「ギャオオオオオオォォォ……!!』
ドラゴンが産声を上げ、その凄まじい衝撃が伝わってくる。
これはまずい……!
何が来ると直感した俺は、とっさに腕を前方に向けた。
「『魔法結界』!!」
みんなを守るべく、魔力の結界を展開する。
──しかし、
「なっ!? うわああああっ!」
ガラスが派手に砕け散るような音。
それと共に、魔法結界はなんとも軽々しく打ち破られる。
バカな!
大砲ですら優に防ぐ結界だぞ!?
それを産声だけでぶっ壊すだって!?
「ぐうっ……!」
なんて咆哮!
なんて魔力の圧なんだ!
「……ハァ、ハァ」
咆哮が収まったタイミングで状況を確認する。
森の出身者は何かしら防ぐ手段を持っているだろう。
だけど、シャーリーだけは間違いなく危険だ。
俺は声を上げた。
「フクマロ! シャーリーを守ってくれ! シャーリーは毛皮から出るな!」
「承知!」
「エアル! 気を付けてね!」
フクマロはシャーリーを守ることに徹してもらう。
あの戦力は惜しいが、彼女を守れるのはあのモフモフだけだ。
「頼むぞ!」
「了解した!」
気休め程度だが、フクマロの上から結界をかけておく。
それからバッとフクマロは戦場に端に寄った。
そして──
「グルルゥゥ……」
「……!」
唸るような声と共に、ドラゴンがゆっくりと目を開いた。
俺たちが警戒から動けないでいる中、ドラゴンは周りをぐるりと見渡す。
「グルゥ……」
そうして、ふと上を見上げた。
「これは……!」
飛び立つ準備をしているのか?
そんな俺の予想は当たり──ドラゴンが翼を一振り。
「グルォォォ……!!」
「──うわあっ!」
「きゃあ!」
「くうう!」
ただ飛び立っただけの衝撃。
それがとっさに張った『魔力結界』を簡単にぶち壊して、俺に届く。
先程の衝撃を鑑みて、さらに三重に張った『魔力結界』。
それを全て簡単にぶち壊して、その圧は俺たちに届く。
これが本気で暴れるとなると……
「ギャオオオオオォォォ……!!』
やばいどころの騒ぎじゃない!
下手をすれば、この辺一体が火事や衝撃で消滅する!
だが俺たちが驚き焦る中で、テトラさんが声を上げた。
「ドラゴンさん! うちです! テトラです!」
「グルゥ」
「……! ドラゴンさん!」
思いの外テトラさん呼びかけが通じたのか、ドラゴンが翼を広げて地上へと降りてくる。
──だが、俺はすぐにその異変に気づいた。
「まずい! そこから離れろ!」
「えっ──」
「ギャオオオオ!」
ドラゴンはテトラさんに思いっきり炎を吹く。
くそっ、間に合え!
ドンッ!
