ここは、王都スイダムルからはるか南東に位置する、コーンの森の中にある洞窟内。

 カイトは途中で倒した魔物から手に入れた、魔物よけのアイテムを使い結界を張り休憩していた。

 派手目で黄色の布を地べたに敷き、カイトはその上に座っている。

「ふぅ〜。さすがに、あれだけの距離を歩いたから疲れた。この地図に書いてある。ウリナスの街までは、まだまだ距離があるんだよなぁ」

 カイトは地図を見ながら、ウリナスの街を指差すとうなだれ、ハァとため息をついた。

「そうなると今日は野宿かぁ。汚れるし、そこら中に奇妙な虫がいて、嫌だなぁ。まぁ虫よけはしてあるから大丈夫だと思う。でも、さすがに……」

 カイトは虫を無視したいと思うが、至るところにいるため、どうしても目に入ってくる。

(ハァ〜。こんなことなら、テントを買っておけばよかった。
 まぁ仕方ない。今日はなんとかある物でしのいで。明日、ウリナスの街で必要な物を買うしかないな)

 そう思いカイトは、自分の持ち物やステータスの確認をする。

 そしてカイトはその後、ここで野宿するための準備を始めたのだった。



 そのころスイダムル城の執務室では、国王セルスイドが神官セリアをここに呼びつけ問いただしていた。

「セリア。今一度だけ問う。何度も聞くようだが。本当にあのカイトは、女神が召喚した真の勇者なのだな!」

 セルスイドは、コハク色の目でセリアをにらみ責め立てる。

「はい、間違いなく。あれは、女神スイクラム様からのお告げでした」

 床にひざまづき下を向きながらセリアは、セルスイドに責められ涙目になっていた。

「うむ、セリア。おまえがウソをつくとも思えん。だが、どうもあのカイトが勇者だとは思えんのだ」

「私も同じ意見でございます。ですが、女神様から授かった、勇者の証をカイトは所持しておりました」

「確かに、あれは本物であろう。ただなぁ」

 セルスイドは、どうしたものかと思い悩んでいる。

(いったい女神様は、何ゆえあのような者を勇者としてお認めになられたのでしょうか?)

 そう思いセリアは自問自答していた。

「陛下。女神様が、何も考えなしにあのような者をお認めになるとは思えません」

 セリアはゴクリと唾を飲み込み、何かを決心したかのようにうなずきさらに話し始める。

「ですので。お許しを頂けるのであれば。この私目が、直接カイトの監視をした上で、女神様の真意を見定めてきたいと思うのですが?」

「セリア。おまえがこの城を離れるということは、この国にとっては損失が大きい。だがアヤツに、ほかの者を付けるわけにもいかん」

 どうしたものかとセルスイドは考え出した。だが、ほかに思い付かず首を縦に振る。

「うむ。やむを得んだろうな。セリア。おまえにカイトの監視を任せることにする。直ちに支度をしあの者のもとへ行け!」

「はい! 陛下。直ちに城をたちカイトを追いたいと思います」

 そう言いセリアは、セルスイドに一礼をして執務室を後にし神殿へと向かう。

 そしてその後セルスイドは、セリアが執務室を出て行ったのを確認すると、自分もこの場を離れ自室へと向かったのだった。