「遊ぶぞ、エアル!」
ノリノリなドラノアに連れられ、俺は野外へと出てきた。
言う事を聞かずに一帯を燃やされても困るしな。
「遊ぶのはいいけど、何して?」
「うーん……あ! それは何をするものなの!」
「ああ、これはボールだよ」
そうして、ドラノアは足元に転がっていたボールに目を付けた。
たまに考え事をする時に跳ねさせていたんだ。
「それで遊ぼわよ!」
「わかったよ。じゃあこんな感じで返してみな。それっ」
俺はボールをポーンとドラノアの方に弾く。
バレーボールの要領だね。
「おおっ! そ~れっ!」
「──ぐはぁ!」
ドゴオッ! パーン!
俺の打ったボールは隕石がごとく打ち返され、俺の顔面に当たり破裂した。
「し、死にかけた……」
とっさの『魔力結界』、加えて全身『身体強化』でなんとか致命傷で済む。
「ルシオ! 次! 次の“ぼーる”!」
「そういう遊びじゃないから!」
絶対にボールを破裂させるゲームだと勘違いしてるだろ。
そうだよ、あんな可愛い見た目でも中身は立派な最強種族ドラゴン。
人の姿でも力は健在か……。
「えー、つまんない!」
「じゃ、じゃあこれならどうだ!」
収納魔法から取り出したのは『将棋セット』。
「おおっ!」
それに目を輝かせたドラノア。
シュバッと音速で俺の対面に正座する。
「ん~? なにこれ、絵が書いてあるみたいだけど?」
「そうなんだよ。これはな──」
将棋とは言っても、少し異世界風。
本来漢字が書かれる場所には、『魔物』や『兵士』などの種族の絵に変えて、分かりやすくしてある。
ルールはまるっきり一緒だ。
これなら怪我をすることもないだろう!
「うん! 難しいけどなんとなく分かったわ!」
「おー、理解が早いな」
「じゃあ、あたしから!」
「──ごふっ!」
ダァン! と歩兵を将棋盤に叩きつけたドラノア。
そのあまりの強さにそのまま盤を破壊。
真っ二つになった台の片側が、見事に俺を顎から突き上げる。
「ああエアル! ごめんなさい!」
「いててて……。だ、大丈夫だ」
大丈夫ではないけど。
しかも将棋盤も壊れてしまったし。
「次の盤は!」
「あ、ああ……って、だから壊すゲームじゃねええー!」
この時点で察してはいた。
だが、この無邪気な暴走列車を止められるはずもなく……。
その後もいくつかドラノアと戯れようと試みる。
しかし、その圧倒的パワーの前に遊具は全壊。
治癒魔法があるからいいものの、俺が毎度死にかけるハメになった。
「あはは! 楽しいね! エアル!」
「お、俺は楽しくねえ……ぐはっ」
「え?」
だが、何気なく発してしまった言葉が傷つけてしまったよう。
『楽しく……ない?』
「……ハッ! めーっちゃくちゃ楽しいぞー。あははー」
「良かったわ!」
楽しいか楽しくないかの二択で言えば、実は楽しい。
ただ、その代償が「死にかける」という重さなだけだ。
誰か助けてくれ……と心の中で叫んだ頃。
「エアルー。ドラノアー」
「ん?」
「お?」
夕飯の仕込みを終わったらしいリーシャが、コテージの扉を開いて声を掛けてくる。
「私はそろそろ湯に入るけど、ドラノアはどうする?」
「む、湯とは?」
ドラノアは首を傾けた。
そうか、温泉のことは知らないか。
「温かくて気持ちの良い施設のことだよ。身も心もポカポカさ」
「ふーん……」
何やら考え込んだドラノア。
そうして俺に指を差した。
「じゃあエアルと入る!」
「えっ!」
「なっ!?」
かと思えば、とんでもないことを言いだした。
それにはすかさずシャーリーが口を挟む。
「ちょ、ちょっと! それはどうなのよ!」
「そ、そうだぞ~ドラノア。温泉は裸で入るところなんだ。だから、その……」
だが、そんな常識がドラノアに通用するはずもなく。
「関係ないわ! あたしはエアルと入りたいの!」
「だからダメよ!」
「シャーリーには聞いてないもん!」
シャーリーが必死に止めようとするも、ドラノアは聞く様子がない。
それから何かを思いついたのか、ニヤリとした表情のドラノアが言い放つ。
「でもエアルじゃないと、あたしを抑えられないんじゃない?」
「!」
「エアルならともかく、ただの人間にはあたしを止めるのは荷が重い気がするわね~」
「それは、たしかに……」
ドラノアの奴、自分が暴走機関車だと自覚していたのかよ。
しかも今度はそれを利用しようとしている。
やはり侮れない、最強種族ドラゴン。
「むむ……」
その言葉にはやや考え込むシャーリー。
やがて出したのは、
「じゃあ、私も一緒に入るわ!」
「シャーリー!?」
とんでもない答えだった。
「なによ、文句でもあるの! ただ、エアルが変なことしないか見張ってるだけだから!」
「いやいや」
さらには後方からも声が聞こえる。
「そういうことならわたしも一緒に!」
「!?」
いきなり挙手して現れたのはスフィル。
今の会話を聞いていたらしい。
「じゃあ我も」
「お前もかよ!」
ついにはフクマロまで。
いつの間にか俺の周りが賑やかになっている。
「じゃあみんなで入るわよ!」
「もう好きにしろー!」
そうして、なぜか先頭を切って行ったドラノアに付いて行く形に。
波乱のお風呂へ続く……。
ノリノリなドラノアに連れられ、俺は野外へと出てきた。
言う事を聞かずに一帯を燃やされても困るしな。
「遊ぶのはいいけど、何して?」
「うーん……あ! それは何をするものなの!」
「ああ、これはボールだよ」
そうして、ドラノアは足元に転がっていたボールに目を付けた。
たまに考え事をする時に跳ねさせていたんだ。
「それで遊ぼわよ!」
「わかったよ。じゃあこんな感じで返してみな。それっ」
俺はボールをポーンとドラノアの方に弾く。
バレーボールの要領だね。
「おおっ! そ~れっ!」
「──ぐはぁ!」
ドゴオッ! パーン!
