ掛けだけクリスマスの柄で
ホリデイ気分を高めることはできないよ。
ねぇ、ジョニー。
私を置いていかないで。
●ぐるグループ、クレープ、プール、るーぷ
そりゃあ、美しいものは美しいに決まっている。
だから、かわいい子はモテるし、美人な子はひと目置かれる。
そんな存在なんて無数にあるわけで、私は頑張ってかわいいを演出することしかできない。
上手く行かない恋愛を嘆く映画を観て、
それを観て感動するポイントはわかるけど、
なぜ自然に涙が出るようになっているのかわからない。
例えば、恋人の死。
失ったら二度と戻らないことを嘆く。
その嘆く姿を観て、人は泣けるんだ。
だって、まるで自分がその人を失ったみたいに感じるから。
人生なんて、失うことばかりだ。
むしろ、失っていくのが人生なんじゃないのって私、たまに達観しちゃう。
だけど、そんなこと言ってたら、臆病になって何もできない。
我慢できない衝動で行動しないと損だし、行動しないと永遠に何も変わらない。
ループする思考はフラフープのあの目に良くない柄みたいに、
私をめまいに誘うか、
または暗示をかけるのか、
永遠にハマり続けるタイムリープの始まりみたいな、
そんな気持ち悪さをどうにかしてっていうループに絶賛ハマまってる。
プールサイドで君と日向ぼっこをするような、永遠の時間がほしいし、
クレープの生地を垂らし、
くるりと円を描くあの一瞬が気持ちいいし、
そういう一瞬と永遠が交互にやってきたら、
現代人のほとんどの悩みはなくなると思う。
だから、グループでクレープをプールサイドで食べることで幸せを感じることができる人たちって、
実はすごぐ羨ましいし、私は臆病だから、いつも一人。一人。一人。
あーあ。
なんで、涙が頬を伝っているのか訳がわからない。
●明日も無理して自分を励ます。
出口を求めても進むしかないから、
光が射している方へしっかりと進もう。
いつも悩みが尽きなくて、
いつも人の顔色が気になって、
いつも自分がわからなくなる。
そんなの軽く流せばいいんだよって、
かなり前に陽気が取り柄の人に励まされたけど、
軽く流せないから、困ってるんだよ。
いつも気持ちを落ち着かせようと、
コーヒーを飲んでいたら、
いつの間にか、カフェインを過剰摂取するようになった。
今日もやっと終わって、
また明日にそわそわする。
一番、一日の中で幸せなのは、
まどろむ時で、
心が一瞬、静寂になるから、
夢の中だけは上手く行きそうだよ。
夢の中では上手くいってるから、
現実と夢を取り替えたら、
きっと、リア充になれる気がする。
●君の無邪気さを知っている。
君とは幼なじみで、
世界にハートを赤と白に分けることすら知らないときから、
君のことは知っていた。
だから、君の虜になるわけがないと思っていたのに、
だんだん、君の魅力を簡単に感じ、
そして、意識すればするほど、苦しくドキドキする。
君に久々に話しかけられて、
私は勝手に運命を感じていたら、
学校の帰り道で君と春のピークを共有できるだなんて、
思ってなかったし、
話せば話すほど、
君は私のコンプレックスをすべて救ってくれる。
君と一緒に迷いたいなって思ったし、
君のこと、もっと知りたいと思った。
ゆくゆくは世界の果てまで、
二人で行って、
初めてのことを共有したい。
だけど、実は昔にそんなこと、君とは共有しているんだよ。
無限に無邪気なまま遊んだ日のことを思い出して。
【初出】
1章
蜃気羊X(@shinkiyoh)
https://twitter.com/shinkiyoh
2021.11.1~12.29
2章
蜃気羊note
https://note.com/shinkiyoh
2022.8.26~2023.7.15