「ねぇ、今年のクリスマスは雪が降るんだって」
私は彼と揺られる電車の中で、明日の天気予報を見て笑った。
「じゃあホワイトクリスマスだな」
彼も、少し浮かれた顔つきで笑った。
数十年前はブラッククリスマスというものがあった。でもそれは六十年目を最後に、それは無くなったみたいだけど。
「星矢。明日、楽しみだね」
「うん。琴菜は寒がりだから、ちゃんと暖かい服装で来いよ」
駅の古時計で待ち合わせをするクリスマス。
彼はきっと覚えていない。ただ彼女とデートをする、普通のクリスマスだと思っている。
前世と同じ名前で、同じ制服を揺らしながら、あのころとは違う幸せな関係性で。
暖かくて幸せで、普通で特別なクリスマスを、明日、君と。