俺の打ったボールは隕石がごとく打ち返され、俺の顔面に当たり破裂した。
「し、死にかけた……」
とっさの『魔力結界』、加えて全身『身体強化』でなんとか致命傷で済む。
「ルシオ! 次! 次の“ぼーる”!」
「そういう遊びじゃないから!」
絶対にボールを破裂させるゲームだと勘違いしてるだろ。
そうだよ、あんな可愛い見た目でも中身は立派な最強種族ドラゴン。
人の姿でも力は健在か……。
「えー、つまんない!」
「じゃ、じゃあこれならどうだ!」
収納魔法から取り出したのは『将棋セット』。
「おおっ!」
それに目を輝かせたドラノア。
シュバッと音速で俺の対面に正座する。
「ん~? なにこれ、絵が書いてあるみたいだけど?」
「そうなんだよ。これはな──」
将棋とは言っても、少し異世界風。
本来漢字が書かれる場所には、『魔物』や『兵士』などの種族の絵に変えて、分かりやすくしてある。
ルールはまるっきり一緒だ。
これなら怪我をすることもないだろう!
「うん! 難しいけどなんとなく分かったわ!」
「おー、理解が早いな」
「じゃあ、あたしから!」
「──ごふっ!」
ダァン! と歩兵を将棋盤に叩きつけたドラノア。
そのあまりの強さにそのまま盤を破壊。
真っ二つになった台の片側が、見事に俺を顎から突き上げる。
「ああエアル! ごめんなさい!」
「いててて……。だ、大丈夫だ」
大丈夫ではないけど。
しかも将棋盤も壊れてしまったし。
「次の盤は!」
「あ、ああ……って、だから壊すゲームじゃねええー!」
この時点で察してはいた。
だが、この無邪気な暴走列車を止められるはずもなく……。
その後もいくつかドラノアと戯れようと試みる。
しかし、その圧倒的パワーの前に遊具は全壊。
治癒魔法があるからいいものの、俺が毎度死にかけるハメになった。
「あはは! 楽しいね! エアル!」
「お、俺は楽しくねえ……ぐはっ」
「え?」
だが、何気なく発してしまった言葉が傷つけてしまったよう。
『楽しく……ない?』
「……ハッ! めーっちゃくちゃ楽しいぞー。あははー」
「良かったわ!」
楽しいか楽しくないかの二択で言えば、実は楽しい。
ただ、その代償が「死にかける」という重さなだけだ。
誰か助けてくれ……と心の中で叫んだ頃。
「エアルー。ドラノアー」
「ん?」
「お?」
夕飯の仕込みを終わったらしいリーシャが、コテージの扉を開いて声を掛けてくる。
「私はそろそろ湯に入るけど、ドラノアはどうする?」
「む、湯とは?」
ドラノアは首を傾けた。
そうか、温泉のことは知らないか。
「温かくて気持ちの良い施設のことだよ。身も心もポカポカさ」
「ふーん……」
何やら考え込んだドラノア。
そうして俺に指を差した。
「じゃあエアルと入る!」
「えっ!」
「なっ!?」
かと思えば、とんでもないことを言いだした。
それにはすかさずシャーリーが口を挟む。
「ちょ、ちょっと! それはどうなのよ!」
「そ、そうだぞ~ドラノア。温泉は裸で入るところなんだ。だから、その……」
だが、そんな常識がドラノアに通用するはずもなく。
「関係ないわ! あたしはエアルと入りたいの!」
「だからダメよ!」
「シャーリーには聞いてないもん!」
シャーリーが必死に止めようとするも、ドラノアは聞く様子がない。
それから何かを思いついたのか、ニヤリとした表情のドラノアが言い放つ。
「でもエアルじゃないと、あたしを抑えられないんじゃない?」
「!」
「エアルならともかく、ただの人間にはあたしを止めるのは荷が重い気がするわね~」
「それは、たしかに……」
ドラノアの奴、自分が暴走機関車だと自覚していたのかよ。
しかも今度はそれを利用しようとしている。
やはり侮れない、最強種族ドラゴン。
「むむ……」
その言葉にはやや考え込むシャーリー。
やがて出したのは、
「じゃあ、私も一緒に入るわ!」
「シャーリー!?」
とんでもない答えだった。
「なによ、文句でもあるの! ただ、エアルが変なことしないか見張ってるだけだから!」
「いやいや」
さらには後方からも声が聞こえる。
「そういうことならわたしも一緒に!」
「!?」
いきなり挙手して現れたのはスフィル。
今の会話を聞いていたらしい。
「じゃあ我も」
「お前もかよ!」
ついにはフクマロまで。
いつの間にか俺の周りが賑やかになっている。
「じゃあみんなで入るわよ!」
「もう好きにしろー!」
そうして、なぜか先頭を切って行ったドラノアに付いて行く形に。
波乱のお風呂へ続く……。