「これは中々……大変だな、っと」
周りには腰の高さまで生い茂る草原。
また、その間を縫うかのように、高い木々が立ち並ぶ。
進むだけでも大変だ。
でもこれ以上は……。
「うーん」
「いてっ。エアル?」
「あ、ごめん」
急に立ち止まったことで、後ろにぴったりとくっ付いてたシャーリーが俺に頭をぶつける。
「ううん。大丈夫だけど、何かあったの?」
「そうなんだよ。見てくれ」
「んー?」
そんな彼女を隣に来るよう手で招く。
俺が立ち止まったのは、この先の景色を見てだ。
「うわあ! すっごいね」
「これはますます大変そうだぞ」
今までは腰ほどまでだった草原。
それが、この先はすでに俺の身長を超えるほどだ。
もはや“草原”と言って良いのかすら分からない。
当然、それに比例するように木々も高くなる。
「どうするの」
「手はある。あるんだけど……」
「?」
「果たして勝手に切り刻んで良いものか……」
正直、今まで頑張って進んできたエリアも魔法で周囲を刈っていけば、簡単に進んでこれた。
でも、勝手にそんなことをしていいのかなあ。
なんて考えて躊躇っていた。
それで、この森の主とかに目を付けられると面倒だしね。
「どうしようか……。――!?」
そんな時、とっさに感じる巨大な爆弾のようなもの。
常に張り巡らせている『魔力探知』に引っかかったのだ。
「エアル? 何かあった?」
シャーリーはまだ感じ取っていない。
『魔力探知』の範囲は鍛え方によって全然範囲が違うからだ。
それより、これは……巨大な魔力の塊か!?
「冗談だろ、デカすぎるぞ!?」
莫大な量の魔力。
まるで「我はここにいるぞ」と言わんばかりの、災害のようなとてつもない魔力の塊だ。
距離は……まだ遠いか。
いや、そうでもない?
「……!」
違う!
動きが速すぎるんだ!
それに、真っ直ぐこっちに迫ってくる!
「シャーリー! 下がって!」
「え!?」
横目で確認しながら、シャーリーを下がらせる。
もう悩んでいる悩んでいる場合じゃない。
すでに緊急事態だ。
「──風よ」
両手に宿らせた、小さな台風のようなもの。
それをかまいたちの要領で展開し、周囲の草原を切り刻む。
「……よし」
視界は開けた。
これで、この何かを迎え撃つ!
「来るなら来い!」
正直、この膨大な魔力量の持ち主に何か出来るとも思えない。
けど俺だって、魔法の数や質で言えば自信がある。
「俺はここだ!」
普段は抑えている魔力を一気に放出した。
居場所を知らせ、あえて挑発するためだ。
まあ、これは自分を奮い立たせるためでもあるけどね。
さあ、どう出る?
「……って、消えた?」
だが途中で、それは『魔力探知』から消える。
いや違う!
速すぎて追えなかったんだ!
「上か! くっ……!」
「きゃっ!」
シャーリーを再び抱え、後方に回避する。
その次の瞬間、ドガアっと轟音を立てながらそれは現れた。
「な、なんだこいつ……」
臨戦態勢を取りながら、思わずそんな言葉がこぼれる。
俺はその存在を見上げながら、固まってしまっていた。
「……っ」
見た目は、狼のように四足歩行で構える獣。
だが、ただのそれではないのは明らかだ。
大きな体躯を覆うふさふさな白銀の体毛。
こちらを睨むような鋭い眼光。
神聖さすら感じる身に纏う圧倒的なオーラ。
頭に浮かんだのは、はるか昔に存在したとされる伝説上の生き物。
「まさか、フェンリルなのか……?」
「……」
魔物が魔力を持った姿が、魔獣。
だが、魔獣の中でも一線を画す最上級たる存在を『神獣』と呼ぶ。
間違いない。
今目の前にいるのは、そんな神獣が一匹──『フェンリル』。
「……」
「――ッ!」
フェンリルが一歩前に出ると、俺は一歩下がる。
さっきの速さから推測すれば、今の距離は無いに等しい。
念のため、周りには三重の魔法防御壁を張っているが、こんなのでは役に立つとは思えない。
そう考えていた時。
『……ン』
「え?」
ふとどこかから声が聞こえた。
チラリと後方のシャーリーを見るも、首をぶんぶんと横に振るだけ。
じゃあ今のは……。
『……ゲン』
「!」
フェンリルが喋ったのか!
