エリュードとゴルイドは、互いににらみ合いけんせいし合っていた。

(このままじゃ、まずいな)

 だがゴルイドは、このままでは日が暮れると思い先に仕掛ける。そしてオノを振り上げると、エリュードの懐に入った。

(ゴルイド。そうきたか!)

 それを見たエリュードはすかさず間合いを取り、つえをゴルイドのほうにかざすと風の魔法を放つ。

 その風の魔法は分裂し鋭い刃のごとくなりゴルイドにあたっていく。

 それを避けるどころかゴルイドは、突っ込んでいきエリュードとの間合いを詰める。

 そして周りの建物を巻き込み破壊しながら、両者ともに譲ることのない激闘を繰り広げるのだった。



 場所は移り。__エリュードとゴルイドがいる場所からすこし離れた所で美鈴は、心配な表情になり二人の事を見ていた。

(大丈夫かな? 二人を止めたいけど。あの様子だと話を聞いてくれないだろうし。
 ウチが能力を使えばなんとかなると思う。だけどここで使えば多分ウチの素性がバレちゃう。あーどうすんのよぉ〜)

 そう思い頭を抱え自問自答する。

 リムに言われ美鈴たちのあとを追ってきたティムとダインは、エリュードとゴルイドのほうをみた。

「ミスズ。なんか今のゾラってさぁ。ギルドにいた時と雰囲気が違う気がするんだけど」

「ああ。まるで、重SSクラスの冒険者のような圧を感じる。これって? それにあのゴルイドと互角って……」

 それを隣で聞いていた美鈴は、どう取り繕ったらいいのかと困惑する。

(どうしよう。このままじゃゾラがエリュードだってバレる。
 ううん、それだけじゃない。下手すると、ウチも疑われて冒険者登録ができなくなる)

 そう思い美鈴は自問自答していた。



 一方そのころ。__リムとノエリアは、別の場所からエリュードとゴルイドの様子を伺っていた。

「ねぇ、ノエリア。心配できてみたけど。なんか予想以上に大変な事になってるみたい」

 リムは心配になりソワソワしている。

「そうね。でも、どういう事かしら? ゴルイドよりも、ゾラさんのほうが強いように思えるのですが」

 そう思っていると、二人の背後から強面のドワーフの男性が現れた。

「なるほどなぁ。一瞬『コイツは誰だ』って思ったが。こんなとこに、いやがったか。髪が短いから分からんかったがな」


 この紫の髪の男性は、このギルドのマスターのルイド・カルマである。そしてエリュードとゴルイドの事を良く知っていた。


「あっ! マスター。来られたのですね。大変なんです、って。もしかして知っているんですか?」

「リム。知ってるもなにも。あの二人とは昔なじみだ。だが、……。いや、今は言わないほうが良さそうだな。あとで、じっくりわけを聞くとするか」

「そうなのですね。ですがマスターの知り合いとなると。ゴルイドはともかく。あのゾラさんっていったい? かなり、強いようですが」

 ノエリアがそう問いかけるとルイドは口角を上げ、わざとゴルイドとエリュードに聞こえるように声を張り上げる。

「あーなるほど! アイツはゾラって名乗っていやがるのか。どういう経緯か知らんが。これ以上、俺の縄張りを荒らすと余計に罪が重くなるぞ!」

 その声は広範囲に響き渡った。もちろん美鈴たちや、戦っているエリュードとゴルイドの耳にも入ってくる。

 その声を聞きエリュードとゴルイドは、一瞬で凍りついた。

 エリュードは恐る恐る声がしたほうをみる。

(ちょっと待て! なんでここにルイドがいる? 間違いなくあの様子じゃ。俺が誰だか気づいている。
 クソッ! やっぱり、どうやっても素性は隠せないのか)

 ゴルイドもまたビクビクしながらルイドのほうをみた。

(コリャ、まずいな。アイツがギルドのマスターになったって風のうわさで聞いちゃいたが。まさかこの街のギルドとはなぁ)

 ルイドは悠々とした足どりで二人のほうへと歩き出す。

 エリュードとゴルイドは、互いにこのままじゃまずいと思いどうしようかと思考を巡らせる。



 それを見ていた美鈴は、どうしたらいいのかと思い悩んだ。

(ちょっと。あの人ってもしかしてエリュードとゴルイドの知り合い? だとしたら、これってすごくまずいんじゃ。どうしよう)



 二人のそばまでくるとルイドは、エリュードとゴルイドの間に割って入った。そして鋭い眼光でにらみ二人を交互にみる。

「おい、おまえら! 随分と、暴れてくれたみてぇじゃねぇか。どうなるか、分かってんだろうな!?」

「ルイド。こ、これには事情があってな。それに、俺はただゴルイドとリブルのケンカを止めに来ただけだ」

 そう言いエリュードは後退りする。

「ほう。それが、なんでこうなる? なぁゴルイド!! 主犯のてめぇが逃げんじゃねぇ!」

 ルイドがエリュードのほうを構っているうちに、ゴルイドはこの場から逃げようとしていた。だが、それをルイドに気づかれてしまった。

「あーいやなぁ。ルイド、これには」

「ハァ。おまえが、リブルの事を嫌ってた事も。リブルが、おまえを嫌っている事も知っちゃいた」

 一呼吸間をおくと、また話し始める。

「だがなぁ。やっていい事と悪い事ぐらい。いい大人なんだから分かんだろう普通。エリュー……いや、ゾラ。おまえもだ」

「ルイド、おまえ。ああ、そうだな。すまない」

 ルイドが自分に気を使っている事が分かり、エリュードは申し訳ない気持ちになった。

 ゴルイドもまた、ばつが悪くなりこの場にいるのがつらくなる。

「さてと。おまえ達の処分はギルドで決める。あとの事は俺がなんとかしておく。おい、行くぞ!」

 そう言いルイドは、コッチに来いと二人に指示を出した。するとエリュードとゴルイドは、トボトボとそのあとを追った。

 その光景を美鈴を含め周囲の者たちは、やっと終わったかと思いながらそれぞれがその場から離れていく。

「って。さすがに、ウチもあとを追ったほうがいいよね」

 エリュードの事が心配になり、美鈴はあとを追いギルドに向かう。

 その後リムやノエリア、ティムとダインもギルドへと向かった。

 それを確認するとライルは、建物の物陰からひょっこり顔を出し辺りをキョロキョロする。

 するとヴァウロイもまた、ライルの肩付近に姿を現した。

「あっ、ヴァウロイ。エリュード達、行っちゃったみたいだけど。どうしようか?」

「どうしようって聞かれても。ボクだって返答に困るのニャ」

 そしてヴァウロイとライルは、しばらく建物の物陰で話し合っていたのだった。