ここはスイル大草原にある小さな湖付近。

 あれからエリュードは、ヴァウロイに回復してもらい檻からでる。

 美鈴たちはその後、周囲の片づけをしながら話をしていた。

「そういえば、ライル。なんで俺の命を狙ったんだ?」

 ライルは壊れたテントを解体していたが、そう聞かれ手を休めエリュードの方を向く。

「ああ、そのこと、実はね--」

 そう言いライルは、なぜエリュードの命を狙ったのか説明し始めた。

「なるほどな。まさか獣人族の国ジエルマの連中が俺に賞金をかけた、って。クッ、それも国絡みでか」

 エリュードは、悔しさのあまり地面を蹴る。

「心当たりはないのか?」

「いや、ある。恐らく俺に依頼料を払いたくないからか、今回の依頼自体、俺の始末が目的だったかのどっちかだろうな」

 そう言いムッとし、手に持っていた食器を思わず地面に投げつけた。すると「ガシャ〜ン!」と大きな音をたて割れる。

 その音を聞きつけ美鈴とヴァウロイとゴルイドは、どうしたのかと思いエリュードの側へ駆けよった。

「どうしたの? エリュード、怒ってるみたいだけど。何かあったの?」

 美鈴は心配そうにエリュードをみつめる。

「ああ。なんでライルが、俺の命を狙ったのか大体だが分かった」

「ほう。おめぇが命を狙われるとわな。ん? まさかエリュード、ライルちゃんといい仲なんじゃっ! そんでミスズちゃんと浮気してると思って……」

「ライルちゃん、って。流石にそれはない。ライルは、幼なじみのラクシェの姉だ」

 そう言いながらエリュードは、ゴルイドがライルと美鈴をちゃん付けしていたので吹き出しそうになるも堪えていた。

「そういうこと。って、その話の続きだけど。もし後者だとして、ジエルマ国のヤツらに恨まれる覚えは?」

「そうだなぁ。少し考えてみたんだが、やっぱり恨まれるようなことをした覚えがない。ライル、アイツらはなんてお前に依頼した?」

「そうねぇ。私がシシルム国のギルドで、この依頼を受けたんだけど。その依頼書には……あっ! そうそう、」

 ライルは依頼書を、異空間の収納ケースに仕舞っておいたことを思いだす。

 そして異空間の収納ケースから、依頼書を取り出しみんなにみせる。

 それをみたエリュードは、顔をしかめ考え込んだ。

「これってどういう事だ? 俺には身に覚えがない。ってことは、いったい誰がこんなことを、」


 そうそこにはエリュードの似顔絵と依頼内容が__

 __エリュード・グリフェ、種族エルフ。この者は、ジエルマ国の第一皇子暗殺の志望者である。

 生死は問わず捕らえた者には金貨--。__

 __と、書かれていた。


 エリュードにはまったく身に覚えがなく。

「ライル。この依頼なぜ受けた? それに、なんでシシルムのギルドに依頼が。もう一つ、内容を知っててなんで俺に聞いた?」

 なぜシシルム国のギルドにこの依頼が来たのかと、ライルの発言にも曖昧さがあり疑問に思い問いかける。

「それはね。まず、なぜ内容を知ってて聞いたのか。それは、言わない方が警戒されずに真意が分かると思って」

 そう言いライルは、腕を組みエリュードを真剣な面持ちでみた。

「それと私が調べた限りだと。この依頼書は、シシルム国以外のギルドにも出回っているらしいの」

「他の国のギルドにも、って!?」

「だから私がこの依頼を受け、事実かどうか見極めようとしたわけよ」

 そう言われてエリュードは頷こうとしたが、ふと思いライルに問いかける。

「なるほど、って言いたいんだが。なんか誤魔化してないか? それだけなら、別に俺の命を狙わなくても探ることぐらいできたはずだよな」

 そう言いライルを睨みつけた。

「そ、それは……えっとね」

 そう言われどう返答するか悩み始める。

(どうしよう。賞金が欲しくて捕まえるつもりだったなんて言ったら。……流石に怒るよなぁ)

「はぁ、まぁいい。その様子だと、おおよその検討がついた。どうせ、賞金が目当てだったんだろうからな」

 そう言うと頭を抱え溜息をついた。

「ハハハ……」

 エリュードに考えていたことが見透かされ、ライルは苦笑する。

 そしてその後、美鈴たちは片づけを再開したのだった。