というか、不思議とこの子……。
待てよ、もしかして。
「なあ」
「ちょ、エアル!?」
俺から前に出ると、シャーリーが声を上げる。
またそんな俺に反応して、フェンリルも前に出た。
『ヴオォォッ!』
「エアルー!」
その一瞬すら感じない間に、俺の視界は真っ暗になった──。
周りには腰の高さまで生い茂る草原。
また、その間を縫うかのように、高い木々が立ち並ぶ。
進むだけでも大変だ。
でもこれ以上は……。
「うーん」
「いてっ。エアル?」
「あ、ごめん」
急に立ち止まったことで、後ろにぴったりとくっ付いてたシャーリーが俺に頭をぶつける。
「ううん。大丈夫だけど、何かあったの?」
「そうなんだよ。見てくれ」
「んー?」
そんな彼女を隣に来るよう手で招く。
俺が立ち止まったのは、この先の景色を見てだ。
「うわあ! すっごいね」
「これはますます大変そうだぞ」
今までは腰ほどまでだった草原。
それが、この先はすでに俺の身長を超えるほどだ。
もはや“草原”と言って良いのかすら分からない。
当然、それに比例するように木々も高くなる。
「どうするの」
「手はある。あるんだけど……」
「?」
「果たして勝手に切り刻んで良いものか……」
正直、今まで頑張って進んできたエリアも魔法で周囲を刈っていけば、簡単に進んでこれた。
でも、勝手にそんなことをしていいのかなあ。
なんて考えて躊躇っていた。
それで、この森の主とかに目を付けられると面倒だしね。
「どうしようか……。――!?」
そんな時、とっさに感じる巨大な爆弾のようなもの。
常に張り巡らせている『魔力探知』に引っかかったのだ。
「エアル? 何かあった?」
シャーリーはまだ感じ取っていない。
『魔力探知』の範囲は鍛え方によって全然範囲が違うからだ。
それより、これは……巨大な魔力の塊か!?
「冗談だろ、デカすぎるぞ!?」
莫大な量の魔力。
まるで「我はここにいるぞ」と言わんばかりの、災害のようなとてつもない魔力の塊だ。
距離は……まだ遠いか。
いや、そうでもない?
「……!」
違う!
動きが速すぎるんだ!
それに、真っ直ぐこっちに迫ってくる!
「シャーリー! 下がって!」
「え!?」
横目で確認しながら、シャーリーを下がらせる。
もう悩んでいる悩んでいる場合じゃない。
すでに緊急事態だ。
「──風よ」
両手に宿らせた、小さな台風のようなもの。
それをかまいたちの要領で展開し、周囲の草原を切り刻む。
「……よし」
視界は開けた。
これで、この何かを迎え撃つ!
「来るなら来い!」
正直、この膨大な魔力量の持ち主に何か出来るとも思えない。
けど俺だって、魔法の数や質で言えば自信がある。
「俺はここだ!」
普段は抑えている魔力を一気に放出した。
居場所を知らせ、あえて挑発するためだ。
まあ、これは自分を奮い立たせるためでもあるけどね。
さあ、どう出る?
「……って、消えた?」
だが途中で、それは『魔力探知』から消える。
いや違う!
速すぎて追えなかったんだ!
「上か! くっ……!」
「きゃっ!」
シャーリーを再び抱え、後方に回避する。
その次の瞬間、ドガアっと轟音を立てながらそれは現れた。
「な、なんだこいつ……」
臨戦態勢を取りながら、思わずそんな言葉がこぼれる。
俺はその存在を見上げながら、固まってしまっていた。
「……っ」
見た目は、狼のように四足歩行で構える獣。
だが、ただのそれではないのは明らかだ。
大きな体躯を覆うふさふさな白銀の体毛。
こちらを睨むような鋭い眼光。
神聖さすら感じる身に纏う圧倒的なオーラ。
頭に浮かんだのは、はるか昔に存在したとされる伝説上の生き物。
「まさか、フェンリルなのか……?」
「……」
魔物が魔力を持った姿が、魔獣。
だが、魔獣の中でも一線を画す最上級たる存在を『神獣』と呼ぶ。
間違いない。
今目の前にいるのは、そんな神獣が一匹──『フェンリル』。
「……」
「――ッ!」
フェンリルが一歩前に出ると、俺は一歩下がる。
さっきの速さから推測すれば、今の距離は無いに等しい。
念のため、周りには三重の魔法防御壁を張っているが、こんなのでは役に立つとは思えない。
そう考えていた時。
『……ン』
「え?」
ふとどこかから声が聞こえた。
チラリと後方のシャーリーを見るも、首をぶんぶんと横に振るだけ。
じゃあ今のは……。
『……ゲン』
「!」
フェンリルが喋ったのか!
というか、不思議とこの子……。
待てよ、もしかして。
「なあ」
「ちょ、エアル!?」
俺から前に出ると、シャーリーが声を上げる。
またそんな俺に反応して、フェンリルも前に出た。
『ヴオォォッ!』
「エアルー!」
その一瞬すら感じない間に、俺の視界は真っ暗になった──。