ここは、レインライムにあるギルドの医務室。

 美鈴はエリュードの看病をしながら、いつのまにかベッドにうつぶせになり眠ってしまった。

 リムはギルドの受付のほうに行き、残っていた書類の整理を終わらせる。

 その後、また医務室に戻って来ていた。

「あらぁ、ミスズさん。よほど、疲れていたのですね。このまま、眠らせてあげたいのですが。これでは、風邪を引いてしまいます」

 そう思いリムは、またギルドの受付のほうに行った。そして腕力に自信がある者を募ると、エリュードと美鈴のもとへと戻る。

 医務室に入るとリムは、そのいかにもマッチョな男に美鈴を抱きかかえさせた。

 そして、その男とともにリムは部屋を出る。

 その後リムとその男は、ギルドで働く者たちの休憩所に美鈴を連れていった。

 部屋の中に入るなりその男は、リムの指示のもと美鈴をベッドに寝かせる。

 その後リムは、その男にチップを渡し休憩所を出て再び医務室に向かった。

 医務室に戻ったリムは、エリュードの様子をみる。

「先程よりも、だいぶ顔色が良くなってきました。これなら、そろそろ目が覚めるころかしら」

 リムはそう言い、ベッドの脇の椅子に座った。

(そういえば、ゾラさん。今まで、冒険者登録もせず、何の仕事をしていたのでしょう? 見た感じでは、相当な使い手のように感じます。
 それにミスズさんも、何か普通の人には見えません。いったい二人は、何者なのでしょうか?)

 そうこうリムは、思考を巡らせている。

 するとエリュードは、『ん〜』と言い背伸びをし目を覚ました。

 そして天井に視線を向けると、誰かの気配を感じエリュードはリムのほうをみる。

「ん? ここはどこだ!」

 エリュードはそう言い、起き上がろうとした。

「ゾラさん! 目を覚ましたのですね。ですが、寝ててください。まだ完全に、酔いが覚めてはいませんので」

 そう言われエリュードは、またベッドに横になる。

「すまない。えっと、リムさん。それよりも、俺はなんでベッドに寝てるんだ? そういえば今、酔いが覚めてないって言ったよな?」

「ええ。ミスズさんが、水とミュウズを間違えてゾラさんに飲ませてしまったらしく」

 そう言われエリュードは、なるほどと思い深いため息をつく。

「なるほど。あれは、匂いで分かるはずだ。だが見た目と名前が似てるから、知らないヤツが良く間違えて飲んでぶっ倒れる」

 エリュードは、難しい顔をし考え込む。

(普段の俺なら、ミュウズを一気に飲み干したぐらいじゃ。軽く酔いはしても、ぶっ倒れるまではいかねぇはずだ。
 だがあの時、ミスズの事を思い考えた瞬間。なぜか、異常にどうきが激しくなりのぼせた。
 俺の体に何が起こっている?)

「そういえば、気になったのですが。ゾラさんは、なぜ今まで冒険者登録をされていなかったのですか?」

 そう聞かれエリュードは、どう答えたらいいか悩み始める。

「それは……」

 リムはエリュードが、なぜ即答できないのか疑問に思った。

(やはり、何か隠していますね。ですが、何か事情があるとすれば。深く追求するのは、良くないかもしれません。
 それにミスズさんも同じように、何か事情があり隠しているのかもしれませんね)

 そう勝手に解釈しリムは、ニコッと作り笑いをする。

「言えない事情があるのでしたら、無理にお話にならなくてもいいですよ」

「すまない」

 エリュードは、申し訳ないという気持ちになりリムに謝った。

「いえ、謝らないでください。私は、ただ気になっただけですので」

「ああ。そういえば、ミスズの姿が見えないが。どうしたんだ?」

 横になりながらエリュードは、ふと辺りを見渡してみると、ここに美鈴がいない事に気づきリムに問いかける。

「安心してください。ミスズさんなら、ギルドの者の休憩所のベッドで眠っています」

「ミスズが? 大丈夫なのか!」

「はい。大丈夫かと。ただ先程まで、ゾラさんに付き添っていましたが。だいぶ、お疲れになられていたみたいです」

 それを聞きエリュードは、もうすこしミスズの事を考えて行動すればよかったと思った瞬間。また、どうきが襲ってきて胸が苦しくなった。

 それに気づいたリムは、追い打ちをかけるようにエリュードに問いかける。

「ゾラさん。ミスズさんとは、どういう関係なのですか?」

「ミスズ、とは。ただの旅の仲間の一人、だ。そ、それ以上でも。それ以下でも、ない」

 エリュードは、たどたどしくそう答えた。

「ん〜やはり、気づいていないのですね。それにこのままでは気づかず、一生その症状が続いてしまう。さて、どうしましょう?」

 リムはそう言い、エリュードをチラッとみる。

「それは、どういう事なんだ? まさか、そんなに重い病気なのか」

「そうですねぇ。これでは試験を行う事ができませんので、仕方がありません。本当は、ご自身で気づいたほうがいいのですが」

 リムはすこし考えたあと、再び話し出した。

「その症状について、詳しくお話しますね」

 そう言いリムは、息を思いっきり吸うと説明し始める。

 そしてエリュードは、ゴクリと唾をのみ込み、ドキドキしながら聞いていた。