ここはドラギドラスの洞窟。暗い洞窟内だったがマグドラスの体を覆う炎により周囲は明るい。

 ドラギドラスの後ろに隠れ美鈴は、近づいてくるマグドラスに恐怖し震えていた。

(どうしよう。このままじゃ……)

 どうしたらいいのかと思考を巡らせる。


 片やドラギドラスはマグドラスに美鈴の存在を悟られないようにしようとしていた。

「マグドラス。ここには、おいらの他に誰もいないドン」

 そう言われるもマグドラスは、明らかに普段のドラギドラスと違いキョドっていることに気づく。

(ドラギドラスは、何を……いや、誰をなんのために隠そうとしてる? まぁいい。どんなに隠そうが、におう。ヒューマンに似通ったニオイがな、)

 そう思いながらドラギドラスの側までくる。すると、美鈴のニオイがするドラギドラスの周辺の地面をギョロリギョロリと見回す。

 ドラギドラスは冷静を装おうとするも、かえって焦りが表情に出てしまい顔中に汗をダラダラと流していた。

「何をそれほど焦っておる? やはり誰かいるな。どんなに隠れようがニオイで分かる。出てこいっ!!」

 そう大声で叫び威嚇する。

 そう言われるも、はいそうですかと姿をみせるわけもなく。……当の美鈴はというと、恐怖のあまり動けずにいた。

「フンッ! ここにいるのがヒューマンだとすれば、儂の言葉など分かるわけがないか。だが、ドラギドラス。なぜお前が言葉の通じぬ者を庇う?」

「だ、だから……し、知らないって言ってるんだドン」

「知らない、だと……」

 マグドラスはドラギドラスを鋭い眼光で睨む。

「そうだドンっ!」

 額に汗を垂らしながらもドラギドラスは睨み返しそう言いきった。

「ほざけっ! どんなに儂を欺こうが、このニオイだけではなく、お前の態度に出とるわいっ!!」

 そう言われるもドラギドラスは、ひたすら美鈴を庇おうとあらゆる方法で対処する。

 だが、そんなことをしてもマグドラスには効くわけもなく、ただ更に怒らせるだけだった。

 その光景をビクビクしながらみていた美鈴は、このままじゃ駄目だなんとかしないとと思う。

 マグドラスはドラギドラスにいくら言っても無駄だと思った。だが、自分に水をかけた者のことを許せるわけもなく、再び怒りがわいてくる。

 ガオォォーン――と、何度も雄叫びを上げながら火を吐く。

 美鈴はそれを聞き更に足が竦んだ。 だが美鈴は、自分に大丈夫だと言い聞かせ気合いを入れて勇気を降り絞る。

「待って!? ウチならここにいるっ!」

 そう言うと美鈴は、ドラギドラスの後ろから姿を現しマグドラスをキッと睨んだ。

「ほう、お前が。うむ、だが、」

 そう言いマグドラスは不思議そうに美鈴をみていた。

 そしてドラギドラスは、なんで美鈴が姿をみせたのかと思考を巡らせる。

(ミスズ、どうして出てきたのかドン? 何か考えがあるならいいと思うけど、大丈夫かなドン)