「では、自己紹介も済みましたので。今から試験に良さそうな、軽Sランクのクエストを数件みつけてきます。ですので、少々お待ちください」

 リムはそう言い軽く頭を下げ、カウンターのほうに向かい歩き出した。

 美鈴たち四人は、リムが戻るまで暇なので間を持たせるために話を始める。

「そういえばさぁ。ゾラとミスズって、どういう関係なの?」

 美鈴とエリュードの関係が気になり、ティムは二人に問いかけた。

「関係かぁ。んー、なんて説明したらいい」

 そう聞かれエリュードは、なんて答えたらいいか悩んでいる。

「関係……そうだなぁ。ウチが野獣に襲われているところを、ゾラが助けてくれたのが最初で。それから一緒に旅をしてる」

 ニコニコしながら美鈴は、エリュードのほうに視線を向けた。

「ああ、そうだったな」

「ふ〜ん。で、二人で旅してるのか?」

 ダインは身を乗り出し、興味津々で二人に問いかける。

「旅は二人だけじゃないよ。ウチとゾラ以外は冒険者登録してるみたい。だから、二人でギルドに登録に来たの」

「へぇ、じゃあ。その人たちとは、このランク付けの試験が終わったら合流するの?」

「いや、今日はこの街の宿屋に泊まる予定だ。恐らくアイツらは、先に向かっているとおもう」

 エリュードは、ライル達がちゃんと宿屋にいるか不安になった。

「そうか。となると、すぐに旅立つってわけじゃないみたいだな」

「そうなるだろうな。まぁ試験の間はミスズと行動する、ことになる」

 そう言いかけたエリュードは、思い出したかのように顔を赤らめる。

 そう美鈴と二人で行動すると思った瞬間、エリュードは忘れていた感情が込み上げてきたのだ。

(うっ、まずい。まただ! いったいなんなんだ。体から湧き上がってくる、この熱いものは……。
 激しくどうきがする。胸がくるしい。……そもそも、なんでミスズのことを考えるとこうなる? 俺はどうしちまったんだ……)

 美鈴はエリュードが、テーブルの上にうつぶせになり胸をおさえ苦しそうにしていたので、心配になりのぞき込んだ。

「ねぇ、ゾラ。急にどうしたの。さっきより苦しそうだけど大丈夫?」

 そう聞かれエリュードは、うつぶせのままの状態で軽く右手を上げ苦しそうな声で話し出した。

「ちょ、わるい。た、のむ。みず、を、くれ」

「分かった水だね。待ってて、もらってくるから」

 美鈴はそう言い席を立つと、受付とは別のカウンターのほうに急ぎ向かった。

(もしかしてこれって……へぇ、なるほど、そういうことかぁ)

 エリュードのその様子を見たティムは、なんでこうなったのかが分かり、不敵な笑みを浮かべる。

 そしてティムは席を立ち、ダインのそばまでくると耳打ちをした。

「ダイン。ちょっと話したいことがある。リムがくるまでの間、ここから離れるよ」

 そう言われダインは、なんだろうと思いながらもティムに言われるままこの場を離れる。

 そしてエリュードは、テーブルに一人だけ残され苦しそうにうなっていたのだった。

(いったい、なんなんだ。って。ハァハァ。息が苦しい……)