固めた魔力を空気砲のように押し出し、テトラさんを吹き飛ばした。
少し乱暴だが、テトラさんは事なきを得る。
だが、それを機にドラゴンは暴走を始める。
「ヴォアアアアッ!」
「これは……!」
空中からそこら中に炎を吐き始めたのだ。
「まじかよ……」
モグりんの属性魔法では全くダメージを受けていなかった森の木々。
人間界のそれとは違って、一本一本が濃い魔力を持っているからだ。
だがそれが、ドラゴンの炎によって燃えていく。
単純に火力が上回っているんだ。
「あ、あ……」
テトラさんは、それをただ見上げるばかり。
「こんなはずじゃなかったのに……。うちは、うちはただ──」
「あぶない!」
さらに手を伸ばそうとするテトラさんを、ドラゴンは容赦なく襲う。
走り出していた俺は、次はテトラさんを抱きかかえてその場を離れる。
彼女を抱きかかえ、走りながら声をかける。
「気を確かに!」
「ご、ごめんなさい。すごくわがままというのは分かってる。でも、でもうちは……!」
震えているテトラさん。
だけど、言いたい事は分かる。
「あのドラゴンを助けたいんだろ?」
「……!」
驚き目を見開いたテトラさんは、強くうなずく。
「大丈夫。俺も手伝うよ」
「え?」
「あのドラゴンは、悪い奴じゃない」
俺は安心させるよう、観察から得ていた情報を伝える。
魔力の巡りを感じ取れば、自然と伝わってくる。
あんな速さで魔力が全身を駆け巡れば、たとえドラゴンであっても暴走にしてしまうに決まっている。
つまり、復活したばかりで力を抑えられていないだけ。
それがイライラに繋がってしまっているだけなんだ。
それを伝え終え、エルフィオさんの元でテトラさんを離す。
そこでハイエルフの二人も声を上げた。
今の説明を聞いていたようだ。
「だからってどうするんですか!」
「エアルちゃん!」
テトラさん同様、二人もこの事態に焦りの顔が見える。
言い伝えの通り……いや、もしかするとそれ以上の事態だろうからな。
けど、こんな時こそ冷静にだ。
どんな時も、焦った方が負ける。
それに俺にはもう考えがあったんだ。
「大丈夫。二人は落ち着いて俺の指示に従ってくれますか?」
「──! わかりました!」
「わかったわ。ここはあなたに任せるしかなさそうね」
自分では解決できないことを悟っていたのか、二人はすぐに了承してくれる。
「けどエアルちゃん、一体何をしようと言うの?」
「それはですね……」
エルフィオさんの問いに、今一度自分の中で考えをまとめる。
正直、これがドラゴンに通じるかは分からない。
それでも、前世であの効果を幾度となく実感した俺には、もしかしたらと希望を見出していた。
前世では、本当によくしてもらっていた。
あまりの気持ちよさに、俺は完全に虜になっていたからな。
イライラした時、ストレスが溜まった時、仕事帰りなど。
社畜だった俺がそこへ通った回数はすでに覚えていない。
そんな俺の秘策は──
「リラクゼーションだ!」
ドラゴンが産声を上げ、その凄まじい衝撃が伝わってくる。
これはまずい……!
何が来ると直感した俺は、とっさに腕を前方に向けた。
「『魔法結界』!!」
みんなを守るべく、魔力の結界を展開する。
──しかし、
「なっ!? うわああああっ!」
ガラスが派手に砕け散るような音。
それと共に、魔法結界はなんとも軽々しく打ち破られる。
バカな!
大砲ですら優に防ぐ結界だぞ!?
それを産声だけでぶっ壊すだって!?
「ぐうっ……!」
なんて咆哮!
なんて魔力の圧なんだ!
「……ハァ、ハァ」
咆哮が収まったタイミングで状況を確認する。
森の出身者は何かしら防ぐ手段を持っているだろう。
だけど、シャーリーだけは間違いなく危険だ。
俺は声を上げた。
「フクマロ! シャーリーを守ってくれ! シャーリーは毛皮から出るな!」
「承知!」
「エアル! 気を付けてね!」
フクマロはシャーリーを守ることに徹してもらう。
あの戦力は惜しいが、彼女を守れるのはあのモフモフだけだ。
「頼むぞ!」
「了解した!」
気休め程度だが、フクマロの上から結界をかけておく。
それからバッとフクマロは戦場に端に寄った。
そして──
「グルルゥゥ……」
「……!」
唸るような声と共に、ドラゴンがゆっくりと目を開いた。
俺たちが警戒から動けないでいる中、ドラゴンは周りをぐるりと見渡す。
「グルゥ……」
そうして、ふと上を見上げた。
「これは……!」
飛び立つ準備をしているのか?
そんな俺の予想は当たり──ドラゴンが翼を一振り。
「グルォォォ……!!」
「──うわあっ!」
「きゃあ!」
「くうう!」
ただ飛び立っただけの衝撃。
それがとっさに張った『魔力結界』を簡単にぶち壊して、俺に届く。
先程の衝撃を鑑みて、さらに三重に張った『魔力結界』。
それを全て簡単にぶち壊して、その圧は俺たちに届く。
これが本気で暴れるとなると……
「ギャオオオオオォォォ……!!』
やばいどころの騒ぎじゃない!
