エリュードとヴァウロイは、美鈴が能力を使う所を木々の物陰に隠れている者に気づかれないように隠した。

 美鈴は能力を使うため、目の前に手を翳しステータス画面をだす。

(……この場合って、攻撃と……単体かな?)

 そう思いながら即座に攻撃と単体を選びスロットを回した。

(お願い! いい文字が出て)

 美鈴は心の中でそう願い。

(頼む、一回で成功させてくれ。でなければ、恐らく気づかれる)

 エリュードもまた成功してくれと願った。

(成功して欲しいのニャ。だけど、なんか失敗する予感しかしないのは気のせいかニャ?)

 それぞれがそう思っているとスロットのリールが停止する。

 美鈴は表示された文字をみて「……」になった。

(えっと……これを組み合わせるとなると。どうしよう。難しくって思いつかない)

 そう表示された文字とは、難しい漢字の『傍』である。

(ん? でも、この漢字と組み合わせるならあれしかない。だけど、もしこれで成功したらかえって厄介なことになる気がする。
 でもやらないと。……確か組み合わせる文字数は決まってないって、ヴァウロイが言ってたはず。
 成功するか分からないけど、試しに召喚をつけてみようかな。失敗したら……まぁ、なんとかなるよね!)

 そう思い深呼吸をすると、両手を木々の物陰に隠れている者の方へ向けた。

 《傍若無人を召喚!!》

 そう美鈴が言い放つと、木々の物陰に隠れている者の背後に魔法陣が現れる。

 その魔法陣から、いかにも悪そうな雰囲気の男性が召喚された。

(スカじゃないみたいだけど、成功したのかな?)

 美鈴がそう思っている頃。__



 __木々の物陰に隠れている者は、背後からその男性の気配を感じる。そして恐る恐る振りかえると、強面の男性がいて恐怖し顔が青ざめた。

 その男性は、一瞬なんで自分がこんな所にいるのかと不思議に思い辺りをキョロキョロする。

「おいっ! なんなんだ? ここはよ。……って、ちょっと待て。お前、なかなかいい女じゃねぇか」

 そう言いその強面の男性は、木々に隠れている者……いや、ダークエルフの女性をみるなり詰め寄ろうとした。

 ダークエルフの女性は一瞬、怖さのあまり足がすくみそうになる。だが、その男性に掴まれそうになり反射的にかわした。

「ヒィッ! なんなのよぉ。ヒクッ。う、うわぁぁ〜!?」

 と言いそのダークエルフの女性は、泣き叫びながら美鈴の方へと逃げる。そのあとを、その強面の男性が追いかけた。

 それをみていた美鈴たちは、何が起きたのかと首を傾げる。

「一応、成功みたいだけど。あれって?」

「成功したのはいいけどニャ。何を召喚したのかニャ?」

「成功はいいが。まさかあの二人は……でもなんで? なんの接点もない二人がここにいるんだ?」

 エリュードがそう言うと美鈴は、不思議に思い問いかけた。

「それって、どういう事なの? ウチが成功して召喚したとしたら。恐らくだけど、あの怖そうな男の人だと思う」

「そうなると……なるほど、そういう事か。俺の命を狙っていたヤツの正体が分かった。だが、なぜ彼女が俺を?」

 なんで命を狙われたのか分からず首を傾げる。

 そうこう美鈴たちは思考を巡らせていた。

 そして泣き叫びながらダークエルフの女性は、強面の男性に追いかけられ美鈴たちの方へと向かってくる。

(なんなのよぉ〜! わけが分かんない。もぉ、いやぁぁ〜)