❥❥


「はじめまして。舞斗の彼女の浅田七彩です。挨拶が遅れてすみませんでした」

チンと、仏壇の鐘を鳴らし、そう言葉を紡いだ私はソっと手を合わせる。

「七彩、わざわざありがとな。母さん喜んでると思う」

「ううん。私もいつか来ないとと思ってたもの」

フルフルと首を横に振り、私は再度仏壇を見つめた。

仏壇の真ん中に飾られた笑顔の女の人の写真は、舞斗の笑顔によく似ている。

あの後、私は手土産を買って舞斗の家を訪れていた。

「今、何か飲み物取ってくるよ。コーヒーでいいか?」

そう言う舞斗に「ありがとう」と声をかける私。

「ゆっくりしといて」

「うん。お構いなく…」

コーヒーの準備をしに台所へ行ってしまった彼の背中を見送った時、我ながら無理を言ったと反省していた。

さすがに迷惑だったよなぁ…。

優しい舞斗は口には出さないだろうが、急にお仕掛けてしまったわけだし…。

なんだかんだ付き合って舞斗の家を訪れるのは初めてで。

普段、実家ぐらしの舞斗の家よりも、一人暮らしの私の家で会うことが多かったのだ。