恐怖で体が震えるのを必死で堪えながら美鈴は、マグドラスを睨みつけていた。

 マグドラスは、そんな美鈴を知ってか知らずか見下ろし不思議に思い首を傾げる。

「ヒューマンなのか? いや、違うな。その様子だと、儂の言葉を理解しておる。……もしやとは思うが、女神が召喚した勇者じゃないだろうなっ!!」

 そう言うと恐ろしい形相で美鈴を睨んだ。

「あ、えっと……」

 美鈴は恐怖のあまり萎縮してしまい上手く言葉にならない。

 その様子をみかねたドラギドラスは美鈴を掴み自分の肩に乗せる。そして、滅多にみせないような獣のような恐ろしい形相でマグドラスを睨み付けた。

「マグドラスっ!? いい加減にするドンっ!」

「ほう、お前が本気で怒るとは珍しい。それに、その者は間違いなく女神に召喚された勇者。ならば、我らにとって敵。それなのに、なぜ庇う?」

「そうだけどドン。確かにこの洞窟を封印して、おいらを閉じ込めたのは女神が召喚した勇者だドン。でも、美鈴は違うドン」

 力強くそう言い放つドラギドラスに対しマグドラスは、なぜそこまで庇うのかと不思議に思う。

「何が違うっ!? どうみても、女というだけで同じではないか」

「違うドンっ!! 美鈴は、女神に始末されそうになったんだドン」

「女神に、その者がか。フンッ、そんなこと信じられんわ。ドラギドラス、その女に騙されてるのではないのか?」

 そう言われドラギドラスは、なんでマグドラスがそこまで美鈴を疑うのかと思った。

「どうしてミスズをそこまで疑うんだドン」

「そんなことは、決まっている。女神に召喚された者であるなら、我々を討伐に来たと考えるのが普通だろうがっ!!」

「確かにそうかも知れないドン。だけど美鈴が、」

 そう言いかけるとマグドラスは、ある提案を持ちかける。

「……お前と言い争っていても埒が明かん。そうだな、儂に水をぶっかけたその力も気になる、」

 そう言いながらマグドラスは、美鈴に視線を向けた。

 美鈴はその視線を感じとり、ビックリし今にも泣き出しそうになる。

「どうだこの儂と、サシで戦うというのは?」

「待つドン。それじゃミスズが、」

「ええい、お前は黙っていろっ! 儂は、」

 そう言い切る前に美鈴は、ビクビクしながらも口を開いた。

「分かった。ウチがマグドラスと戦えば納得してくれるんだよね」

 ビクつきながらもそう言い、ドラギドラスの肩の上にゆっくりと立つ。

「ほう、のみ込みが早いようだな。だが、もし万が一お前が勝てたとしてもその後どうするかは分からぬ」

「……納得いかないけど。それしかないなら、」

 そう言うとマグドラスをキッと睨み見据える。

「さっきとは違い、いい目をする。そうだな、すぐ終わってもつまらんハンデをつけるか。どうだ、お前を攻撃しないというのは? まぁ防御はするがな」

「うん、って、それは助かるけど。……本当にそれでいいの?」

「ああ、勿論だっ! まぁ、どんな攻撃がこようが弾き返すがな」

 マグドラスはニヤリと笑みを浮かべた。その後、美鈴を馬鹿にするようにけなしながら「ガハハハッ!」と大声で笑う。

 それを聞き美鈴はムッとする。

(なんなの、このドラゴン。さっきまでウチを警戒してたんじゃないの? 急にウチを馬鹿にし始めたんだけど……。
 んー、まぁいいか。出た言葉によっては倒せるかもだしね)

 一方ドラギドラスは、この展開にオロオロし大丈夫なのかと思い悩んだ。

(心配だドン。だけど、なんでマグドラスはミスズを試すようなこと言い出したんだドン?)