「て、転移魔法ー!?」
俺の言葉にシャーリーは、彼女史上一番の大仰天を見せた。
まあ転移魔法といえば、伝説的な魔法の中でも最上級。
もはや神話クラスの魔法だからな。
「うん、条件は揃ったと思う」
そんな神話クラスの転移魔法だが、実は理論は出来ている。
前世の、ニホンの「ライトノベル」からヒントを得てるんだ・
まあそれは言えるわけもないので隠しておくが、理論自体はそこまで難しいものじゃない。
簡単に考えると「今の場所」と「行きたい場所」の超正確な位置の把握が出来れば、転移は可能。
趣味にはぴったりな魔法だったので、一年半の苦節の内に理論は完成した。
では、今までどうしてやらかったのか。
問題は、転移に使うその“魔力量”だった。
人や物を場所を超えて送ろうと思うと、とんでもない魔力量が必要になる。
王国内でも空気中に漂う魔力だが、単なる趣味で一気に大量消費してしまっては、国民に何かしら影響があると思った。
この世界で言う、酸素不足みたいな状況になりかねないからね、
では、今はどうだろう。
この森に漂うは濃い濃~い魔力。
それでもかなりの量は必要だが、弊害をもたらすことなく使えると思う。
「でも、具体的にはどうやって?」
「うーん。説明すると難しいけど、聞く?」
「あ、やっぱりいいや」
「ぐぬ」
俺のオタク趣味全開な理論の方には、興味が無かったシャーリー。
ただ、これだけは付け加えておく。
「けど、今すぐに出来るってわけではないんだ。それなりに準備が必要だし」
「そうなのね。というより、神話クラスの魔法をほいほい使えた方が怖いわ」
ということで、ここには俺の準備した魔法陣を敷いておくだけにする。
転移魔法が完成した時には、ここへすぐ飛んでくることが出来るように。
俺は軽く準備を終えて、フクマロの方へ振り返った。
「じゃあ悪いけど、帰りも乗せてってくれる?」
「もちろんだ」
こうして、魚という食材をゲットして、俺たちはコテージへ帰った。
★
「よし、こんなもんか」
コテージに戻った後、俺は黙々と作業を行っていた。
色々と設備を追加するためにだ。
追加したのは、時計やキッチン、温泉に行くまでの直通の通路なんかもだね。
時計は陽の角度から計算した。
ちょうど十二時頃だったので、合わせやすかったのもラッキーだ。
そんな作業もとりあえず終わった。
ちょうどいい時間帯だし、そろそろお昼にしたいな。
「シャーリー? ……は、いないんだった」
俺が作業をしている間、シャーリーはフクマロと一緒に食材を採りに行ってくれている。
食材に「魚」が追加されたことで、さらに張り切って料理をするみたいだ。
相変わらず働き者さんだなあ。
「んー、じゃあ温泉でも行くか」
ということで、俺は温泉へ。
せっかくコテージから直通する通路も作ったんだ。
作業後だし、さっとシャワーを浴びておこう。
夕方また入るだろうが、家の隣にあんな最高の施設があるんだ。
何度入っても良いよね!
「おー、我ながら完璧っ!」
作った通路を自画自賛しながら、コテージから温泉へと向かう。
ほんの数歩の距離ではあるけど、もし雨が降ったら嫌だからね。
ってことで、作業の事を考えるのはここまでにして。
「いざ!」
スポポーン! と衣服を放り脱いでいざ入湯!
「って、……え?」
ざぱーんと入水しようとした瞬間、どこか気配を感じる。
いくつかあるスーパー銭湯の内、中央の一番大きな風呂。
その湯けむりの奥に、何やら人の影がするんだ。
「シャ、シャーリー?」
シャーリーだったら「えっち!」と追い出されるので聞いておく。
だが返事はない。
さらに、張り巡らせている魔力探知にも引っ掛からない。
彼女にはそこまでの魔法はできないはず。
「……」
だとしたら一体……?
俺は魔力で形作った剣を片手に、ちゃぷんと入水する。
じりじりとその影に近づく中で、何やらうめき声が聞こえた。
「うっ」
「──! 誰だ!」
少し聞こえた声の主に返す。
でも、やはり返事はない。
そうして、
「うーん……」
「……!」
次に聞こえたのは、うなるような声。
って待てよ。
この声、まさか……のぼせてる!?
「こうしちゃおけない!」
俺は瞬時に、全身に魔力を通わせ、水除けをしながら影に近づく。
そこには──
「……!?」
なんと、大胆にもサラサラの金髪を結んで上を見上げる、すごく美人さんがいた。
「……!?!?」
さらには、おっきなお胸を大胆に晒しながらお湯に浸かっている。
タオルは巻いておらず、両肘は背側の石に付いている状態だ。
それはもう強調されたお胸が……と、とにかくすごい光景だ。
というか、金髪に、この横に長い耳。
この人、もしかして……
「うーん……」
「!」
って、何ぼーっと考えてるんだ俺は!
