先生の長ったらしい話が終われば、高校二年生の夏休み。ソワソワと終わるのを待ちながら扉の向こうを見つめる。
「じゃあ、楽しい夏休みを!」
先生の言葉を合図に、ガサゴソと荷物を持ち帰るみんなの音をあとにして私は教室を飛び出した。向かう先はもちろん、いつものメンバーがいるであろう文芸部だ。
部室の扉前で呼吸を整えていれば、中からは紗英のキャンキャン喚く声と、かなでの居心地の悪そうな返答が聞こえる。
「かなでのアの字やっぱ、癖強っ! アですか了ですか、ゲームできるって」
「直らないんですよね、あはは」
扉を開けた先にはもうすでにみんな集合していて、どうやら私が一番最後だったらしい。
「あ、アヤカさんおつかれさま」
少し他人行儀な呼び方をするのは、かなでだ。かなでは真剣に小説を書いていて、何か部活に所属したいだけの私とは違う。
「みんながいると楽しいから」なんて言って、私たちが部室で遊んで居ても文句も言わない。
「おそい! 一番最後だぞ?」
夕陽はあくびをしながらぐーっと伸びながら嫌味を言ってくるし、アタルは夕陽の横でお菓子を食べている。紗英はかなでにまとわり付いてる。
「ごめんごめん、これでも急いで出てきたんだけど」
「アヤカはいつもそうだろ」
「夕陽、眉間に皺寄ってるよ」
「誰のせいだよ!」
「二人ともそこまでにしなよ、合宿するんでしょ」
間伸びした声で紗英が私と夕陽の言い合いを止める。アタルは変わらず無言でサクサクとチョコレートのお菓子を頬張っていた。
「うん、準備はしてきた!」
「文芸部の伝統、らしい。」なんて嘘っぱちを担当顧問にかなでから言ってくれた。だから、学校での合宿なんていう無茶な企画が通った。
顧問も着任したてで、あまり学校のことを知らないと言うのもよかった。