エリュードは、なぜ美鈴を試したのか話し始めた。

 片やヴァウロイは、何食わぬ顔でその話を聞いている。

「なぜミスズを試したのか、それはな。女神に召喚された勇者が、どんだけ強いかみてみたかったからだ」

「それだけのためにウチを試した? って、おい!?」

 そのあとエリュードに『あり得ないだろう』と言おうとした。だが、その言葉が声にならず身を乗り出しツッコミを入れるだけにとどまる。

「悪い悪い。だが、それだけの理由でもない。もしミスズが強くて信頼できるヤツだったら、頼みたいことがあったんだ」

「頼みって?」

「俺と手を組まないか?」

 そう言い両手で美鈴の手を握りしめた。

 美鈴の顔が、なぜか赤くなる。そう元々男性に免疫がなく、ましてや手を握られたことなどなかったからだ。

「あ、あのぉ。ウ、ウチは大丈夫だけど。ヴァウロイに聞かないと」

「ヴァウロイ? もしかして、ミスズの側にいるヤツか?」

 エリュードは美鈴をみたあと、ヴァウロイの方を向き指を差した。

「……。ボクは反対ニャ。恐らくご主人様も同じ意見だと思うのニャ」

「ほう、その様子じゃ。俺のことを知ってるみたいだな」

 エリュードはヴァウロイを鋭い眼光で睨みつける。

 ヴァウロイもまたエリュードを警戒しつつ、今にも飛びかかろうと牙を剥き出しにし爪を研ぎ澄ませていた。

「ちょっと待って。なんなの? 話がみえないんだけど」

「悪いミスズ。黙っててくれないか。恐らくコイツは魔族の使い魔だろう」

「だとしたら、どうするニャ!」

 先程までとは比べものにならないほどの魔力と威圧感が、ヴァウロイの全身を覆い始める。

「そんなの決まっている。捕まえて、お前のご主人様とやらに会わせてもらう」

「フッ、なるほどニャ。だけどボクはそう簡単に捕まるつもりはないニャ!」

 美鈴はヴァウロイとエリュードの態度が急に変わったため、どうしたらいいか分からなくなり混乱していた。

「いい加減にして! なんで急に、こうなったのよぉ〜!?」

 混乱しながらもヴァウロイとエリュードを止めないとと思い間に割って入る。

 だが今のヴァウロイとエリュードの耳には、美鈴の声が聞こえていないようだった。いや、聞こえてはいたが無視されていただけである。

(どうしよう。この様子だと、ヴァウロイとエリュードは敵対関係にあるみたいだけど。
 でもウチは、ヴァウロイとエリュードの両方に助けてもらってるしなぁ。どうしたらいいの?)

 そうこう美鈴が頭を悩ませている間、ヴァウロイとエリュードは言い合いながら互いに牽制し合っていた。