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「玉」

壱に抱えられたまま、玉は窓から帰還を果たした。

そして仁王立ちになっていた舞弥の前に突き出される。

ごく、と息を呑む玉。

「玉の奪還と、ついでにひとつ片付けられた。こってりしぼってくれ」

壱から玉を受け取ると、舞弥は玉の両脇を手でつかんで顔の高さを合わせた。

壱はたぬき姿に戻る。

「ありがとう、壱。玉? もう夜中だから大声は出さないけど、私怒ってるからね?」

「はい……。勝手に家出してごめんなさい……」

しゅんとしおれた玉は可哀そうな様相だが、舞弥も壱も勝手に出て行ったことを本気で怒っていた。

「玉はひとりになりたかったの?」

「……違います……。ふたりの邪魔になると思って出て行きました……」

「邪魔なわけないでしょう。今まで三人で暮らしてきて、玉は楽しくなかった?」

「……楽しかったです」

「じゃあほかに何の理由がいるの。一緒にいて楽しい人たちと暮らしていきたいって思うことに」

「……ごめんなさい。俺のはやとちりでした」

「わかってるんならいいよ。怒ってごめんね、玉」

舞弥から反対に謝られて、玉はうるうるが限界だった。

まずい、と思った壱は咄嗟に部屋を包む結界を張った。

「うわ――――ん! ごめ、ごめん、まいや、いぢ……おれ、おれ……」

「あらら、泣き出しちゃった。玉は小さい子どもだね」

舞弥が、わんわん泣き声をあげる玉を優しく抱きしめて頭を撫でる。

間に合った……と、玉の大声が外にもれなかったことに壱はひとつ安心しながらふたりを見ていた。

「玉、これからも一緒にいてくれる?」

「うん、いる、いるぞ、おれ……」

涙でぐしゃぐしゃの顔を何度も上下させながら、玉は答えた。

そのとき、壱が人の姿をとって舞弥の頬に手を添えて口づけをした。