呼び出した颯馬を「この嘘つき」と散々責めて、だけど心の中ではめちゃくちゃに感謝して。

 そしてそれから数ヶ月後──

「じゃあまたな、咲也。英語ペラペラになって帰ってくるから」

 と言って、颯馬はニューヨークへと発った。

 高校を卒業しても変わらずに無邪気に手を振ってきた彼へ、俺も今回くらいはと振り返した。

 ニューヨークの絵は、俺がもらった。
 気軽には行けやしない、颯馬がいる街を側に置いておくことで、少しは彼と過ごしている気分になる。

「元気にしてっかな、颯馬」

 そうひとりごちて、俺は今日も、大好きな絵を描いている。