何度も繰り返し、昔の夢を見る。
夏休みの合宿という名の青春を楽しむだけのお泊まり会。暗い校舎でアヤカさんたちと楽しく合宿をしていたのに、気づけば悪夢へと移り変わっていく。
「はぁはぁ」
嫌な夢に飛び起きて額の汗を拭い取る。じっとりと湿った汗がパジャマまで濡らしていた。
「あぁ、もう夏が来たのか」
わたしたちの心に傷をつけた、痛々しい青い夏。いつかは清算しなければいけない過去の罪。夏休みの朝はいつも気が重い。もうそろそろ、わたしも、みんなも許されていいと思う。
そんな考えが頭によぎった。だから、わたしは返事を書かなければならない。昨日届いたあの手紙に。
拝啓、かなで様。お元気でしょうか。と言う言葉が正しいか分かりかねています。
そんな一文から始まった手紙に、どんな返事を書けば良いのか頭を悩ませる。いや、もしかしたら返事すら待っていないのかもしれない。けれど、わたしがこの手紙を返さなければ、何も変わらずに日々は過ぎ去ってしまう。
机に座って便箋を並べる。透き通るような海が描かれた美しい便箋だ。見た瞬間に、この便箋に小説を書いたら美しくなるだろう。
そんな予感で手に取った。それなのに、描かれていく文章は、思い出すには少し痛い記憶ばかり。
「起きてる?」
返事を書こう、そう思い立ってペンを握ったわたしを止めたのはお母さんの声だった。夏休みだからと言って寝坊が許されるわけでもなく、お母さんは毎朝決まった時間に起こしにくる。
「起きてる起きてる」
「朝ご飯できてるよ」
「わかったって!」
つい、強く言い返してから口籠る。書こうと握りしめたペンを置いて、便箋を鍵付きの引き出しにしまい直した。朝ご飯を食べてからでも遅くない。朝食後にゆっくり書けばいいんだ。
書きづらい思いに、言い訳を与えて朝ご飯へと向かう。食べたら、きちんと書くから、たぶん。ううん、書かなければいけない。