下手をすれば、この辺一体が火事や衝撃で消滅する!
だが俺たちが驚き焦る中で、テトラさんが声を上げた。
「ドラゴンさん! うちです! テトラです!」
「グルゥ」
「……! ドラゴンさん!」
思いの外テトラさん呼びかけが通じたのか、ドラゴンが翼を広げて地上へと降りてくる。
──だが、俺はすぐにその異変に気づいた。
「まずい! そこから離れろ!」
「えっ──」
「ギャオオオオ!」
ドラゴンはテトラさんに思いっきり炎を吹く。
くそっ、間に合え!
ドンッ!
固めた魔力を空気砲のように押し出し、テトラさんを吹き飛ばした。
少し乱暴だが、テトラさんは事なきを得る。
だが、それを機にドラゴンは暴走を始める。
「ヴォアアアアッ!」
「これは……!」
空中からそこら中に炎を吐き始めたのだ。
「まじかよ……」
モグりんの属性魔法では全くダメージを受けていなかった森の木々。
人間界のそれとは違って、一本一本が濃い魔力を持っているからだ。
だがそれが、ドラゴンの炎によって燃えていく。
単純に火力が上回っているんだ。
「あ、あ……」
テトラさんは、それをただ見上げるばかり。
「こんなはずじゃなかったのに……。うちは、うちはただ──」
「あぶない!」
さらに手を伸ばそうとするテトラさんを、ドラゴンは容赦なく襲う。
走り出していた俺は、次はテトラさんを抱きかかえてその場を離れる。
彼女を抱きかかえ、走りながら声をかける。
「気を確かに!」
「ご、ごめんなさい。すごくわがままというのは分かってる。でも、でもうちは……!」
震えているテトラさん。
だけど、言いたい事は分かる。
「あのドラゴンを助けたいんだろ?」
「……!」
驚き目を見開いたテトラさんは、強くうなずく。
「大丈夫。俺も手伝うよ」
「え?」
「あのドラゴンは、悪い奴じゃない」
俺は安心させるよう、観察から得ていた情報を伝える。
魔力の巡りを感じ取れば、自然と伝わってくる。
あんな速さで魔力が全身を駆け巡れば、たとえドラゴンであっても暴走にしてしまうに決まっている。
つまり、復活したばかりで力を抑えられていないだけ。
それがイライラに繋がってしまっているだけなんだ。
それを伝え終え、エルフィオさんの元でテトラさんを離す。
そこでハイエルフの二人も声を上げた。
今の説明を聞いていたようだ。
「だからってどうするんですか!」
「エアルちゃん!」
テトラさん同様、二人もこの事態に焦りの顔が見える。
言い伝えの通り……いや、もしかするとそれ以上の事態だろうからな。
けど、こんな時こそ冷静にだ。
どんな時も、焦った方が負ける。
それに俺にはもう考えがあったんだ。
「大丈夫。二人は落ち着いて俺の指示に従ってくれますか?」
「──! わかりました!」
「わかったわ。ここはあなたに任せるしかなさそうね」
自分では解決できないことを悟っていたのか、二人はすぐに了承してくれる。
「けどエアルちゃん、一体何をしようと言うの?」
「それはですね……」
エルフィオさんの問いに、今一度自分の中で考えをまとめる。
正直、これがドラゴンに通じるかは分からない。
それでも、前世であの効果を幾度となく実感した俺には、もしかしたらと希望を見出していた。
前世では、本当によくしてもらっていた。
あまりの気持ちよさに、俺は完全に虜になっていたからな。
イライラした時、ストレスが溜まった時、仕事帰りなど。
社畜だった俺がそこへ通った回数はすでに覚えていない。
そんな俺の秘策は──
「リラクゼーションだ!」