女性は目をぐるぐるさせ、意識は朦朧とさせている。
このまま放っておくと危険だ!
「よいしょ!」
女性にはタオルを一枚かけ、俺の肩を貸すようにして急いでお湯から出る。
「!?」
小走りなので、すぐ隣では大きな二つの山があっちこっちに暴れる。
それでも俺は、歯を食いしばりながらなんとか目線を逸らした。
そんな欲望とも戦いながら、一先ず家に入ってすぐに彼女を横に寝かせた。
「このままではまずいな」
女性だし、何よりその破壊力のあるお胸が隠しきれていないので、上からさらにタオルを重ねる。
細かく体をふくわけにもいかず、とりあえずは風魔法で乾かそう。
目は瞑る。
目は瞑るから!
「よし。かぜまほ──」
「ただいまー」
「……!!」
だが、家の扉が開くと同時に聞こえた声。
俺はサーっと冷や汗をかきながらも、ゆっくりと玄関口へと振り返る。
すると……はい、バッチリ目が合いました。
「や、やあシャーリー。ご苦労様……」
「……」
シャーリーの視線が女性、俺、女性と行き来する。
「へえ」
「……ひっ!」
そして、その目に怒りがこもっていくのが分かる。
女性は裸の上にタオル、俺は前を隠すためのタオルのみ。
おまけに、俺の手が今まさに彼女に触れようとしているのだ。
絶対に勘違いされてる。
「ち、違うんだ、シャーリー!」
「……」
「シャーリーさん!?」
シャーリーは何も言わず、瞬きも一切せず、こちらにずんずんと歩いて来る。
そして、にこっと笑った。
「なにしとるんじゃー!」
「──ごぁっ!」
俺の体は窓を突き破って外へと飛び出た。
★
<???視点>
頭がぼーっとします。
わたし、何をしていましたっけ……。
あ、そうでした。
あの何やら気持ち良さそうな、温かい水に浸かっていたのでした。
そして、段々意識が朦朧としてきて……。
うーん、まだ目は開けられません。
けど、何でしょう?
この心地よくて、わたしの心をくすぐるような魔力は……。
今までに感じたことのない、すごく温かい感じ。
まるで、わたしを心の中から癒すような魔力です。
ああ、もっと感じていたい……。
あ、段々と楽になってきました。
そろそろ目が開けられそうです。
「あ、起きた」
目を開けた瞬間、男の子と女性と目が合いました。
俺の言葉にシャーリーは、彼女史上一番の大仰天を見せた。
まあ転移魔法といえば、伝説的な魔法の中でも最上級。
もはや神話クラスの魔法だからな。
「うん、条件は揃ったと思う」
そんな神話クラスの転移魔法だが、実は理論は出来ている。
前世の、ニホンの「ライトノベル」からヒントを得てるんだ・
まあそれは言えるわけもないので隠しておくが、理論自体はそこまで難しいものじゃない。
簡単に考えると「今の場所」と「行きたい場所」の超正確な位置の把握が出来れば、転移は可能。
趣味にはぴったりな魔法だったので、一年半の苦節の内に理論は完成した。
では、今までどうしてやらかったのか。
問題は、転移に使うその“魔力量”だった。
人や物を場所を超えて送ろうと思うと、とんでもない魔力量が必要になる。
王国内でも空気中に漂う魔力だが、単なる趣味で一気に大量消費してしまっては、国民に何かしら影響があると思った。
この世界で言う、酸素不足みたいな状況になりかねないからね、
では、今はどうだろう。
この森に漂うは濃い濃~い魔力。
それでもかなりの量は必要だが、弊害をもたらすことなく使えると思う。
「でも、具体的にはどうやって?」
「うーん。説明すると難しいけど、聞く?」
「あ、やっぱりいいや」
「ぐぬ」
俺のオタク趣味全開な理論の方には、興味が無かったシャーリー。
ただ、これだけは付け加えておく。
「けど、今すぐに出来るってわけではないんだ。それなりに準備が必要だし」
「そうなのね。というより、神話クラスの魔法をほいほい使えた方が怖いわ」
ということで、ここには俺の準備した魔法陣を敷いておくだけにする。
転移魔法が完成した時には、ここへすぐ飛んでくることが出来るように。
俺は軽く準備を終えて、フクマロの方へ振り返った。
「じゃあ悪いけど、帰りも乗せてってくれる?」
「もちろんだ」
こうして、魚という食材をゲットして、俺たちはコテージへ帰った。
★
「よし、こんなもんか」
コテージに戻った後、俺は黙々と作業を行っていた。
色々と設備を追加するためにだ。
追加したのは、時計やキッチン、温泉に行くまでの直通の通路なんかもだね。
時計は陽の角度から計算した。
ちょうど十二時頃だったので、合わせやすかったのもラッキーだ。
そんな作業もとりあえず終わった。
ちょうどいい時間帯だし、そろそろお昼にしたいな。
「シャーリー? ……は、いないんだった」
俺が作業をしている間、シャーリーはフクマロと一緒に食材を採りに行ってくれている。
食材に「魚」が追加されたことで、さらに張り切って料理をするみたいだ。
相変わらず働き者さんだなあ。
「んー、じゃあ温泉でも行くか」
ということで、俺は温泉へ。
せっかくコテージから直通する通路も作ったんだ。
作業後だし、さっとシャワーを浴びておこう。
夕方また入るだろうが、家の隣にあんな最高の施設があるんだ。
何度入っても良いよね!
