マグドラスは、ドラギドラスをジーっとみつめた。

「ドラギドラスっ! お前にこんな芸当ができるわけがない。そうなると、儂に水をかけたヤツが他にいる」

 そう言い辺りを見回しながら、ドスン、ドスンと地を鳴らし、ゆっくりとドラギドラスの方へ近づいてくる。

 それを聞き美鈴は、オロオロしながらどうしようかと思考を巡らせた。

(ど、どうしよう。このままじゃみつかっちゃう……)

 そう思うも考えが纏まらず焦る一方だ。



 場所は変わり__その頃スイクラムは、その様子をみて美鈴を嘲笑う。

「いいわ、そう、こうでなければ面白くないわよねぇ。そう簡単にマグドラスを倒せるわけがありませんもの」

 そう言いながらほくそ笑む。

 夢中で宙に浮く水晶を覗きみている最中、スイクラムの眼前に文字が浮かぶ。

(ああ、いったい誰? 今、最高に面白い展開ですのに……。
 まぁ、どうせリアス辺りがよこしたのでしょうから、あとで読んで返事を出せばいいわよね)

 そう思うとスイクラムは、送られてきた文字を邪魔だとばかりに右手でスライドさせ後ろへと退けた。

「フフフ……。マグドラス、美鈴をどう料理してくれるのかしらねぇ」

 そう言いながら、再び水晶を覗きニヤリと笑みを浮かべる。



 場所は移り、ここは異空間の狭間にある異界領域。そこには、全ての神を統べる者の城がある。

 そうその神の名は、ゼルウナス。

 周囲は白い雲と虹の架け橋だらけであるが、敷地はかなり広い。ちなみに城も白い雲でできていて、虹の架け橋は雲から雲へと移動するためにある。

 その敷地内には、なぜかカラフルな色の雲のテーブルや椅子が置かれている場所があった。

 そこでは、主に神々が茶会などをしている。

 その雲のテーブルには、緋色のグラデーションカラーで白髪の神が頭を抱えながら椅子に腰掛けていた。


 この者は、炎を司る神ファイグ。ゼルウナスの代弁者であり、ホムノオズという世界の神である。


 ファイグは、キリっとした目を更に細くし遠くをみつめながら綺麗な顔を崩し引きつらせていた。

(スイクラム。なぜ直ぐに返事を返してこない? 何を考えている。いつもであれば、即座に返答してくるのだが……)

 そう思いながら城をみやる。

(ゼルウナス様が召集命令を下したというのに……。もしスイクラムがこないとなれば、間違いなくお怒りになるだろう)

 頭を抱え一点をみつめ考え込む。

(ああ、困った。連絡するにも他の手段がないとなると。考えても何も浮かばぬ。ハァ~、どうしたものか……)

 席を立つとテーブルから少し離れた。すると眉間にしわを寄せ、草色をした雲の上を行ったり来たりしながら自問自答する。

(これは、もしかしたら何かあったのかもしれない。そうとしか思えぬ。そうなると、この目でじかに確認する必要があるな)

 そう考えが纏まると城へと向かう。

 その後ゼルウナスに、急用ができたため自分の世界に戻ると伝える。

 そしてその後ファイグは、自世界ホムノオズに向かったのだった。

(まだ時間はある。だが、それまでに間に合えばいいが。……)