「「「すみませんでした」」」
目の前には、土下座をかました化け狐族の皆さん。
「そういう事情なら大丈夫ですから! どうかお気になさらず、頭を上げてください」
今しがた、俺たちに矢を放ってきていた三人だ。
彼らが襲ってきた理由。
それは単に侵入者を排除しようとしたのではない。
どうやら俺たちが『フェンリルを連れていたから』らしい。
「申し訳ございません」
「お連れ様になんと無礼を」
それもそのはず、彼らはフェンリルを崇拝していたのだ。
ここにきて初めて『神獣フェンリル様』の威厳を見られた気がする。
だけど、フクマロは彼らの事を知らないよう。
何がどうなってフェンリルが崇拝されているのかは、まだ分からない。
その辺はこれから聞いてみるつもりだ。
とにかく、これ以上は敵対することがなさそうなので良かった。
「こんなところで話すのも悪いですので、どうか里内へ」
「ありがとうございます」
こうして、俺たちは無事に里内へ入ることができた。
「お、おお。これはまた……」
「雰囲気あるわね……」
俺に続いて、シャーリーも思わず声を漏らす。
しばらく奥に歩くと、里の姿が徐々に見え始めたんだ。
「幻想的だな……」
里へと続く道には、街灯のような明かりが点いている。
提灯みたいな形をした物が、直接木々に吊り下げられているんだ。
「家もすごいわよ」
整理された道と区画。
エルフの里よりもしっかりと作り込まれた木造建築。
それがまた、色んな意味で俺の目を惹く。
なんたって見た事のある形だからだ。
俺は思わず声に出していた。
「和風の家……?」
二階建ての構造に、三角の屋根。
チラリと中に見えるのは、襖に茶室など、まさに日本家屋と言える。
控えめに装飾されており、京都や鎌倉の古民家を思い浮かばせる『和』の家々。
派手さはないが、どこか厳かさがある。
「どういうことだよ……」
この異世界に『和風』という言葉は存在しない。
でも、ニホン出身の俺にはそう思わせる雰囲気が漂う。
周りの森の風景も相まって、侘び寂びというか、とにかく趣がある里だった。
「なんで……」
情景には反して、俺の頭は混乱するばかり。
たしかに『化け狐』も和を想起させる種族ではあるが……そんなのアリか?
「気に入ってもらえましたか?」
「というより、正直驚いています」
化け狐さんの問いにも、少し気後れ気味に返事をする。
俺の周りは「おおー」となんとなくすごいとしか感じていないけど、この光景は俺にとっては不思議でたまらない。
この先、何かとんでもないことが待っているのではないか。
そんな思いが俺の心を大きく占める。
そんな中──
「兵長!」
「どうした」
案内をしてくれている人に、里内から来た人が声を掛ける。
俺たちが相手をしていたのは『兵長』さんらしい。
「姫様の容態が!」
「……! 分かった、すぐ行く!」
どうやら里内で何かあったみたいだ。
兵長さんは焦った顔を隠せないまま、俺たちに振り返った。
「皆さん、すみませんが案内は他の者共に──」
「いや」
だけどそれには、フクマロが口を開く。
「良くない事が起きているのであろう。ならばこのエアルに相談するが良い。こやつは魔法に精通しておる」
「フェンリル様……。ほ、本当ですか?」
「我が嘘をつくとでも?」
フクマロの奴、なんだかんだ崇拝される側になりきってんじゃねえか。
でも、その恩恵はやはり大きいらしく。
「分かりました。どうかご同行願います」
化け狐さん達はすぐに助けを求めて来た。
こうなった以上、放っておくことはできない。
「もちろんです」
俺たちは里の奥地へと足を進めた。
目の前には、土下座をかました化け狐族の皆さん。
「そういう事情なら大丈夫ですから! どうかお気になさらず、頭を上げてください」
今しがた、俺たちに矢を放ってきていた三人だ。
彼らが襲ってきた理由。
それは単に侵入者を排除しようとしたのではない。
どうやら俺たちが『フェンリルを連れていたから』らしい。
「申し訳ございません」
「お連れ様になんと無礼を」
それもそのはず、彼らはフェンリルを崇拝していたのだ。
ここにきて初めて『神獣フェンリル様』の威厳を見られた気がする。
だけど、フクマロは彼らの事を知らないよう。
何がどうなってフェンリルが崇拝されているのかは、まだ分からない。
その辺はこれから聞いてみるつもりだ。
とにかく、これ以上は敵対することがなさそうなので良かった。
「こんなところで話すのも悪いですので、どうか里内へ」
「ありがとうございます」
こうして、俺たちは無事に里内へ入ることができた。
「お、おお。これはまた……」
「雰囲気あるわね……」
俺に続いて、シャーリーも思わず声を漏らす。
しばらく奥に歩くと、里の姿が徐々に見え始めたんだ。
「幻想的だな……」
里へと続く道には、街灯のような明かりが点いている。
提灯みたいな形をした物が、直接木々に吊り下げられているんだ。
「家もすごいわよ」
整理された道と区画。
エルフの里よりもしっかりと作り込まれた木造建築。
それがまた、色んな意味で俺の目を惹く。
なんたって見た事のある形だからだ。
俺は思わず声に出していた。
「和風の家……?」
二階建ての構造に、三角の屋根。
チラリと中に見えるのは、襖に茶室など、まさに日本家屋と言える。
控えめに装飾されており、京都や鎌倉の古民家を思い浮かばせる『和』の家々。
派手さはないが、どこか厳かさがある。
「どういうことだよ……」
この異世界に『和風』という言葉は存在しない。
でも、ニホン出身の俺にはそう思わせる雰囲気が漂う。
周りの森の風景も相まって、侘び寂びというか、とにかく趣がある里だった。
「なんで……」
情景には反して、俺の頭は混乱するばかり。
たしかに『化け狐』も和を想起させる種族ではあるが……そんなのアリか?
「気に入ってもらえましたか?」
「というより、正直驚いています」
化け狐さんの問いにも、少し気後れ気味に返事をする。
俺の周りは「おおー」となんとなくすごいとしか感じていないけど、この光景は俺にとっては不思議でたまらない。
この先、何かとんでもないことが待っているのではないか。
そんな思いが俺の心を大きく占める。
そんな中──
「兵長!」
「どうした」
案内をしてくれている人に、里内から来た人が声を掛ける。
俺たちが相手をしていたのは『兵長』さんらしい。
「姫様の容態が!」
「……! 分かった、すぐ行く!」
どうやら里内で何かあったみたいだ。
兵長さんは焦った顔を隠せないまま、俺たちに振り返った。
「皆さん、すみませんが案内は他の者共に──」
「いや」
だけどそれには、フクマロが口を開く。
「良くない事が起きているのであろう。ならばこのエアルに相談するが良い。こやつは魔法に精通しておる」
「フェンリル様……。ほ、本当ですか?」
「我が嘘をつくとでも?」
フクマロの奴、なんだかんだ崇拝される側になりきってんじゃねえか。
でも、その恩恵はやはり大きいらしく。
「分かりました。どうかご同行願います」
化け狐さん達はすぐに助けを求めて来た。
こうなった以上、放っておくことはできない。
「もちろんです」
俺たちは里の奥地へと足を進めた。