ここは野獣の住処と隣接するスマイレンの森の入口付近。

　岩陰に隠れながらエルフの男が透視魔法を使い野獣の住処の中の様子をみている。

「あの女、大丈夫なのか？　それに、あの翼の生えた生き物って誰かの使い魔なんじゃ。でもなんでこんな所にいるんだ？」

　エルフの男は美鈴のことが心配になってきた。

「どうする？　そうだなぁ。もう少しだけ様子をみてからにするか」

　そう言うと中の様子を見ながら、いつでも動けるように身構え体勢を整える。



　場所は戻り。野獣は美鈴が自分たちの後ろにいることに気づき、向きをかえ襲いかかろうとしていた。

　それをみた美鈴は即座に攻撃と単体を選んだ。その後スロットのボタンを押すとリールが回り始める。

(いくらなんでも、今度は大丈夫だよね)

　するとリールが止まり『建』という文字が表示された。

(『建』かぁ。……んーちょっと不安だけど、あの文字を組み合わせてみるか)

　そう思い天井に狙いを定め両手を真上に翳すと、

　《建物皆無!!》

　と言い放った。

　それと同時に、今まであった野獣の住処である建物が目の前からパッと一瞬で消える。

　野獣たちは今まであった建物が消えたため、何が起きたのか分からず混乱した。

　自分でやったことにも関わらず美鈴は、何が起きたのか分からなくなり立ちすくんだ。

「ミスズ。ボーっとしている場合じゃないのニャ。今の内に森に逃げるニャ」

「あっ！　うん、そうだね」

　美鈴は野獣たちに気づかれる前に森へと駆けだす。ヴァウロイはフワフワ浮きながらあとを追いかける。

　だが細身の野獣がそれに気づき叫んだ。

「おい！　ヒューマンの女が森に逃げたぞ!?」

　すると野獣たちは我に返り美鈴たちを追った。

　それを森の岩陰でみていたエルフの男は、

「ヒュー。こりゃ助けた方が良さそうだな」

　そう言いエルフの男は弓を持つと、美鈴たちとそれを追いかける野獣たちを待ち構える。

　美鈴とヴァウロイは、そのことを知らないまま森の方へと向かう。

「ミスズ。野獣に気づかれたみたいニャ！」

「うわぁ〜、どうすんのよぉ。気づくのが早すぎるよぉぉ〜」

　そう叫びながら猛ダッシュで森へと向かったのだった。