ここは、スイル大草原にある小さな湖付近。

 あれから美鈴たちは、なんとかボロボロのテントをつなぎ合わせ修理した。その後、別々のテントで寝る。



 __翌朝になり美鈴たちは、朝食を済ませると片づけをしていた。

「そういえば、ヴァウロイ。聞きたいことがあったんだけど」

 そう言われフワフワ浮きながらヴァウロイは、美鈴の方に視線を向ける。

「聞きたいことって、なんなのニャ?」

「ウチの能力の言霊、今は失敗しても一度だけって言ってたけど。それって、流石に永遠にってことじゃないよね?」

「そのことニャ。そのことなら大丈夫ニャ。ただし、失敗してから半日の間に失敗すると能力が使えなくなるのニャ」

 美鈴はよかったと一瞬だけそう思ったが、ヴァウロイが言った最後の言葉が気になり聞きかえす。

「それって、もう使えなくなるってことかな?」

「ううん。それは大丈夫、使えなくなるのは半日だけニャ。付け加えると、今のミスズのレベルだと失敗は一度だけニャ」

 ヴァウロイは、フワフワ浮きながら美鈴の周りを一周する。

「だけどレベルが上がれば、失敗してもいい回数が増えるのニャ」

「そっかぁ。よかったぁ〜」

 美鈴は、ホッと安心し肩の力が抜けた。

「聞いてて、ふと思ったんだが。ミスズの能力ってなんなんだ?」

 エリュードは片づけながら、美鈴とヴァウロイの話を聞いていたが気になりそう問いかける。

 するとヴァウロイが、ミスズの能力がなんなのかを説明したと同時にステータスも暴露した。

「……なるほど、言霊か。プッ、だが。いや、まさかミスズの。プップッ、ステータスがなぁ」

 それを聞きエリュードは、なんとか笑いを堪えようとする。

「ん〜もうっ! そこまで、笑わなくてもぉ」

 美鈴はエリュードに笑われ、ムッとした表情になった。

「あっ、悪い悪い。だが、いくらなんでも女神が召喚した勇者のステータスとも思えんな。どうなっている?」

「確かにニャ?」

「そのことは、ウチもなんでなのか知りたいけど。どうなんだろう?」

 そう言い首を傾げる。

「まぁ、ミスズもヴァウロイも分からないんじゃどうしようもねぇし。これについては、おいおい調べていくしかないな」

「そうだね。旅を続けてれば、何か分かるかもしれないし」

「そういう事だニャ。それに、エリュードの命を狙ったヤツのことも気になるのニャ」

 そう言いフワフワ浮きながら向きを変えず半壊寸前の林の方を横目でみた。

「確かに、いったい誰が俺を? って、おいっ! ヴァウロイ、林の方に誰かいるのか?」

 そう言うと林の方を向こうとする。

「エリュード、待つニャ! 気づかないフリしてた方がいいのニャ」

「なるほど。悟られずに、相手の尻尾をつかむってことだな」

「ん〜、そんなまどろっこしいことをするくらいなら、ウチの能力を使えば早いんじゃないのかな?」

 そう言われヴァウロイとエリュードは、美鈴の方に視線を向けた。

「そういや、その手があったな」

「ただ、上手くこの場にあったいい文字が出ないと失敗するのニャ」

「うん。だけどこれが一番、手っ取り早いと思う」

 真剣な表情で美鈴は、エリュードとヴァウロイの隙間から林の方を覗きみる。

「分かったニャ。もし失敗したら、ボクがサポートするのニャ」

「いや、俺がちゃんとフォローするから大丈夫だっ!」

 ヴァウロイとエリュードは、美鈴が必ず失敗すると思い林の物陰に隠れている者にみえないように準備を始めた。

「えっと……あのねぇ、ハァ、まあいっかぁ」

 自分が信用されていないことに呆れ果て深い溜息をつく。

 そしてその後、美鈴は能力を使うため準備を始める。



 一方、林の方では……。木々に隠れエリュードを監視する者は、美鈴たちの行動が急に変わり不信に思いどうしたのかと不思議に思った。

(気のせいか? エリュードたちの周りの空気が、急に変わったように感じる。何をしようとしている?)

 そう思い美鈴たちが何をしようとしているのか警戒しつつその後も監視を続ける。