ヴァウロイは、美鈴が消えた辺りを調べていた。

「……!?」

(ここって……まさか、)

 飛ばされた場所が分かるもヴァウロイは、驚き顔を引き攣らせる。

「ヴァウロイっ!? ミスズの居場所が分かったのか?」

 エリュードがそう問いかけるとヴァウロイは頷いた。

「分かったけど……ただ、よりにもよって、なんであの場所なのかニャ」

「おい! まさか、ミスズはとんでもないとこにいるのかっ!!」

 そう言いながらヴァウロイに詰め寄る。

「エリュード、待つニャ! って、ちょ、苦しいのニャ」

 エリュードに襟元を掴まれジタバタともがき苦しむ。

「あ、悪い。だが、ミスズはいったいどこに……」

 そう問いかけられヴァウロイは、ルイド、ゴルイド、ライル、エリュード、四人を順にみたあと少し考える。

 だがその後、真剣な面持ちになり重い口を開き話し出した。



 場所は変わり__その頃美鈴はというと。真っ暗な洞窟の中、奥の方から聞こえくる奇妙な鳴き声と地を響き揺らす轟音に体を震わせ恐怖のあまり今にも泣きだしそうだ。

「う、ヒクッ、なんで、ウチが何をしたっていうのよぉぉぉ~……」

 そう叫ぶも辺りには誰も居らず木霊だけが、ただただ虚しく周囲に響き渡っていた。

 その叫び声を聞いてか否か、更に轟音が増しドスドスと足早に美鈴の方へと向かいくる。

 美鈴は更に恐怖し震え後ずさりした。だが、たまたま足元にあった大きめの岩につまづき尻餅をつく。

「い、痛い……」

(グスン、なんで、ウチって……こっちの世界でも、こんなにツイてないのよ)

 そう思いながら痛いお尻を摩り暗い中を手探りで立ち上がる。と同時に、自分の目の前に生臭い何かがいることに気づき青ざめた。

 そう尻餅をつき立ち上がるまでの間に既にその生物は、美鈴の目の前に来ていたのだ。そして鼻息を荒くし、美鈴を遥か数十メートルもの高さから見下ろしている。

 美鈴は恐怖のあまり動けなくなり、下を向いたままの体勢でカチコチに凍り付く。

 その生物は、黒に近い緑色の体を曲げ水かきのような巨大な手を伸ばし美鈴を捕まえる。

 今にも美鈴は失神しそうになっていた。

 だがその生物は、そのまま美鈴を自分の目の前まで持ってくると、何をするでもなくただみているだけだ。


 __ちなみにその生物は、豚の鼻、鰐のような口、太ったドラゴンをギャグマンガ風に書いたような顔と図体である。


「どうしよう。驚かせるつもりはなかったんだドン。だけど、おいらの言葉、多分この人には聞こえてないドン」

 そう言いながら目おうるませていた。

 だが、なぜか美鈴はその言葉を理解する。

「ん? えっと、まさか、もしかして悪い魔獣とかじゃないの?」

 そう問われその奇妙な生き物は驚き首を傾げ美鈴に問い返した。 

「あれ? なんで言葉が通じてるのかドン」

「そういえばなんでかな?」

 そう聞かれるも美鈴は、なんで言葉が通じているのか分からず小首を傾げる。

「まいいか。君は不思議な人だけど、悪い人にはみえないドン」

 そう言いながら美鈴を自分の手のひらの上に乗せた。

「でも、なんでこの場所にいるんだドン?」

 そう聞かれ美鈴は理由とここまでの経緯と自分のことを話し始める。

「――と、いう事なんだけどねぇ。それで、ここってどこ?」

「ミスズかぁ。おいらは、ドラギドラスだドン。それとここは、――」

 ドラギドラスは、ここがどこで自分がなぜここにいるのかを説明し始めた。


 __そうここは、かつてスイクラムが召喚した勇者によりドラギドラスが封印された洞窟だ。

 ちなみにスイクラムは、炎の竜マグドラスがいる隣の洞窟と間違えて……いや、またもや失敗して美鈴をここに転移させていた。


「なるほどねぇ。ドラギドラスは、かなり前に召喚された勇者に何もしていないのに、見た目だけでいじめられた挙句にこの洞窟に封印された、と」

「そうなんだドン。だけど、ミスズも女神に召喚されたのになんで酷い扱いされたのか不思議だドン」

「うん、今でも納得いってない。それに、ここに飛ばしたのもあのケバ女神だろうしねぇ」

 そう思いムッとし再び怒りが込み上げてくる。

 その後も美鈴とドラギドラスは、色々な話をしていたのだった。



 場所は戻り__ここはレインライムの冒険者ギルド。

 エリュード達は、ヴァウロイから美鈴がドラギドラスの洞窟にいると告げられる。

 それを聞き四人は、驚き急ぎそこに向かおうとした。だが、それをヴァウロイが止めた。

 そうドラギドラスが、珍竜だけど決して獰猛なドラゴンではないことを知っていたからだ。

 ヴァウロイは、ドラギドラスのことを詳しく四人に説明する。

 それを聞いた四人は、信じられないと思いヴァウロイをジト目でみた。

「ちょっと待つのニャっ! なんで、そんな目でみるんだニャ。ボクは真実を言ったまでで、嘘なんてついてないのニャ」

「どうだかな。だがまぁ、この状況で嘘をつくとも思えねぇ。それにお前も、ミスズのことを心配してるみたいだしな」

 ルイドにそう言われヴァウロイは頷き話し始める。

「うん、ミスズのこと心配だニャ。本当に、あのドラギドラスは大丈夫なのニャ」

「でも、どうするの? さっきの話だと、あの洞窟って外から封印されていて中からじゃ出れないのよね?」

「確かに中からは出れないけどニャ。外から封印を解けば……ううん、ちょっと待ってニャ! ミスズなら中からでも封印を解けるかも」

 それを聞き四人は、それは本当なのかと囲むように詰め寄り、一斉にヴァウロイの体を掴んだ。

 ヴァウロイは、一瞬だけ驚いたが体勢を立て直し再び話し始めた。

 そして四人は、なぜ美鈴が中からでも封印を解くことができるのかをヴァウロイから聞く。その後、どうするのかを協議していたのだった。