「おー、我ながら完璧っ!」
作った通路を自画自賛しながら、コテージから温泉へと向かう。
ほんの数歩の距離ではあるけど、もし雨が降ったら嫌だからね。
ってことで、作業の事を考えるのはここまでにして。
「いざ!」
スポポーン! と衣服を放り脱いでいざ入湯!
「って、……え?」
ざぱーんと入水しようとした瞬間、どこか気配を感じる。
いくつかあるスーパー銭湯の内、中央の一番大きな風呂。
その湯けむりの奥に、何やら人の影がするんだ。
「シャ、シャーリー?」
シャーリーだったら「えっち!」と追い出されるので聞いておく。
だが返事はない。
さらに、張り巡らせている魔力探知にも引っ掛からない。
彼女にはそこまでの魔法はできないはず。
「……」
だとしたら一体……?
俺は魔力で形作った剣を片手に、ちゃぷんと入水する。
じりじりとその影に近づく中で、何やらうめき声が聞こえた。
「うっ」
「──! 誰だ!」
少し聞こえた声の主に返す。
でも、やはり返事はない。
そうして、
「うーん……」
「……!」
次に聞こえたのは、うなるような声。
って待てよ。
この声、まさか……のぼせてる!?
「こうしちゃおけない!」
俺は瞬時に、全身に魔力を通わせ、水除けをしながら影に近づく。
そこには──
「……!?」
なんと、大胆にもサラサラの金髪を結んで上を見上げる、すごく美人さんがいた。
「……!?!?」
さらには、おっきなお胸を大胆に晒しながらお湯に浸かっている。
タオルは巻いておらず、両肘は背側の石に付いている状態だ。
それはもう強調されたお胸が……と、とにかくすごい光景だ。
というか、金髪に、この横に長い耳。
この人、もしかして……
「うーん……」
「!」
って、何ぼーっと考えてるんだ俺は!
女性は目をぐるぐるさせ、意識は朦朧とさせている。
このまま放っておくと危険だ!
「よいしょ!」
女性にはタオルを一枚かけ、俺の肩を貸すようにして急いでお湯から出る。
「!?」
小走りなので、すぐ隣では大きな二つの山があっちこっちに暴れる。
それでも俺は、歯を食いしばりながらなんとか目線を逸らした。
そんな欲望とも戦いながら、一先ず家に入ってすぐに彼女を横に寝かせた。
「このままではまずいな」
女性だし、何よりその破壊力のあるお胸が隠しきれていないので、上からさらにタオルを重ねる。
細かく体をふくわけにもいかず、とりあえずは風魔法で乾かそう。
目は瞑る。
目は瞑るから!
「よし。かぜまほ──」
「ただいまー」
「……!!」
だが、家の扉が開くと同時に聞こえた声。
俺はサーっと冷や汗をかきながらも、ゆっくりと玄関口へと振り返る。
すると……はい、バッチリ目が合いました。
「や、やあシャーリー。ご苦労様……」
「……」
シャーリーの視線が女性、俺、女性と行き来する。
「へえ」
「……ひっ!」
そして、その目に怒りがこもっていくのが分かる。
女性は裸の上にタオル、俺は前を隠すためのタオルのみ。
おまけに、俺の手が今まさに彼女に触れようとしているのだ。
絶対に勘違いされてる。
「ち、違うんだ、シャーリー!」
「……」
「シャーリーさん!?」
シャーリーは何も言わず、瞬きも一切せず、こちらにずんずんと歩いて来る。
そして、にこっと笑った。
「なにしとるんじゃー!」
「──ごぁっ!」
俺の体は窓を突き破って外へと飛び出た。
★
<???視点>
頭がぼーっとします。
わたし、何をしていましたっけ……。
あ、そうでした。
あの何やら気持ち良さそうな、温かい水に浸かっていたのでした。
そして、段々意識が朦朧としてきて……。
うーん、まだ目は開けられません。
けど、何でしょう?
この心地よくて、わたしの心をくすぐるような魔力は……。
今までに感じたことのない、すごく温かい感じ。
まるで、わたしを心の中から癒すような魔力です。
ああ、もっと感じていたい……。
あ、段々と楽になってきました。
そろそろ目が開けられそうです。
「あ、起きた」
目を開けた瞬間、男の子と女性と目が合いました。